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初めての王都

 改めて確認。


 我がエマール伯爵家はエナム王国に忠誠を誓っていてエナム王国の王都はエナーメルである。


 忠誠を誓うってほど崇高なものじゃないな、と思うけど建前ならこれくらいでもいいよね。


 さて、私やノエルは王都滞在の時期はアズナヴール公爵の王都のタウンハウスに滞在することになった。

 別に、授業が休みになるわけではないから、授業道具は持参だよ。


 私、ノエルに加えて、瑞稀もついてきた。

 瑞稀によれば、おそらく佐助や楓も向こうで顔を出すだろうとのことだ。

 元々、王都にも人を派遣しているから、それと人事異動的に交代するんだと。


 私とノエル、瑞稀で馬車に乗り合わせたため、馬車の中では延々英会話が続けられた。

 因みに、私たちを送るために伯爵家の御者がついてきているけど、王都についたら帰るらしい。そして、こちらからの使用人はゼロ。だって、皆んな忙しいもん。それに、私やノエルは一人で身支度などはこなせるのだ。

 よって、この英語地獄は終わるはずがなかった。


 「 Cecil, what do you call 王都 in English? (セシル、王都を英語で何と呼ぶか。) 」


 「 I think ... we call 王都 capital in English. (私は、capitalだと思います。) 」


 首都はcapitalだからって理由だけど、王都も首都も同じだよね?


 「 OK. We call it royal capital in English. (OK。royal capital と呼ぶよ。) 」


 「 I see. (なるほど。) 」


 「 Noel, have you ever been to the royal capital? (ノエル、王都に行ったことはあるか?) 」


 ノエルに話すときは丁寧に、ゆっくりと話すんだよな。


 「... No, I have not. ...? (いいえ。)」


 「大丈夫だ。あっているぞ。我は王都に行ったことがあるか、と尋ねた。前に話した、Have you ever been to ~?(~に行ったことがありますか?)という文だな。まぁ、もっといい答えもあるが。Cecil, how about you? Have you ever been to the royal capital? (セシル、お主はどうだ?王都に行ったことがあるか?) 」


 「 No, I've never. That's why, this is the first time to visit there. I am looking forward to it. How about you, Mizuki? (いや、行ったことがない。だから、今回が初めてなんだ。私はとても楽しみにしているよ。瑞稀はどうなの?) 」


 「 I've been there before. Cecil, good job. You can ask me the question. It is very important for conversation. Well done. (我は以前行ったことがあるぞ。セシル、よくやった。お主は我に質問をした。それは会話をではとても大事なことだ。続けるといい。) 」


 やったぜ。褒められた。

 ノエルは聞き取れなくても必死で聞いている。

 私は聞き取れない話なんて退屈でしかなかったのに。


 ドワーフの方から取り寄せた単語帳と文法書を元にめちゃくちゃ勉強をしています。

 その文法書や単語帳は全て英語で書かれていて、心が折れます。

 因みに移動中も勉強です。

 宿に泊まれば、その中で文法書を解いて、休憩すれば単語帳で暗記をする。移動中は酔ってしまうので英会話。

 ここまで英語漬けになったことは前世でもなかっただろう。


 王都に着いたときには既にゲッソリとしていた。

 ノエルは意外と元気そう。

 ノエル曰く、「姉さんに矛先向いているときはこちらに来ないから。」だそうです。

 私は下手に発音に気を遣うものだから、口の周りの筋肉が死にかけている。この世界の言語も筋肉使わない系のものだったんだね。日本語もだけど。


 馬車を降りようと、ドアが外から開かれると、レオンさまが手を差し出していた。


 「よく来てくださいました。セシル、ノエル。これからまたよろしく。」


 ウッ!!

 久々に観る国宝級のイケメンはヤバいです。

 毎日見ててもノエルは綺麗な顔してんなーって思うのに。


 「クッ、こちらこそよろしくお願いします。レオンさま。」


 差し出された手を取って、馬車を降り、ノエルに手を差し出す。

 因みに、瑞稀は姿を見えないようにして腕に巻きついている。


 「姉さん、僕は手なんかなくても降りられるよ。」

 「それをいうなら、レオンさまに言ってください。」

 「ねぇ、さっきは聞き逃したけど、さま付けダメって言ったよね?」


 ムッ!

 「では改めて、レオンさん、よろしくお願いします。」


 「うん、よろしく。」


 全開の笑顔は眩しすぎるからやめて!!


 「あ、そうだ。少し待っててくれますか?」

 「姉さん?」


 私は小走りで馬車を運転してくれた御者さんの方へ。


 「長い間、運転ありがとうございました。」

 「あ、ありがとうございました。」


 私とノエル、二人で頭を下げた。

 すると、御者さんたちは微笑んで言った。


 「こちらこそ。授業で顔を見られるの、お待ちしています。」

 「授業、楽しみにしてますからね。」


 「はい!!」


 私とノエルは口を揃えて返事をした。


 「そういうところが人望を集めるのだろうな。」


 レオンさんが微笑んで言った。

 なんか、知略で言ってるとか、買い被られても困るんだよ。

 運転手には挨拶とかそういうのって嫌というほど染み込まされてるジャパニーズなのさ。

 だから、車の運転手=馬車の御者さんに挨拶をしただけ、それだけなのだ。


 「荷物はこちらで中に運ばせる。グレース、中に運ばせてくれ。」

 「承知しました。」


 メイドの服を着た女性がキビキビと動いて、指示を出していく。


 「荷物くらい、自分たちで運びますよ。」

 「えぇ。姉さんには持たせませんが、僕の力でならどうとでもできます。」


 恐縮すぎて居た堪れないんだけど。


 「これはこちらの面子の問題なんだ。大人しくもてなされてくれ。」


 とレオンさんに言われてしまえば、逆らうこともできず、荷物は丁寧に運ばれてしまった。


 「さて、行こうか。父上が待ってる。」


 門の中へと進んだ。

 公爵家の屋敷は大きい。

 庭も広いし、ウチみたいに農作物、つまり野菜ではなく、観賞用の花々が植えられている。

 因みに、エマール家の庭はもはや畑だ。研究用の畑だ。


 「先に言っておくが。」


 歩きながら小声でレオンさんが言った。


 「公爵家の都合上、全ての使用人が信用できる訳じゃない。二人につけた者は信用しているが、他の使用人と会うこともあるだろう。十分に注意してくれ。こんなところで申し訳ないが。」


 「いえ、公爵家ともなれば政治的な都合上、色々あるでしょう。注意します。」

 「レオンさんが気にすることではないと思います。姉さんの分まで警戒しておきます。」


 私もノエルもそのことについてレオンさんを責めるつもりはなかった。


 「そう言ってもらえると助かる。何かあったら必ず言ってくれ。できる限り対処をする。特に、セシル。隠そうとしないこと。」


 うっ。

 適当に誤魔化そうとか思ってたの、バレた?

 気にすることがなければ言わないよ。


 「わかりました。」


 渋々ながらも言うと、レオンさんはニコッと微笑んで部屋のドアをノックした。


 「レオンです。二人を連れて参りました。」


 「どうぞ。」


 中から声が聞こえると、レオンさんはドアを開けて部屋に入った。

 これは追従していいのかな?


 「二人とも入って。」


 小声で教えてくれるレオンさん、グッジョブです。


 「失礼します。」

 「失礼します。」


 私は軽く会釈をして入った。


 「よく来てくれたね。王都滞在期間の間、よろしく頼むよ。アズナヴール公爵家エリク・フォン・アズナヴールが歓迎するよ。」


 にこやかに出迎えてくれた。

 うわぁ、やっぱり美形ですな。

 眼福眼福。


 「またお目にかかれて光栄です。この度はお招きくださり、ありがとうございます。そして、長期間になりますが、ノエル共々、よろしくお願いいたします。」

 「僕も、姉も、こちらで沢山のことが学べると楽しみにしてまいりました。よろしくお願いします。」


 私とノエルで事前に決めておいた挨拶をした。

 因みに作法については、全くと言っていいほど解説された書が存在しなかったので、書籍『エマール伯爵家』のみを用いて頑張った。私はドレスを着用していないので、男性用のマナーを習得した。エアであのお辞儀すんの嫌だもん。

 小さい頃に教わったような気はするんだけど、小さい子にそこまで求めないから、放置してきたんだよね。


 「あぁ。二人とも義父と呼んで欲しい。家の中でまで畏まられたら疲れてしまうのでな。」


 義父か......。どうしたらいいんだろ。


 私とノエルは目線で会話をする。


 (これって呼んだ方が失礼なのかな、呼ばない方が失礼なのかな。)

 (建前ではないような気がするけど、姉さんはまだしも、僕まで呼ぶのか?)


 うっ...


 「その件については一度持ち帰らせてください。」


 と私は無難に?返事をした。


 「ふふふ、そうだな。一度部屋で休むといい。レオンが案内してくれるだろう。その後、私の妻と娘を紹介したい。」


 「では、父上、二人を案内します。じゃぁ、二人とも行こうか。」


 レオンさんが微笑みながら促すけど、ヤベェ、退室の挨拶を調べてなかった!!


 「公爵さまの奥さまとご令嬢に会うのを楽しみにしています。では、失礼します。」


 と思ったらノエルがスマートに言った。すげぇ。


 「失礼します。」


 私はノエルに追従する形で部屋を辞した。

 弟に助けられるとは。

 ウチの弟最高ー★と思うと同時に、自分の至らなさに反省です。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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