汚れた羽
うわわわあ!!!
テコ入れし始めたぞこの作者!
一話目を変えたぞこの作者!!!
どうせ無駄だぞクソ作者!!
耳障りな甲高い歌声が私を浅い眠りから
意識を無理やり引き上げる。
白んだ空を見つめてまた朝が
来てしまったと頭を垂れる。
瑞々しい草木を揺らしたそよ風が
無責任に私の頬を撫でて吹き抜けていく。
「寒い・・・」
身体が震える。体温を調整する魔力さえ
枯渇し始めているようだ。
視界に自分の黒ずんだ緑の翼が映る
本来の色合いではなくなってしまった。
目を背けたくなるような倦怠感と飢えと渇き。
それらを紛らわすように私も震える体で歌を歌う
しかし憔悴した体で出せる声は
美しいものではなく、聞くに堪えない醜い歌だった。
いや、歌どころか声でさえなかったかもしれない。
汚い雑音だ。
早くあの子の無事と自分の最後の日が
来るのを願い、無理やり意識を
眠りに突き落とそうと目を閉じた。
しかし合唱が止み羽音達がこちらにやって来る。
一番最初に私の前に降り立ったのは
深紅の羽毛と頭髪のデュオール、次に青のトゥリオ。
最後に紫のソロウが降り立つ。
3匹が地べたに座り込んでいる私を見下しながら
ケタケタ嗤っている。
「あらあら、また痩せたんじゃないかしら
セレナーデ?」
深紅のデュオールが嬉しそうに問う。
私に答える気がない私を見て青のトゥリオが
その辺の草を引っこ抜き土の付いた根っこで
私の顏を叩いた。
「アハハハ!ごめーん!口に入っちゃったぁ!?
嫌なら嫌っていってねー!!」
私の声が枯れ切っているの知らないはずがない。
わざとなのだ。いっそのこと殺してくれればいいのに。
顔についた土を払い、口の中に入った土を吐き出す。
すべてが吐き出せるはずもなくジャリジャリとした
不快感がいつまでも口の中に残る。
「アンタが悪いんだよ?分かってるのかい」
紫のソロウが私のアゴを持ち上げて顔を覗き込んで
来きたから睨みつけてやった。
「・・・フン、まあいいさ。
ちょっと面白い話があるんだ
アンタが大好きな人間のことだよ」
ソロウが私のアゴから手を離すとべったりとした
嫌悪感を覚える笑顔で楽しそうに話した。
人間を獲物として見る彼女達だ。
ロクな事ではないのは確かだ。
「これ以上・・・コリに・・・
酷いことしないで」
「ちょっとしたゲームさ、トゥリオ!!」
ソロウが青のトゥリオに呼びかけると
「はーい」と返事をして幼い子供を引っ張って来た。
「セレナーデ、あんたが懇願するからコイツを
今まで飼ってたけどねぇ、飽きちまったんだよ」
「最近鉱山って場所を噂で聞いたの!
そこには人間が沢山いるですってぇ~!」
トゥリオがケタケタ笑っているその後ろで
少女は真っ直ぐな青い瞳で
セレナーデを見つめている。
「やめ・・・て、お願い・・・」
「あぁ辞めるさ、お前がそのガキを殺せたらね」
「!・・・・出来ま「構いませんわ
殺しなさいセレナーデ」
「いやだ・・・!できない・・・!!」
「散る命の数を考えなさい、セレナーデ
一つで済むのならそちらの方がいいに
決まっていますわ」
コリがしゃがみ込んで耳元で囁く。
「最後にあたなのような方に守って貰って
光栄でしたわ・・・ありがとう」
「・・こんなのって・・・ないよ・・・
なんでこんなに優しい貴方が・・・」
コリが無言で首を振る。
「優しいのは貴方ですのよ」
セレナーデの体をそっと抱きしめる。
薄汚れて硬くなってしまった羽毛をめいっぱい
両手で閉じ込めた。
「コリ・・・ごめんね、ごめんね・・・」
抱きしめてくれた小さい命をそっと抱き返す
すっかりバサバサになってしまった金髪を
そっと撫でる。
「さっさと殺りな!このグズ共が!!
5ぉ!!4!!3!!2!!・・・」
小さな手がセレナーデの手を握り自分の首に
添えさせる。
「大丈夫、恨みませんわ」
青い瞳はセレナーデのを見つめたまま
朗らかに笑って見せた。
でも手が震えている、怖くない筈がない。
「・・・・・っっ」
目を背けてひ弱なその手に力を入れる。
「ぁ・・・ぅく・・・・」
苦痛に歪む顏につい手が緩みそうになる度に
コリはセレナーデの手を押さえつけた。
そうして、段々とその力も弱々しくなり
やがて、動かなくなった。
コリから尿が垂れ流される。
「コリ・・・コリ・・・
ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
もう流せる涙さえ残っていない。
許されないことをした。
取り返しの付かない事をした。
「ギャハハハ!!死んで小便垂れ流してやがるよ
あのガキ!!こりゃ傑作だねぇハハハ!!!」
ソロウ達が腹を抱えて笑い転げる。
そしてひとしきり笑った後の言葉に
セレナーデは耳を疑った。
「じゃあお前ら鉱山に行くよ」
「アハハ!!人間狩り楽しみすぎ~!!」
「まって・・・約束が・・・!!」
立とうとしたセレナーデが僅かな自重を
支えられずに地面に倒れた。
「バカねぇ、5秒以内に殺せなかったじゃない」
意識が遠のく、じゃあなんの為にコリは
自分の命を懸けたというの?
「ふざ・・・
私の言葉を待たないでデュオールが私の
髪を引っ張り悔しがる私の顏を嬉しそうに眺めた。
「生意気な口聞く前に地面の掃除でもしてなよ!!」
コリの尿の上に顔面を叩きつけられて
足蹴にされ尿と土が混ざった泥を擦り付けられた。
口惜しさと苦痛の中ソロウの号令と沢山の
羽ばたく音が聞こえて、私の意識はそこで途絶えた。
セレナーデ・・・不幸属性の子じゃないよ!!