断罪イベントは回避したいです
あとがきを編集したらうっかり上げてしまいました。
明日、18時に続きは上げます。
結局、その日は「善は急げだよ!」という殿下の一言で(何が善なのかという質問はスルーされたが)その日のうちに婚約の手続きをし、晴れて……晴れて? レオナルド殿下と私、悪役令嬢のサラ・アーガイルの婚約はゲームのシナリオ通り結ばれた。
「はぁー…にしても、こんな事になるなんてね…」
王宮から戻り、自室。
前世の記憶が戻った私は、あれから記憶を整理するためにざっくりとだが思い出したことをノートにまとめ、机の上に広げている。
前世では普通の一般家庭で長女として育ち、高校を出てから演劇の専門学校へ進学。そこからは小劇場で芝居をしつつバイトで生活費を稼ぐ…という生活をしていた。今の贅沢三昧の生活とは真逆な生活。
「前世の私、ね…」
全く別の人間ってわけでもなく、まるで前世の自分の知識や記憶が、遠い子供の頃の記憶のように「あんな事もあったなぁ」といった感じで思い出される。
記憶が混濁したり、前世の自分に乗っ取られるということもなく、元よりあまり子供らしくない子供だったからこそ、むしろ前世を思い出した今の方が子供らしく振る舞える気がするくらいだ。
「というか、どうやってバッドエンドを回避したら良いのかしら? レオ様は協力してくれるそうだけれど、他の攻略者のこともあるし…」
そう、エト学の攻略キャラクターは全部で五人。
王位継承権第一位であるレオナルド。
そして王位継承権第二位であり腹違いで同い年の弟、ツヴァイ。
レオナルドの専属護衛騎士のアルフォンソ・ホワード。
侯爵のジェイク・オーバートン。
伯爵のスウォン・テイラー。
まず気をつけたいのはレオナルド・ツヴァイ・アルフォンソの三人のルートだ。
レオナルドルートでは私、サラ・アーガイルは婚約者という立場もありヒロインに毒を吐いたり取り巻きが行う悪行を知った上で止めなかったことにより、婚約破棄。そして未来の皇后に対して嫌がらせを行ったという理由で国外追放。もしくはヒロインがハッピーエンドになった場合は暗殺を試みて処刑となる。
元々のレオナルドのキャラクターは、腹黒王子。けれど転生をしているから腹黒ではなくなるだろう。どちらかというと、オネエ系…?
ーーーでも、前世が女性だっただけだからオネエさんとは違うのかしら?
そう思いつつ、レオナルドの腹黒王子にバツを付けて矢印を引く。その先はハテナにしておいた。
そして次にツヴァイルート。ツヴァイは側室の子供で、王位継承権は第二位。同い年ながら兄であり正妻の子供であるレオナルドと比べられることが多く、入学時にはグレて…いや、反抗期ともいえる、素行不良な王子になっていた。
このルートではヒロインによってツヴァイは自信を取り戻すものの、貴族的なプライドの高いサラはツヴァイとヒロインの付き合いをよく思わなく妨害。そして王妃に相応しくないと婚約破棄をされ、さらに王族への不敬罪が適用されて国外追放となる。
最後にアルフォンソルート。彼はレオナルドの好感度が高いと攻略することができない。忠義心に溢れ、寡黙。けれど一度恋心を認めるとヒロインだけにはとても甘い顔を見せることから「クーデレ最高!」と、一、二を競う人気があった。
幼い頃からレオナルドに仕え、庶民が学園に通っていることが不服なサラの悪行を暴き出した後に、レオナルドへと婚約破棄を進言する。こちらのルートでもサラは国外追放となる。
ちなみにこのふたりはハッピーエンドの場合のみサラは国外追放になり、ノーマルルートでは苛め自体は止められたものの犯人は分からず。卒業後はヒロインは文官へと進み、お互いに切磋琢磨していく…という、乙女ゲーム的にノーマルなのかバッドなのかよく分からないエンディングとなっている。
…唯一レオナルドルートだけが、ノーマルでも婚約者の地位に収まれるのよね。
だからというわけではないが、レオナルドを真っ先に攻略をし、ハマる人が多かった。さらにハッピーエンドではノーマルとは非にならないくらいの美麗スチルが用意されており、これも人気が高まった理由だろう。
「レオ様は協力してくださるから良いとして…問題はこの二人よね。さすがに私も断罪イベントは回避したいからそもそも虐めたり、悪役令嬢なんてなるつもりないけど……あ」
そこまで言って、ふと止まる。良いことを思いついたと、目をキラキラと輝かせてパッと立ち上がった。
「そっか、そうだわ!!」
なんでこんな簡単な事に気づかなかったのかしら、とクスクス笑うと、小さな引き出しから便箋を出して殿下宛に手紙を書き始めた。
区切りがいいので今回は短めです。
しおり&評価ありがとうございます!