表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライム大公と没落令嬢のあんがい幸せな婚約  作者: 江本マシメサ
後日談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/65

スライム大公二巻発売記念SS『フランの母が来た!』

 今日、母が私とガブリエルに会いにやってくる。

 最初はスプリヌ地方を訪問してもらう予定だったのだが、雨期に入ってしまったのだ。

 去年よりも十日ほど早かったようで、ガブリエルは頭を抱えながら、「スプリヌ地方にフランのお母様を招待するのは止めましょう」と決断したようだ。

 梅雨の初めに降るスプリヌ地方の雨は、霧のようにサラサラの雨で美しい。

 母も気に入るだろうが、ガブリエルと義母は揃って憂鬱な表情でいた。

 彼らが自信を持って招くことができるシーズンに来てもらったほうが、精神的にもいいのだろう。そう思って、王都で会うことを勧めたのだった。


 義母も紹介する予定だったのだが、今回はひとまず、ガブリエルとだけ会ってもらおうという話になった。


 あっという間に当日を迎え、私はガブリエルと共に転移魔法で王都に出かける。

 プルルンも同行したのだが、ガブリエルから大人しくするように、と噛んで含めるように言われていた。

 プルルンは『わかっているよーだ』と言っていたものの、ガブリエルは「怪しいものです」とため息をつく。


「フラン、母君と会うのは久しぶりなんですか?」

「ええ。二年以上ぶり、かしら?」


 ずっと会いに行くとか、帝国に来いとか言われていたものの、だんことして断っていたのだ。


「また、どうして断っていたのですか?」

「お母様、強引なところがあるの。私がくたびれたエプロンドレスを着て、食べる物にも困っているような暮らしをしていると知ったら、強制的に帝国へ連行していたはずよ」


 あの当時の私は、誰の手も借りずに暮らしてみたい、と考えていたのだ。


「今はガブリエルのおかげでいい生活をさせてもらっているから、きっと帝国に連れて帰るとは言い出さないはずよ」

「だといいのですが。その話を聞いたら、恐ろしくなりました」

「心配しなくても大丈夫よ。私は今、人生の中で一番幸せだから」

「フラン……ありがとうございます」


 約束していた喫茶店で待っていたら、母が大勢の取り巻きを連れてやってきた。


「フランセットさん、お久しぶりねえ」

「お母様!」


 母はおっとりとした様子で近付き、私をぎゅっと抱きしめる。


「会いたかったわあ」

「わ、私もです」

「嘘よお。こっちが会いたいって言っても、来ないで~~って言っていたじゃない」

「そ、それはそうだったけれど」


 さっそく、会いたくないと言った過去を責められる。

 言い訳をする前に、ガブリエルを母に紹介した。


「お母様、彼が婚約者のガブリエルよ」

「あら、あなたがそうなの」

「はい。ガブリエル・グリエット・ド・スライムと申します」

「はじめまして」


 ガブリエルはガチガチだった。

 母が隣国の皇帝陛下の妹なので、余計に緊張すると話していたのを思い出す。


「フランセットさんがあなたに大切にされているのが、一目でわかったわ。本当にありがとう」

「彼女を世界一大切にし、幸せにするのは当然のことです」


 母はガブリエルのことを気に入ったようで、ニコニコしながら話しかけている。


「そういえばガブリエルさんはスライム大公、なのよねえ?」

「ええ」

「領地のスライムを支配下に置いているの?」

「それは――」

『そうだよ~~!』


 私の膝の上で大人しくしていたプルルンが、突然跳び上がり、母の疑問に答えた。

 至近距離でスライムを初めて見た母は、目を丸くしていた。


「まあ! この子が使役しているスライムなのねえ」

『プルルンだよお』


 プルルンが伸ばした手を母に差しだすと、握り返していた。

 怖がるかと思っていたが、面白がっているようだ。

 母はプルルンを興味深そうに指先で突いていた。


「スライムってかわいいのねえ」

『そう! かわいいんだよお』


 ガブリエルはプルルンの突然の登場に肝を冷やしていたようだが、母とのやりとりを見て安堵したようだ。


「その、スライムを怖がらないなんて、御義母様は度胸があられるのですね」

「あらそう? 普通の魔物は恐ろしいけれど、プルルンはかわいいから」


 すっかりプルルンのことを気に入ったようだ。

 プルルンは母の膝に乗って、嬉しそうにプルプル震えていた。


 思いのほか、顔合わせは和やかな雰囲気となった。

 それもプルルンのおかげだろう。


「今度はアデルと一緒に、スプリヌ地方を訪問するわ」

「ええ。お姉様にも会いたいです」


 母はこのあと取り巻き達と一緒に、王都観光するのだと言う。

 楽しげな様子で、私達のもとを去ったのだった。


「ガブリエル、プルルンのおかげで、なんとか終えることができたわね」

「本当に」


 感謝の印として、プルルンにおいしい蜂蜜水を作ってあげよう。

 そんなことをガブリエルと話したのだった。

挿絵(By みてみん)

スライム大公と没落令嬢のあんがい幸せな婚約 2(ホビージャパンHJノベルス)が明日、5月19日に発売します。

本編はオール書き下ろしです。(番外編の『フランセットの日記帳』のみ、ウェブから収録)


セイレーン大公の登場で婚約中の二人が大慌て!? スライム大公との溺愛ファンタジーラブコメディ!

スライムを偶然拾ったことをきっかけに始まった、フランセットとガブリエルの婚約生活。

フランセットの父親のせいで結婚こそまだなものの、二人はその仲を順調に深めていた。

そんなある時、ガブリエルと同じ魔物大公の一人、セイレーン大公・マグリットが突如領地にやってきてしまう。ガブリエルと親しげに話す美女・マグリットの登場にフランセットは気が気でなくて――

魔物大公会議の準備に、新商品の開発など、フランセットは大忙し!

スライム大公の領地を舞台に、相性抜群な二人の幸せな婚約生活&領地改革、第2弾!


どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ