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欺いてやりましたわ!

はろーえぶりわん。

おまたすぇしますた。続きだよ。

誰も見てないがなッ!!

私は人間の子供をこの手で殺した。

首を絞めた残酷な感覚がまだこの手に

くっきり残っている。


ソロウ達が飛び去った後に身体を起こした。

汚泥にまみれてくしゃくしゃになった

顔で殺した子供、コリをギュッと抱きしめた。


ソロウにコリを殺せば鉱山への襲撃を辞めると

言われて、コリは自分から殺して構わないと

真っ直ぐな瞳でそう言った。

でも結局・・・約束は守られず紫の翼の号令で

ハーピー達全員が鉱山へ向かって飛び去って行った。


「ごめんね・・・ごめんね・・・」


掠れた声で謝罪し続ける、それしかできなかった。


「全員行きましたのね?」


コリがぱっちりと青いその瞳と口を開いた。

私は一瞬なにが起こったのかわからなくて

目を皿みたく丸くしてコリを見た。


「プフっ!なんですのその顏!!あんなに

力が入ってない手でワタクシを絞め殺せる

なんて思ってましたの?」


きっと酷くマヌケな顔してたんだろうな。

コリが笑ってる。


「い、生きてたの・・・?ホントに??

ホントに・・・・?????」


「生きてますわよ、ワタクシの死んだフリ

我ながら完璧でしたわ!!・・・まぁ

服が・・・その・・・お小水でビッショリ

になってしまいましたが・・・」


「コリィィ!!」


「ぎゃああぁ!!顏こすりつけないで下さいまし!!

貴方ワタクシのお小水に顏からダイブさせられてた

じゃないですの!!汚い!!

離れなさいな!!オエェェェッ!!!」


「よかった・・・よか・・・・・・・」


安心したら一気に気が遠のいてく。

あぁ、魔力が遂に底をついたんだ。死ぬんだ、私。

でも、コリが生きてればいいか・・・な。


「セレナーデ!?ちょっと!!しっかりなさい!!」


遠のく意識の中でコリが拾った木の枝で

自分の手のひらを傷つけたのを見た。

小さな手のひら一杯に赤い雫が溜まっていき

それを私の口に運ぶ。


魔力は液体に溜まりやすい性質があり

生物の体液が最も魔力を含有しているのを

コリは知っていた。


「飲みなさい!!血よ!!セレナーデ!!

死んでは駄目!!ワタクシを一人にするなんて

許しませんわ!!!」


「飲みなさい!飲みなさいったらッ!!

くッ・・・・」


コリは意を決して自分の手のひらを自分で

啜った。充満する鉄の臭いに思わず

吐き出しそうになるのをどうにか堪える。


口いっぱいの血液をセレナーデの口へ運んでいく。


「ん・・・んん・・・」


無理やりセレナーデの口に自分の血液を無理やり

流し込む。コクリとセレナーデが血を飲んだ

音がした。


口を離すと血が糸を引きお互いの顏が

血と泥で汚れてる。

手のひらの血はまだ止まらないうちに

もう一度同じことを繰り返した。


「うっ、ゲホゲホ!!」


「セレナーデ!!良かった!」


遠のいていた意識がコリの血によって

一気に引き戻された。


「コリ、なんて無茶するの!?」


血で真っ赤になった手のひらを覗き込む。

枝で粗悪に裂かれた傷から痛々しく

血液が湧き出ている。

人はなんて不便なのか。魔族ならすぐに

傷が塞がるのに。


「黙らっしゃい!それはお互い様でしてよ!!」


正論をぶつけられて確かにと

納得してしまう自分がいる。

出されてた僅かな食料を殆どコリにこっそり

回してたりしたし。


「・・・まあ、お互い無事だったので

よしとしませんこと?」


「うん・・・でも、これからどうしよう・・・」


「決まっていますわ!!鉱山に行きましょう!」


「えぇ!?なに考えてるの!!

そんな怪我してるのに!!」


「ワタクシ達のせいで鉱山の方々を危険に

晒してしまったのですのよ!!」


あぁ、コリの真っ直ぐなその目。

その小さい体のどこにそんな強さを

持っているんだろう。私もコリのような

強さを持てるのかな。


「わかった・・・行こうコリ」


「その前にほら、血が止まるまでは

ちゃんと私の血を飲んで行きなさい。

まだ魔力が足りてないでしょう?」


「ありがとう・・・」


ありがたく施しを受けた。

空っぽの体に魔力が巡る。


ただコレだけで魔力を補うことは難しかった

から途中で川に寄って魚とか水をがぶ飲みして

ある程度補給してから鉱山に飛び立った。


・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


「ひぇぇ・・・す、素晴らしい景色だけど

風と高さで恐怖心の方が優りますわ!!」


「怖い?しっかり掴まっててよ」


言われなくても全力でそうしてるだろうけど。

誰かをおんぶしながら飛ぶなんて初めてだし

しかもガタガタ震えてるから余計に飛びにくい。

まぁ、飛べない生き物からしたら高いところって

怖いんだろうな。


「あ、あれですわ!ボナ鉱山!!」


「うわぁ・・・地滑りあったみたいに山肌が

丸出しになってる・・・」


「人の手が入るということは自然が減るって

ことですのよ、生活の安定のためには仕方の

無いことですの」


「へ~、コリ見つかるといけないから

高さ下げるよ」


コリの手により一層力が篭ったのも確認してから

高度をグンと下げる。


「ぎょぇぇええぇえああぁ!!!!

徐々に下げなさいよおぉ!!チビりますわよ!!

貴方の背中でチビりますわよ!?バカナーデ!!」


「ご、ごめん・・・いつもの癖でつい・・・」


「あ、まずいですわ!今ので手が震えて

力入らない!!落ちる!落ちますの!!」


「え!?ちょ!着地するから待って!!」


急いで地面に降り立ちコリを降ろすと

腰が抜けてるらしく地面にへたりこんでしまった。


「ふふ、死んだフリでお小水垂れ流して

なかったらここでチビってましてよ・・・」


コリが死んだ魚のような目で乾いた笑みを

浮かべている。


「ごめんってば・・・」


「! セレナーデ、山の方から誰か

飛んできますわ」


結果論かもしれないけど一気に高度を

下げたのは正解だったみたいだ。

見つかってたらコリが危ない。

山から飛んできたのは青いハーピー。

紫のソロウの取り巻きのトゥリオだった。

緑の鎧を着た人間を運んでいる。


「まずい!コリ隠れてて!!」


翼を広げ全速力でトゥリオに向かって

飛び立つ。


「気を付けて下さいましてよ!」


トゥリオに近づくと彼女の声が聞こえてくる。


「アハ!頭から落ちて綺麗に割れてね?

中身が飛び散るの見るの爽快なの!!」


「うわああぁあぁああぁあ!!!」


「アハハハハハハハハ!!!!!」


「やめてぇぇぇぇ!!!!」


落下する鎧の男をなんとか空中で受け止める

ことができた。


「え!?なんでハーピーが俺を・・・」


「いいから!来ますよ!逃げて下さい!!」 


助けた人を降ろして逃げるように促した。

上を見ると機嫌を損ねたトゥリオが私を

見下している。ここまで来たらもう後には

引けない、戦うしかない。受けた仕打ちの

数々が強く鮮明に蘇ってくる。

怖くて、逃げ出したくなる。


「へぇ・・・追って来たんだぁ、セレナーデの

ことだからヘタれて動けないでいるかと

思ったんだけど」


普段より低い声色に身震いがする。


(戦うしかない・・・戦うしかない・・・)


「おい、アンタ震えてるじゃないか!

大丈夫なのか?なあ!!」


「大丈夫ですから・・・逃げて下さい」


笑ったつもりだったけど私の顏を見た彼は

持っている武器を強く握り直してこう言った。


「もう捕まらない、大丈夫。俺だって戦えるし

弱くない、俺ドレッドよろしくな」


『カン』 『カン』


聞き慣れない音がした。

何かがぶつかるような音。


「事情は知らねェが、なんか面白ェ

事になってんなァ」


「混ぜてくれるとオジサン喜んじまうだがなァ」


「げ!お前昨日の・・・」


「おう、ドレッドっつったかィ?お前さんの

姉に忘れもん届けてこいってコキ使われちまったィ」


赤い着物の人が袋を渡すとドレッドは

泣きそうな顔で胸を撫でおろしていた。


姉が無事でよかったと、そう呟いてた。


「来いよ青いの!!破砕旋風ドレッドの

実力みせてやるよ!!」


袋から取り出した結晶を武器に挿入すると

ドレッドは今度は強気に笑っていた。

人物?紹介


セレナーデ


魔族のハーピーという種族。

個体ごとに異なるい色の体毛をしており人間の腕に当たる部分が

翼の役割も兼ねている。セレナーデは若葉のような美しい黄緑色をしている。


魔族はほぼ属性を2つ持っており同種でも属性が異なる。

セレナーデは風と水。


魔力の属性間に有利不利はほぼないが(火が水の魔力に弱いとかがない)

燃費や威力などには差がある。風が最弱でその次が氷、水と続く。

セレナーデが酷い仕打ちを受けるのは風、水との3弱属性だから

目をつけられ憂さ晴らしの道具にされていた。

(飛行する魔族はほぼ全員最弱の風は入っている)


一度口にした液体を自在に生成する能力を持っている。

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