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文科省に敬意を払いたいほどの...

 識字率向上計画にあたって私がやらなければならないことはたくさんある。

 やるべきことを確かめるのに最適なものといえば...?

 ここから連想されるもので最もメジャーなものは"To Do List"である。

 やることを箇条書きにして終わったものから線で消していくアレである。

 人間は完遂したものは未遂のものほどちゃんと覚えない、終わったものは忘れていくという習性があると聞いたことがある。ザイガニック効果と呼ばれていた気がする。

 変な雑学は一旦隅に置いておいて、To Do リスト を作ろう。


 <To Do リスト>

・カリキュラム作成

・教科書作成

・授業計画作成

・問題集作成

・テスト作成


 <手配中のもの>

・黒板

・ノート

・インク

・ペン

・教会への協力

・絵本作家

・漫画家の卵

・映像授業をするためのもの


 こんな感じだったかな。

 抜けていたら大変だけど、それはその時だ。

 期限を設けないといつまでもダラダラとしてしまうからな。

 でも、期限設けて予定表たてて成功した試しがないもんな。

 とりあえず1年だ。

 1年後に施行でも試行どもいいからできるようにする。

 つまり、3歳数ヶ月までだね。

 よし!!頑張ろ!!


 そのやる気が尽きるのにさほど時間は掛からなかった。

 だって、大変だもん。

 これらの作業は人に任せるわけにもいかなかった。

 何故なら、前世の記憶を元に作成しているからだ。


 手順としてカリキュラムを立てるのが最初だろう。

 何を教えるか。

 本来、義務教育というのは満遍なく様々な教科を学ぶわけだが、まずは識字率だ。

 文字を教えること。

 そして、それだけでなく、計算を広めようとも思っていた。 

 簡単な一桁の計算のみだ。

 理由は簡単、異世界数で筆算をする方法を確立するのに時間がかかるからだ。

 そもそも、一桁の計算でもスムーズにできるようにするためには多大な時間がかかる。

 よって、設ける科目は国語と数学の2教科。


 そして、カリキュラムを作るにあたって、まず、文字を50音の表を参考に表にまとめることにした。

 幸い、日本語の音とあまり変わりなかったので、母音と子音でわけて表を作成した。

 そして、教科書、というよりワークに近いものは小学校一年生の記憶を辿って、一文字につき1ページにまとめ、身近な単語を並べたり、書き順をまとめたりした。

 そこまでは順調だったが、気づいてしまった。

 多くの人がペンを握るのが初めてだということに。

 インクをつけるペンは鉛筆よりも難易度が高い。

 持ち方と使い方を別途まとめて、丸を書くとか四角を書くから始めないとだ。


 そこが大きな壁だった。


 実際、ペンの正しい持ち方なんて存在しない。

 周りを見ると、字を書いている機会なんてそうそうないが、好きなように持っている。

 

 私は、5本指だった時の名残で、無駄な指2本が立っている状況。

 この持ち方は美しいといえない。

 というより、困惑するだろう。

 この持ち方が流行るなんてなんか恥ずかしい。


 そう、"ペンの公式の持ち方を決める"という難題にぶつかってしまったのだ。


 ヤルコトフエタ。


 ペンの公式の持ち方を誰にするか、そして絵師の人に書いてもらうことになりそうだな。


 よし、無視して表とそれぞれの文字ページを作るぞ。

 エマは字が綺麗だから、1ページ作ったら他は任せてみようと思う。

 きっとうまくやってくれるよ。


 そして算数だが、わかりやすいかどうかの実験にイーヴを使うことにした。

 答えも一桁になる足し算がスタートラインだ。

 プロトタイプだがトランプも作ってみた。

 お馴染みの♡♢♠︎♣︎を1~7で作ったものだ。

 これで、ゲームをしながら身につけてもらうつもりだ。


 「イーヴ、これから流行らせようとしているものなんだけど、付き合ってくれない?」

 「おぉ、いいぜ。エマみたく俺は字が綺麗に書けねぇから、ちゃんと手伝えなくて気になってたところなんだ。」

 「簡単な遊びなんだけど、私と一緒にやって、できれば数字読める同僚の人たちとやってみて欲しいんだよね。」

 「わかった。が、遊びを広めてどうしたいんだ?」

 「それはやればわかるよ。多分ね。」


 私はトランプもどきを広げてイーヴに見せた。


 「それぞれに数字とその数字に合わせた数のマークが書いてあるの。これを今から混ぜて裏返して配るから自分だけに見えるようにして持ってね。扇のようにこんな風に持つといいよ。」


 まだ手が小さいからカードが落ちそうになるが、なんとか堪えた。

 私には熟練の技があるからね。

 そのあと裏返してカードをきった。

 カードの枚数が少ないから助かったよ、小さい手でも大丈夫。


 「お嬢?それ何してんだ?」

 「カードを混ぜてるの。これが一番手っ取り早いから。」


 私はある程度きったら裏返してイーヴと私に配る。


 「今自分が手に持っているカードを手札と言うんだけど、その中で7があったら真ん中に出すの。こんな風にね。」


 私は1枚見つけた♢の7を捨てた。


 「真ん中に出すのを手札から捨てるというんだ。」


 イーヴは3枚持っているはずだ。


 「了解。」


 イーヴが3枚出したのを確認して、説明を続ける。


 「うん。そうしたら今度は2枚で7になる組み合わせを捨てる。全部見つけ終わったら一旦止めてね。」


 私は3と4の組み合わせをイーヴにわかるように出す。


 「3(サッロ)4(シュー)か。たしかにマークを数えると7(ナー)になるな。」


 イーヴはそれを見ると自分の手札を探し始めた。


 「難しいな。さっき見た3(サッロ)4(シュー)はわかった。まずはそれを探す。」


 私が全部出し終わったが、イーヴは苦戦しているようだ。

 3と4は私のを見たからわかって全部出したようだけど。


 「お!!1(イー)6(ルック)は数えると7(ナー)になるな。」


 一つ組み合わせを見つけたようだ。

 簡単すぎてつまらないかなと思ったが、杞憂だったみたい。

 私からしたらこの遊びはババ抜きの派生みたいなもの。

 めちゃくちゃ楽しい訳でもない。

 ババ抜きは大勢でやるから楽しいものだ。

 そしてこのゲームにはババがない。

 先に上がったほうが勝ちとするが、流石にスパイスがなさすぎるだろう。

 しかし、この状態だとババもしくはジジを入れるのはまだやめておいた方が良さそうだ。


 イーヴは必死だが、私にとっては児戯に等しい。でなきゃ、高校生なんてやってらんないよ。

 高校生舐めんなよ!?

 微分積分にたどり着く前に死んでしまった?のは未練だけど、虚数とか頑張ったんだからな!!


 「きた!!2(ヌー)5(グー)だ。これで7(ナー)だな。よし。」


 どうやら最後の組み合わせを見つけたようだ。

 初めてだったから手間取ったとはいえ、組み合わせが3つだけとは簡単すぎたか??

 早めに数字の追加を検討しよう。


 「他になんかあるかな...?」


 イーヴが他の組み合わせを探し始めたが、ない。

 断定する。

 ないぞ、他の組み合わせ。


 ないと分かるまでにどれくらいかかるかな?

 時間で区切った方が良さそうだ。

 というか、手札少なくね?

 2人だからか。

 まぁ、なんとかなんべ。


 「イーヴ、そろそろにしよう。次に進めないよ。」

 「お嬢、待ってくれよ。他にもあるかもしれねぇからさ。」

 「ふぅ。ないよ。」

 「へ?」

 「断じて、ない。」

 「なんで分かるんだ?」

 「イーヴは1(イー)6(ルック)2(ヌー)5(グー)3(サッロ)4(シュー)という組み合わせを見つけた。これで全ての数字は使っている。1(イー)6(ルック)以外では絶対に7(ナー)にならないし、他も同じ。だから、もうないよ。」

 「そうなのか?いや、お嬢が言うならそうなんだろうな。」


 自分より10以上年下であろう私のことをそんなに疑いもせず信じていいのか??


 「じゃぁ、次の手順ね。」

 「これで終わりじゃないのか!?」

 「いや、まだ何もしてないから。」

 「これだけでかなり頭使ったような。」

 「気のせいだね。次はじゃんけん、じゃなかった。そうだね、コインの裏表もなかった。他は、そう!年齢が上の人が先に相手の手札から1枚カードをとって自分の手札にする。そうしたら、手札の中で新しく7(ナー)がつくれる組み合わせを探してあったら捨てる。それが終わるか、組み合わせがなければ今度は逆に年齢の低い方がカードを1枚手札にして組み合わせを探す。それを繰り返して手札が先になくなった方が勝ちだよ。」


 あれ?これ同時に終わっちゃわない??

 ま、いいか。次からジジにしよう。

 あと、じゃんけんがないのは不便。

 貨幣もないからコインの裏表もできないし。


 「よし、なら俺がお嬢のカードを1枚もらって、お!1(イー)だなら6(ルック)が...あった!で捨てる。うん、お嬢の番だよ。」

 「!?意外とはやい。」


 最終的に同時に終わった。


 「同時か。」

 「うん。本当はね、最初にこのカードから1枚ランダムで引いて隠しておくんだ。そうすると、今はピッタリ全部組み合わさったんだけど、それが1(イー)枚余っちゃうの。最後に余っちゃった人の負けになるってこと。」

 「なるほどなぁ。かなり頭つかったな。頭を使わせるのが目的か?」

 「うん、そう。7(ナー)になる組み合わせを覚えることだね。そのうち数字を大きくしていくつもり。2(ヌー)人だとすぐ終わっちゃうから3(サッロ)人とか4(シュー)人とかそんな感じで流行らせてほしい。」

 「人数増えると誰から引くんだ?」

 「順番は何でもいい。でも、そうだね。右にいる人から引いて、左の人に引かれるってのはどう??順番は誰かから時計回りで。」

 「時計回り?」

 「あぁ、そうか。最初に引かれる人を除いて引かれた人は次に引くってことで。」

 「あぁ....あぁ。あぁ!?悪りぃ、お嬢。曖昧だからエマ混ぜてもう1(イー)回やってくれないか?楽しかったからってのもあるけど。」

 「そうだね。エマを呼んでこよう。」

 「いや、俺が行ってくるよ。お嬢はここで待っててくれるか?」

 「わかった。」


 3人なら一人につき7x4を3で割って9あまり1か。

 4人になると7枚ピッタシ。ちょっと足りんな。

 7が好きならマークをあと3種類つくっておくか。

 イーヴが戻ってくるまでに終わるかな。

 マークは♡♢♠︎♣︎を今使っているから、夢の国にいるネズミのマークを使おうか。

 ここなら著作権フリーなはずだし、●を3つ書くだけで簡単だもんね。

 あとは、桜の花びらとか?でも、ハートに似てるから却下。

 ニコニコマークにしようか。☺︎これなら間違えようがないよね。

 あとは、肉球かと思ったけど、夢の国の鼠と間違えられるから、人間の手形?

 面倒だな。

 何より、指を7本描かなきゃいけない。

 キリストじゃないけど、教会もあるようだから十字架にしようか。十ちょっと太く書けば大丈夫でしょう。


 ひたすら作業を続ける。

 イーヴが帰ってくる前に終わるかな?



 総括:

 カリキュラム・教科書・意欲を煽るゲームや嗜好品。

 全てにおいて試行錯誤が必要。


 レベルをどうしたらいいのかで頭を悩ます。

 ちょっとカリキュラムを立てる予定だったのに。


 学習指導要領を作っている文科省の方々。

 本当に、尊敬します。

 マジで大変。


 by.セシリア・フォン・エマール

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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