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色々とありましたが

 さて、色々とありましたが、無事、休息日を迎えました。


 「過労死するかっつー勢いだったかんな。テメェが死ななかったことが驚きだわ。」


 佐助はこんな失礼なことを言っているが、きっと心配しているんだろう。うん、そうなんだろう。


 「将棋、将棋。将棋を広めないなんて。」


 楓は壊れたように将棋の布教を求めている。

 コトあるごとに、将棋を布教して欲しいと懇願してくる。

 なんか、断るたびに可哀想と思ってしまう時点で罠に嵌められていると思う。

 とはいえ、何があろうと掛け算に辿り着くまでは、将棋を布教する気はない。


 「 Cecil, are you ready for this class?(セシル、授業の準備はいいのか?) 」


 「 Sure. Thank you for your help, Mizuki. Unless your help, I cannot prepare for this class perfectly.(うん。助けてくれてありがとう、瑞稀。あなたの助けがなかったら、私は完璧な授業の準備ができなかったわ。)」


 「セシル、この場合はその表現じゃないな。If it had not been for your help, I couldn't prepare for today's class. (貴方の助けがなければ、私は今日の授業の準備ができなかっただろう。) の方がいいだろう。仮定法の表現だな。」


 瑞稀と話すときは極力英語を使うようにしていて、私が間違えるとその場で訂正してくれる。


 「なるほど...。If it had not been for your help の it は受験勉強で仮主語と言っていたものかな。」


 「さぁな。我はセシルがどう習ったかなど分からん。まぁよい。Wish you the best!! (幸運を祈る。)」


 「Thank you. (ありがとう。) 」


 「 No problem. (問題ない。) で、ノエル。自己紹介はできるようになったか? 」


 「一応、覚えはしましたが。」


 「なら、言ってみよ。失敗など気にするでない。お主も分かっておろう?大事なのはその後だと。それに、今見た通り、セシルとて、何度も間違えるんだ。」


 あの一件以降、ノエルは瑞稀に英語を習うようになった。

 まずは、言いたいことを聞いて、それを瑞稀が英文にまとめ、読み方を何度も教えたらしいけど。


 「 My name is Noel von Aimard. I'm two years old. Nice to meet you. (僕の名前はノエル・フォン・エマールです。僕は2歳です。よろしくお願いします。) 」


 「ふむ。ちゃんと覚えてきたな。初めてと考えると上出来じゃ。我がこれから一つ一つの意味を教えていくが、今の段階で直すべきは発音じゃな。特にLとR、VとBあたりは支障が出るからな。」


 「わかりました。」


 ノエルは教わってガチで全文覚えたらしい。

 何も分からない言葉の音だけを覚えるのがどれほど大変なことか。

 そう考えると、やる気を持ってやるとは恐ろしいことだ。


 小さい頃、100である one hundred を I'm hungry と言っていた自分を殴りたい。

 やる気を持って英語を勉強すべきだったと今、後悔する。そういう人、多いんじゃなかろうか。


 ん?

 でも、よく考えると、私って既にバイリンガル(=bilingual)なのでは?

 この世界の言葉と、日本語は完璧。

 これに英語加えたら、トリリンガル?

 トリリンガルに王手をかけているのでは?


 「姉さん?姉さん!!」


 「なに?セシル。」


 ハッとした。


 「ぼーっとしてるからどうしたのかと思って。」


 「いや、ちょっと考え事をしていたんだ。にしてもノエル、知識ゼロでよくあれだけ覚えたね。」


 「何度も声に出して読んだだけだよ。特別なことはしてない。」


 うん、そのやる気と努力が素晴らしいと私は思う。


 「そろそろ時間じゃな。我はセシルの首にでも巻きついているぞ。」


 瑞稀は姿を白蛇に変えて、私にくっついてきた。

 既に忍者二人は姿を消していた。


 「行こうか、姉さん。」


 声をかけられて、授業を行っている部屋へ行って外から覗き込む。

 中ではエマとセルジュが授業をしていて、それを見ているのはイーヴやノエルの専属の人たち。


 最近、授業関連の仕事が増えてしまっていたから、通常の仕事を休息日にまとめてやっているみたいなんだよね。誠に申し訳ない。そのため、1年目の授業は、教師育成チームのみの観覧となっている。

 因みに、現在新しい使用人も続々養成中で、文字の指導がないからすぐにでも実践に入れそうとセルジュが喜んでいた。それだけ、大変なものだったんだね。


 「授業は順調みたいだね。」

 「うん。今回はサイン交換会だから各地は大騒ぎだと思うよ。エマールでは人数が少ないから、親とか1年目の人も参加するように呼びかけたってさ。そうでなくとも、たくさんの人が参加する予定だったみたいだけど。」

 「というと?」

 「ほら、自分の子供のサインが欲しいんだって。」

 「あぁ〜。」


 こそこそと雑談しながら覗いていると、授業が終わったらしい。

 私たちはそれを確認して、中に入り、授業準備を進めた。


 部屋には続々と人が集まってきて、授業に備えている。


 「今日は初っ端から計算テストだからね。」


 「驚くかな?で、繰り上がりやって、宿題、というか、お題みたいな感じで、足し算と引き算の関係性について出しておくのだったね。」


 私はノエルに今日の内容を確認する。


 「うん。ここで、皆のアイディアを集めて、それを参考に次回の授業を組み立てていく。」


 今回の算数の授業はノエルが計画を立てたものだ。

 教科書を執筆したのもノエルだから、ちゃんと、色々と考えているみたい。


 「姉さんの方は?国語、読んでから内容によって分けて、一つずつ見ていく感じでいいんだよね?」


 「うん。序論・本論・結論、とは言わずに初め・中・終わりで分けてもらうよ。選択肢を用意したから、挙手制で周りと自分の意見を確認してもらうつもり。」


 「分かった。筆者の意見とそうでない部分を間違えないように注意して扱うということで。」


 「次回予告で実験のこと言っておくってことでいいよね?」


 「うん。次回は実験と算数で予定を立てているよ。で、その次が領地だから、アンケートについても説明を頼む。アンケートは既に司祭に渡してあるから。」


 「了解。」


 手早く、最終確認をしながら、手を動かして準備をしていく。

 その間に、席は満席となり、授業の時間になった。


 「こんにちは。皆さん、元気ですか?本日もよろしくお願いします。セシルとノエルです。」


 「よろしくお願いします。」


 授業が始まった。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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