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偽称の笑顔

はい、バァン!前日PV12ぃ!!

誰も見てないぞこの話。あなただけよ~ん

サンキューね!

服と髪が乱れた赤髪の女性が目に涙をためて

銀侠に戦うのをやめるように訴えかけている。


「退きな、見りゃ分かんだろィ

あいつァ正気じゃねェ」


「退きません、恩人なんです」


ピヨロとの戦闘に割り込んできた赤毛の女性は

弱々しく震えながらも退く気配がない。


『チッチッチ』


舌打ちをした銀侠が顔を伏せる。

女性の姿を再確認すると状況が嫌でも

推測できてしまう。


「・・・暴漢か」


「ッ!・・・エコーロケーション

あなた、目が見えないのね」


意外だった、旅先でその言葉を聞いたのは

初めてで面食らってしまった。


「へェ、博識だな・・・わかった

嬢ちゃんに免じてそいつは見逃す、今回はな。

そいつが暴れないうちに嬢ちゃんもここから離れな」


「・・・ピヨロ、さっきは本当にありがとう

また今度お礼をさせて」


「ちがちがちがちが・・・・違う・・・

エデンエデン、至福の・・・至高の・・・

アプル様・・・アプル・・・楽園に至る道(エデンローズ)ッ!!」


やはりこちらの声はもう聞こえてないようだった。

助けられたというのも偶然なのだろう。

噴水広場を離れ銀侠は女性に問う。


「本当にあんなのに助けられたのかィ?」


「えぇ、私は鉱山で働いてるんだけど

仕事に向かう途中でごろつきに無理やり狭い路地に

連れ込まれて・・・」


「いい、すまねェ余計な話だった」


負ったばかりの傷に塩を擦り込むような

事をしてしまった。しかし彼女は俯いたまま

言葉を続けた。


「終わった後、首を絞められて・・・私、・・

殺されるんだって、思ったら・・あの人が・・・」


震えていた言葉とうとう詰まり

透明な雫が目から頬に滑り落ちていく。


「・・・家まで案内しな、護衛してやらァ」


「・・・」


女性の顏が曇る。

今は男が怖い状態だろう。話が分かる相手と

分かっても初対面、警戒はしてしまうし恐怖が勝る。


「私・・・仕事行かないと」


「バカ言いなさんな、こんな時に仕事にいくヤツ

なんざあるか、自宅療・・・あー・・・

こんな時にゃ酒がいいか?お嬢ちゃん飲める口かい?」


「え、あの・・・」


「いい店知ってんだ、奢ってやるから付いてきな」


銀侠が女性の前に出て先導し始めた。


「どしたィ?置いてちまうぜ」


「あ、は、はい・・・」

(・・・勝手な人、悪い人ではなさそうだけど)


来たばかりの街だが知っている限り人通りの

多く広い道を選んで進んでいく。


鞘を鳴らす回数が多い、いつも以上に周囲に

注意しながら進んでいるのだ。


「うるせェだろうが勘弁してくれよ」


後ろを振り向いてヘラヘラ笑う。

汚い髭面なのに無邪気さのある笑顔に

少しだけ笑いそうになった。


戦ってる時とのギャップの大きさのせいだ。

冷静にその差を比べると余計に面白くなってきた。


「あ、いえ大丈・・・フフ・・・」


「なんでェ、オイラの顏になんか付いてっかィ」


「あ、いや!何でも・・・ないで・・・

フクククク・・・ごめんなさい・・・ククク」


笑いを抑えて肩が震える。

ダメだツボに入ってしまった、そのキョトンとした

顏ズルイ。堪えられない。ていうか笑ってる自分が

一番面白い。


「アハハハハ!!!ヒヒヒヒ・・・

ぷ、クク・・・ヒー!ゲホ!!」


(・・・なんで腹抱えて笑ってんだ?

もしや放っておいて平気だったか?)


壊れたように道端で大笑いしているものだから

周囲に人が寄り付かなかった。


歩いていると笑いも落ち着き小綺麗なレンガ造りの

建物の並ぶ地区にたどり着いた。


「・・・急に笑ったと思えばなんで

今度は俯いてんでェ・・・」


後ろを向いた銀侠から視線をずらし

ボソリと謝った。


「さっきはすいませんでした・・・」


「気にすんな、メソメソしてるよかいいさ

それより着いたぜ」


地区の外れにある木造の小さな酒場に

女性は案内された。銀侠が扉を開き

中に入っていく。


(グリーンバード・・・?

なんか聞いたことあるような・・・)


首を捻って考えてみたが思い出せない。


「おーい、チャーラ居るかィ?」


「あれ、来るのは夜じゃなかったのかしら?

って、なんで女性連れてるの?」


「この嬢ちゃんに酒・・・いや、スープもいいかもな

ま、なんか出してやってくれや金はオイラが出す」


いきなり女を連れて戻って来た銀侠に一瞬

白い視線を送ったが女性の様子を見て

なんとなく状況を察した。


「やっぱ見かけによらずお人好しね

いいわ、入って。とりあえず温かいお茶でも出すわ」


「見かけには余計じゃねェかい?

まあいいや、オイラは酒でも・・・」


「先に借金返せたら出してあげるわね☆」


鉄仮面のような硬質な作り笑いが銀侠に

向けられた。


「ケッ、世知辛ェ世の中だぜェ」


「え!?借金あるのに奢るとか言ってたんですか!?」


「気にすんなィ、それよか名前聞いてなかったなァ

オイラは銀侠ってんだ、雨入銀侠よろしくな」


「そういえば・・・!私は

クリスチーヌ・アース・アーターって言います!

鍛冶屋やってます!!」


チャーラが目を丸くしている、その様子に

銀侠が気が付いた。


「どしたィ?」


「クリスチーヌってドレッドの姉なのよ

それもあって有名な鍛冶屋ね・・・

はじめましてクリスチーヌ

御目に掛かれて光栄だわ、チャーラよ」


「ありがとうございます!」


差し伸べられた手をクリスチーヌは握り返した。

なんか妙にチャーラの手に力が入っている。

ドレッドに殺されそうになったから仕方ないのかもしれない。


(い、痛い・・・)


「あー・・・世間って狭ェなァ・・・」


天を仰ぎ他人事のようにポツリと呟いた。

人物紹介


雨入 鈴音


この物語から約20年後の物語

『狐につつまれて』の主人公。

ハチャメチャな事を平然とやってのける

やんちゃ娘。


銀侠とは遥か遠い親戚であり血の繋がりは皆無と言っていい。

しかし、やがて銀侠と関係深い人物と共に旅に出ることになる。しかしそれはまだ書いてない話。

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