根なし草の理由
遅くなりました、本当にすいません・・・
まぁ、待ってる人いないと思うけど。
皆さん紙類大丈夫ですか?
ボチボチ落ち着いて来ましたね。
デマに踊らされて偉いことになったもんですねぇ。
しょうもない、買い占めはいかんよね・・・
私はようやく鼻セレブで尻セレブする生活のから脱却できましたよ。
ありがとう尻セレブ、さようなら尻セレブ。
君の犠牲は無駄にしないからッ!!!!
「ぎ、銀侠さん、重いんですね・・・」
「そうかィ?お、ここでいいぜ」
「はい!?この高さから落ちたら
危ないですよ!」
「でぇじょぶでェ下に羽毛布団があらァ」
真下にいる紫のハーピーを指差して
へらへら笑っている。
「あれ見逃して
欲しい人の一人なんですけど・・・」
「殺しはしねェ、安心しな」
セレナーデは少し迷ったが緑の鎧の人
ドレッドがピンチなのを見て銀侠の
言うことに従った。
「離しますよ!いいんですね!?」
「おう、さっさとしな、あとガキンチョ
連れてんだろ?そいつを守ってやんな
こっちは任せろや」
「はい!」返事と同時に銀侠を捕まえてた足を
離した。迷いなくその視線の先に
ソロウを捉えている。
「本当に目が見えてないのかなぁ・・・」
戦いを見届けたいが銀侠の言うとおりコリが
心配で気が気でない。銀侠の落下を見届けると
全力で来た道を戻っていった。
「人間不正が舐めてんじゃないよ!!」
銀侠のすぐ下で紫の翼のソロウが叫んでいる。
笑えて来る、散々人間を舐めていたのは
魔族の方だ。
思ったことがそのまま銀侠の口を突いて出た。
「おかしいねェ」
紫のハーピーの上。
あり得ない位置から聞こえた人間の声に
瞳孔が開く。同時に頭に刀の鞘が叩きつけられ
顔面から地面に叩きつけられた。
ドレッドのすぐ近くに銀侠は着地して
刀の背で肩を叩きながら言う。
「舐めてたのはお前さん達の方だったろィ?」
セレナーデの本心は恐らく『ハーピー全員を
見逃して欲しい』だろう。
思っている事を隠していると声色に出る。
言われてもわからない程微細な変化。
目が見えぬから、耳で世界を見る彼だから
他人が心に隠したものが言葉と共に
漏れ出でて、朧気に見えるのだ。
セレナーデもわかっている。
3人だけでも虫が良過ぎる話だと。
わかった上で頼んで来たのだ。
だったら断れないだろう。
(女が好きだから女を泣かす事なんざできャしねェ。
やれやれ、女に弱ェってのは男の性かねェ・・・)
空でハーピー達を足場に舞いながら
そんな事を考えていた。
・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
「さァ、まだやる気かィ?」
刀を鳴らしながら銀侠は笑って深紅と紫の
ハーピーに問いかける。
「人間に舐められたままでいられるかい!
八つ裂きにしてやる!!」
怒りで顔が真っ赤になっているソロウの隣で
深紅の翼のデュオ―ルの顏は羽の色とは対照的に
真っ青になっている。
「ソロウ、待って・・・あの髭男まだ
一回も目を開けてない・・・」
「!? バカ言うんじゃないよ!!
そんな訳ないだろ!!」
「じゃあアイツの目の色は!?見た!?」
「ッ!・・・化け物かいアイツ!!」
「あらら、バレちまったィ、で?
まだやる気かィ?」
「トゥリオはどうした!?」
「逃がしたよ、オイラはべっぴんさんは
相手にしたくねェからよ。
ま、まだ向かってくるなら・・・」
刀を握る銀侠の手に力が入る。
それだけではなかった、鼻で笑ったと思ったら
場の雰囲気が激変する。
「俺も本気ので殺しに行かなきゃなァ?」
白く濁った目を見開いた。
見えていないというのに
不気味な視線さえ感じる。
それほど的確に銀侠の目先はソロウ達を
捉えていた。
気圧されてソロウもデュオールも
意識せず後退る、生存本能からなのだろう。
「て、徹底だよ!!アンタ等引き上げろ!!」
叫びながらいの一番に飛び立ったのはソロウ
だった。デュオールがその後に続き僅かな
生き残りがそれを追った。
「貴様何をしている!!」
小指で鼻をほじりながらハーピーを見送っている
銀侠の後ろから若い男の怒号が飛んできた。
「やれやれ」とため息をついてほじれた鼻くそを
丸めて指で弾きながら黄金の鎧を振り返った。
「なんでェ」
「なぜ殺さなかった!!お前の程の実力なら
造作もなかっただろう!!」
「いやァ、オイラはそんな強くねェさ
怖くて怖くて膝が大笑いしてやがらァ」
「ふん、なるほど噂に違わぬクズらしいな
雨入外道流の使い手は」
「へへ、有名人みたいで嬉しいねェ」
ゴルドルの視界に訳のわからぬといった
顔のドレッドが入ってきた。
「チッ・・・知らないのか、外道流の
名に恥じない裏切りの話を」
「う、うるせえ!バカで悪かったな!!」
「昔々、あるところに殿様に仕える剣士が
いました。いつか敵国に攻め入れられたとき
殿様に仕えてきた剣士はなんと敵の大将の前で
長年仕えてきた殿様の首を跳ねて
命乞いをしたのです、国は墜ち民は激怒して
殿様に仕えていた剣士とその一族を
追放しましたとさ、それ以来その剣は外道流と
呼ばれ一族はバラバラになり全てを失いました。
めでたしめでたし。
・・・こんなとこであってるかィ?」
「いや、足りない。ゆく先々で不幸をばら撒く
厄災の使者だろう?」
ゴルドルが立ち上がり痺れた体で無理に
剣を構えた。まだ毒は抜けてない。
立つのでもやっとの筈だ。
「へへへ、血の気の多い野郎だねェ」
「僕は汚い物が大っ嫌いなんだ、裏切りの剣も
汚い髭面もな」
指摘された無精髭を撫でながらヘラヘラ笑って
向けられた剣に応じる。
「ひでェ言われようだ、否定しねェけどよ」
鞘から刀を抜き白刃が太陽を反射する。
やはり銀侠はその白刃を肩に乗せ涼しい顏で
笑うのだ。
「お、おい!ゴルドルやめろ!一応恩人だぞ!」
ドレッドがゴルドルの方に手を置くと
それを振り払い、転びそうなった。
「触るな、弱い奴も嫌いなんだ
来い、クズ剣士」
「・・・ッ勝手にしろ!!」
改めて剣を構える。
「オイラ、野郎相手に手加減なんざ
できねェからよ覚悟しな」
「来・・・
ゴルドルの首に刀が触れ、なぎ倒された。
同時に納刀した際の甲高い金属音が響いた。
「なんでェ、3戦士の中で一番弱ェじゃねェか
峰打ちで正解だなァ」
「い、一番って、もしかしてピヨロとも・・・?」
「おう、さっきな。
ヒヤッとしたよ、頭はおかしいが実力は半端じゃねェ」
恐る恐る聞いたドレッドにあっさりと答えた。
内心、勝てない筈だと思ってどこかホッとした。
それと同時にそれほどの実力ならラースを
倒せるのではないかと僅かな疑問が芽生えたが
それどころではない。横たわる黄金の鎧を指差して
「あれ、生きてるのか?」と疑問をぶつけた。
「言ったろィ、峰打ちだ
死んじゃねェだろ、まあ数日首がイテェかも
しれないけどよ」
「・・・ありがとう」
ドレッドが深く頭を下げた。
「なんでェ、気持ち悪ィな」
「アンタが居なかったら全員死んでた。
命の恩人だ、俺はアンタの命狙ったってのに
助けてくれた、本当にすまなかった、ありがとう」
「ただの成り行きでェ、礼だったら
お前さんの姉とグリーンバードの
チャーラに・・・そうだ、礼すんなら
コイツをチャーラに渡してくれ」
懐から巾着のような袋を取り出すとドレッドに
手渡す。
ジャラジャラ鳴る音で中身の検討がついた。
「これ金か!?」
パンパンの袋は見た目通りズッシリと
していてかなりの金額が入っていそうだった。
「ちょっくらグリーンバードって飲み屋で
借金こさえちまってよ、お前さんの姉ちゃんも
そこにいるから行くついでに渡してくれ」
「え?アンタが直接渡せばいいんじゃ?」
「さっき金髪のあんちゃんが言ってたろィ?
外道流は不幸をばらまく、一ヵ所に留まっちゃ
いかんのさね」
ドレッドに背を向けて歩き始めた。
さて、次に流れ着く場所はどんなところか。
「おい!」
後ろから呼び止められるがわざわざ止まる
義理もない、ドレッドを振り返らずに手を振って
別れを告げた。
「次は酒といいケツした若ェ姉ちゃんさわり放題の
夢みてェな、町に着かねェもんかねェ・・・」
まあ、そんな場所でも長居する気はないのだが。
嫌われ者が居ると余計な争いが起こるモンだ
不吉印がついてるならなおのこと。
髭を撫で、鞘を鳴らし、口笛を吹きながら
風の向くままこの場を離れていく。
それを見送るドレッドはその背中に
染み付いた孤独と哀愁が漂っているように映った。
人物?紹介
ソロウ、デュオール、トゥリオ
ハーピー3姉妹。
魔族なので血縁ではないがそんな関係である。
この3匹がハーピーの群れのトップ。
紫のソロウが一番権力があり、偉そうな話し方をする。身体が他のハーピーより一回り大きく
若干だらしないボディラインをしている。
若い女性型の魔族は男を誘惑して食らうのが
目的であることが多い為ボディラインがだらしないのはレアだったりする。生まれた瞬間から姿が定まっているので不摂生とかではないし痩せることもない。
変質の魔力が色濃く人間に有効な毒を持っている。
デュオール、トゥリオ
ほぼ同じ性格の二匹、違いは色と
魔力ぐらい。
赤いデュオールは火の魔力
青のトゥリオは氷の魔力
性格は残酷で基本的に何かを見下していないと落ち着かない。心優しいセレナーデに暴力を振るっていたのはそのため。
しかし、セレナーデの優しさに付け上がっている自分達の性格はあまり好きではなく、そこから目を剃らす為暴がエスカレートしていった。