表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライム大公と没落令嬢のあんがい幸せな婚約  作者: 江本マシメサ
後日談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/65

スライム大公コミカライズ3巻発売記念『ハロウィーンをしよう!』

 領地の子ども達のために何かしたい。そんなことを考えたとき、以前本で読んで知った異世界の催しについて思い出す。

 その名もハロウィーン。

 なんでも秋の月末に好きな仮装を行い、「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!」と言って回る。 

 いたずらされたくない大人達は子ども達にお菓子を与える、というものだ。

 もともとは悪霊などを祓うための祭礼だったらしい。それが時を経て、仮装を楽しみ、お菓子を配り回るイベントに変わっていったようだ。

 すぐさまガブリエルに相談したところ、賛同してくれた。

 領地の子ども達に周知させ、ハロウィーン当日は私やガブリエル、使用人などが街に繰り出し、お菓子を配ろうという話になった。


 当日は私達も仮装する、という話になる。


「ガブリエルは何がいいかしら?」

「私は別になんでも構いませんが」

「だったら、吸血鬼なんてどうかしら?」


 物語の中での吸血鬼は美しい容貌にミステリアスな雰囲気の青年で描かれることが多い。ガブリエルにぴったりなのでは、と思う。


「吸血鬼ですか? 似合うかどうか……」

「絶対似合うわ!!」


 私の強い要望もあって、ガブリエルは吸血鬼の装いで参加することとなる。


「フランはどうしますか?」

「私は、なんでもいいわ」


 そう言ったあと、ガブリエルは噴きだすように笑った。


「どうかしたの?」

「いえ、私達、自分のことになると途端にどうでもよくなるのだな、と思いまして」

「たしかに、そうかもしれないわ」


 ガブリエルは私にしてほしい仮装があるという。


「何かしら?」

「プリンセスです」


 普段、地味な格好ばかりしているので、当日はお姫様みたいに華やかに着飾ってほしいという。


「私、悪目立ちしない?」

「しません! 絶対に!」

「そ、そう?」


 ガブリエルの強い勧めで、私は当日プリンセスの装いをすることになった。

 それからというもの、私はお菓子作りに勤しむ。

 自分で言い出したことなので、お菓子の用意は一人でしよう。

 そう思っていたのだが、ガブリエルも手伝ってくれた。


「役に立つかわかりませんが」

「そんなことないわ! すごく助かる!」


 ガブリエルと二人三脚で調理を勧める。途中からプルルンも参加してくれた。


『手を貸すよお』

「ありがとう、プルルン!」


 ガブリエルとプルルンのおかげで想定していた以上のお菓子を生産することができた。

 これでどれだけ子ども達がやってきても、不足することなく配れるだろう。


 クッキーにキャンディ、パイにキャラメル、チョコレートにブラウニー、チーズケーキなどなど、子ども達が大好きなお菓子を作り、一つ一つ丁寧に個装した。

 そんなお菓子をかごに詰めて、みんなに配っていく。

 ハロウィーン当日、魔女の扮装をした義母が登場する。


「ふふ、似合っていますか?」

「はい、とっても!」

「フランセットさんのプリンセスの装いもきれいですよ」

「あ、ありがとうございます」


 プルルンは風船の扮装をしていた。ふわふわ浮いているが、いったいどんな構造なのか。

 ニコとリコ、ココは三匹の熊、という童話のキャラクターの扮装をしていた。

 最後にやってきたのはガブリエルである。

 吸血鬼の格好は信じられないくらい似合っていた。


「ガブリエル、本当に素敵だわ!」

「フランも、美しいです」

「ありがとう」


 ハロウィーンを計画してよかった、と心から思う。

 時間になったので、街へ繰り出す。

 街には仮装した子ども達が大勢待ち構えていた。

 私達を見つけるなり、お決まりの言葉を言ってくる。


「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!」

「はいはい、どうぞ」

「わーい! ありがとう!」


 なんて微笑ましいイベントなのか。癒やされてしまう。

 次から次へとお菓子を配っていたのだが、大人が声をかけてきたのでギョッとした。


「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!」

「あ……セイレーン大公」


 お菓子大好きセイレーン大公がハロウィーンのイベントを聞きつけ、やってきたようだ。

 一人ではなく、グリゼルダ王女までいた。

 猫の仮面をつけた、ケットシーの扮装をしているという。


「お、王じょ――むぐ!」

「お忍びなんだ」 


 グリゼルダ王女は少し照れた様子で言ってくる。


「お、お菓子をくれなきゃ、いたずらするよ?」

「――!!」


 あまりの愛らしさに悶絶してしまう。

 どうぞ、とお菓子を差し上げたのだった。

 セイレーン大公も物欲しそうにしていたので、おすそ分けをした。


「いいのか?」

「いたずらされたら困りますので」

「感謝する!」


 そんなこんなで、楽しいハロウィーンは過ぎていく。

 夕方になればたくさんあったお菓子もなくなった。


 帰り際に、ガブリエルを発見する。

 いたずら心が生まれ、声をかけてしまった。


「ガブリエル、お菓子をくれなければいたずらするわよ!」


 振り返ったガブリエルは驚いた顔を見せたのちに、空になったかごを見せる。


「フラン、残念ながらお菓子はないんです」

「あら、困ったわね」

「いたずらしてください」

「え!?」


 まさかいたずらをすることなるとは考えていなかったのだ。

 ガブリエルはなぜか、少し嬉しそうな様子で私のいたずらを待っている。

 ええい、ままよ! 

 そう思って彼の頬にキスをした。すると、ガブリエルはみるみるうちに顔を真っ赤にさせる。


「なっ――!?」


 いたずらをするように言うから、こんな目に遭うのだ。


「フラン、これはいたずらではなく、ご褒美です」

「そうなの?」

「はい……ありがとうございます」


 いたずらは失敗してしまった。

 来年こそはとっておきのいたずらを考えておいて実行しなければ。

 そんな誓いをしてしまったハロウィーンだった。

お知らせその①

挿絵(By みてみん)

コミカライズ版『スライム大公と没落令嬢のあんがい幸せな結婚③』発売中です!

アクセル殿下がガブリエルの領地へやってきた!

なぜかカエル釣り大会が開催されて……?


お知らせその②

新連載がスタートしました!

『噂の悪女と魂が入れ替わりました! ただし、私の本体は死んでいるようです』

あらすじ

田舎育ちのご令嬢、噂の悪女と魂が入れ替わる!?

平々凡々な貴族令嬢ルルは、事件に巻き込まれて悪女ツィツェリエルと体が入れ替わってしまった。

ツィツェリエルは悪人一族と名高いヴェイマル侯爵家の娘で、非道な行いを繰り返す悪い女だ、と噂の貴族令嬢だったのだ。

それだけでも大変で不可解な出来事なのに、新聞にはルルが血を流して死んでいた、という報道がなされる。ルルを殺したのは誰? なぜ悪女ツィツェリエルと体が入れ替わったのか?

ルルは謎を解明するため、屋敷にいたでっかい猫ちゃん(※精霊)と一緒に調査します!

連載ページ

https://ncode.syosetu.com/n6682jn/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ