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魔法とは II

 「はぁ。レオンはいつもの的に当てる練習でもしておけ。」


 「わかりました。」


 ブルナンどのはレオンさんにそう指示を出すと、私とノエルに説明を始めた。


 「で、全く分からないんだよな?なら、そうだな、詠唱で火を出してみるか。詠唱って言っても、決まったものがあるんじゃねえんだ。女神さまに祈りを捧げるのが一般的だな。世の魔術師は基本的にこの方法で魔法を扱ってる。この方法なら鍛錬の必要はあまりないんだ。必要なのは詠唱の工夫だけだ。正直、威力や操作はいまいちだが、何も考えずに出るのが利点だ。魔法を使っている間に、魔力の流れを感覚で掴んでくれ。」


 そう説明をした。

 うん、かなり説明がわかりやすい。


 そのブルナンどのは一本指を立ててこう言った。


 「女神さま、この指の先に小さな火を灯してください。」


 そうすると、指の先に小さな火がついた。

 ライターみたいなイメージだ。


 「ただ火を灯すだけなら、大した捻りもいらない。やってみろ。」


 子供に火遊び教える大人ってさ。

 いや、魔法の練習だけど、最初に火ってどうなんだろう。


 「女神さま、この指の先に火を灯してください。」

 「女神さま、この指の先に火を灯してください。」


 私とノエルがそう唱えると、同じように指の先に火がついた。


 「魔力の流れは掴めたか。」


 「なんとなくは。」

 「僕も、なんか感じました。浮いている時と、同じようなものが。」


 なんていうんだろう、立ちくらみで目の前が真っ暗になる時、頭から血が足の方に落ちていくのがわかる。そのような流れが分かるというものだ。それが指先に集まっていく、気がした。


 「なら、そこからは応用だ。その火を大きく、熱くしてみろ。一度女神さまに祈ったから祈りはもう必要ないと思うぜ。それに、それ以上祈らなければ事故は起きないさ。」


 なるほど、詠唱してこの火種を大きくする、もしくは熱くすると。


 ならば決まっている。


 「酸素を送り込め。」

 「空気を送り込め。」


 ノエルも似たようなことを考えたらしく、空気を送り込んだ。

 私はそれよりもピンポイントで酸素を送り込む。


 「おい、風魔法を起動しているぞ。」


 私とノエルの火は燃え上がった。

 ノエルの方が少し小さいが、風を上手く送っているからか、私よりも安定している。


 青い炎にはならないな。

 ガスバーナーは青くなるのに。

 なんでだ?


 内側から酸素を取り込めばいいのか。


 「火の燃料とともに酸素を送り込め。」


 これでいいかな。

 うん、青くなった。


 根元に酸素を送り込むイメージであっていたみたいだ。


 「どうなっている?風なら火は消えるだろう?」


 あ、暑くなってきた。消したいんだけど。


 「ブルナンどの、僕の火を消したいのですが。」


 「あぁ、魔力を送るのを止めれば消える。」


 なるほど。

 んー、魔力の流れを止めるのか。

 感覚は掴んだけど、どうしたらいいものか。


 「ノエルは消せたな。」


 マジか。

 伊達に毎日魔法を使っていないということか。


 私も、血流と同じイメージなら、止血するときは圧迫?

 それとも、外に出さずに体の中で循環させるか?


 だったら、体の中に回すイメージで。


 ふぅ。

 消えた。


 「青い炎なんざ聞いたことがないぜ。」


 「でしょう?だから、彼らは規格外なのです。」


 「レオン、お前知ってたな?」


 「いいえ。どうなるかなんて分かりませんでしたよ。ですが、俺たちが知らないことをたくさん知っている、それだけで可能性は無限にあった。」


 消すのが思った以上に大変だったな。

 着火の際は詠唱に助けられたからな、言霊ということか?


 「ノエル、どうして火に風魔法を使った?」


 「風魔法というのは知りませんでしたが、火は空気を使ってより燃えるので、それを送るように頼んでみただけです。逆に空気の流れが無ければ火は消えます。今回は魔力の流れで消しましたが、空気を除ければ火は必然と消えるでしょう。以前、実験したんです。」


 「それで、か。セシルの青い炎に心あたりは?」


 「姉さんが作った青い炎は火をつける器具で見たことがあります。ガスバーナーと言っていました。赤い炎は空気を取り込むことで青くなると。おそらく、火の内側から空気を入れると青くなるのでしょう。」


 言霊というなら、火を消えるように、とか詠唱すれば消えたのでは?

 というか、火を消したいなら、空気中の酸素を抜けばよかったんじゃ、でも、それって可能なのかな。


 「セシル、セシル?」


 正面からレオンさんに両肩を掴まれて名前を連呼されているってどういう状況?


 「なんですか?」


 「次に進むそうだよ。誰も解明されていないはるか古代の詠唱だってさ。」


 「古代の詠唱ってのは意味が全く分からないから嫌われているものだ。実際、知っているのは少数。残っているのはこの本一冊くらいだ。その本も謎の模様が多くて誰も解読ができてないんだ。その魔法の意味もよく分からないものだらけでな。ただし、この魔法は消費魔力が少なく、必ずその通りに発現する、とても優秀なものだ。」


 「グリッドガイドゼッドイコールサーティエックススクウェアードプラスワイスクウェアードイコールナインハンドレッドウォーター」


 その声とともにブルナンどのの周りに水の円ができた。


 めちゃくちゃ、なげぇ。


 でも、なんか分かるような?


 「こんなもんだ。最初のグリッドガイドってのがいくつかの魔法に共通しているから、それが重要なんだろうが、正直、その魔法の意味が分からない。視界は変わるから面白いんだが、分からないから使えない。やってみるといい。」


 魔力を解いたからなのか、ブルナンどのの周りの水は消えた。


 「グリッドガイド」

 「グリッドガイド」

 「グリッドガイド」


 レオンさんも含めて私たち三人はグリッドガイドを起動した。


 すると、私の視界にマスが現れた。

 太めの線が3本、立方体まみれにも見える。

 ここで、なんとなく私はピンときた。


 あ、x, y, z 軸なのでは?


 つまり、この場合、何を唱えたらいいかというと。


 「z=30 範囲指定 -50<= x =< 50 y=x y=-x water」


 私の目の前にX字の水が現れた。

 成功だね。


 「姉さんが成功させるってことはやっぱりそういうことなんだね。なら、僕は…。」


 「z=30 範囲指定 -50 <= x =< 50 y=1/2x^2 water」


 ノエルの目の前には放物線が現れた。


 これで、はっきりした。

 私も経験はないけれど、これは座標空間だ。


 x, y, z を絡める式の作り方は分からないけれど、要はそういうことだ。


 私が動くと、マスも動くから、原点は私の体の中心に設定されているみたい。

 逆に、固定もできるかもしれない。


 「初めて聞いて、その反応は予想外だったよ。なんらかのヒントを得たわけだ。」

 

 「素人に成功されるとは…、何やってんだか。」


 レオンさんとブルナンどのはそれぞれ反応が分かれた。


 「あれっ?」


私の水が震えて形を崩し始めた。


 気づくと弾けて消えた。


 「僕のも、形が揺らぎ始めた。」


 ノエルは自主的に水を消した。


 「そりゃ、魔力制御の問題だぜ。意味が分からない詠唱を理解されたのは癪だが、そこは追々追求するとしてだ。魔力制御は誰も重要だと思っちゃいないが、制御ができないと、さっきのお前らみたいに魔法が崩れていく。だから、魔力制御が必要で、それは繰り返しの鍛錬が為すものだ。それに関しては俺は誰にも負けないと自負している。」


 うん、努力に自信を持っている感じがかっこよくて好きだな。


 「そうか、私のは制御が甘かったのか。これは要練習だ。」


 「で、属性魔法ってのが基本で、それが魔法でできることを大まかに表しているらしい。土魔法、水魔法、風魔法、火魔法だな。それ以外にもさっきのみたいな意味の分からない魔法と、ノエルみたいな特殊属性の魔法もある。理解さえすれば全ての魔法を扱える。これは固有能力と違うからな。」


 生まれつきで魔法は制限されないものであると。


 「で、さっきのは何だったんだ。教えろ。」


 ブルナンどのは好奇心旺盛なようです。

ガスの炎が青いのはあらかじめ空気(一時空気)を取り込んでいるからだそうです。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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