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 『兆し』


[前回のあらすじ]

 魔女キキに捕らえられた四匹の猫達は、檻から脱出するために作戦を実行。見事に作戦を進め、没収された武器を取り返すべく保管庫へと来る。だが、そんな彼らに危険が訪れる事に——。




 無事に魔導書を取り戻し、低身長の少女へと姿を変えて大事そうに抱えるハナ。だが、その本は彼女の体の大きさには合わない程であった。


「それにしても、大きな本だよね。いったいどんな事が書かれているの?」

「やっぱ気になるですの? それは——」


 彼女が説明を始めようとしたその瞬間、爆発音が彼女の言葉を遮る。ナギ達の背後に現れる影。しかし、グッドタイミングと言わんばかりにハナはその影に手を向け、もう片方の手で開けた本を持って言った。


「[睡眠(スリープ)]」


 その直後、影は魔法にかけられたようにして眠りについた。それを見たソウは目を輝かせた。


「さあ、みんなを助けに行くですの!」



 保管庫を出て先程の分岐点を直進。付いてきていた石壁だったが、突然として壁は遠ざかり、広めの空間へと出る。するとそこには、牢屋の中に閉じ込められた猫達の姿があった。


「貴様らはそこで大人しくしているんだな!」


 見張りらしき人物が牢屋に閉じ込められた幼い猫達に向かって言う。だがその人物は突如聞こえてきた走る音に辺りを見渡す。だが気付いた時には横腹に激痛が走り、数メートル程地面を引きずって気絶した。


「ったく、うるさいっての」


 両手をパンパンと払う、人物を蹴り飛ばしたであろうソウ。彼の行動にシンは呆れた様子を見せた。


「お、お兄さん…助けに来てくれたの?」

「ああ! この賢者の俺が来たからには、もう安全だからな!」


 彼の励ましの声に希望を持つ子猫達。だが、その希望は一瞬にして潰される。自分達を救ってくれるはずの英雄が——倒れたのだから。


「おにい…さん…?」

「ソウ⁉︎ どうしたのソウ!」


 突如倒れたソウに駆け寄ろうとするナギであったが、それはシンによって止められる。何故止められたのか、通してくれと目で伝えるナギ。その理由は直ぐにわかった。


「ほんっとうにムカつかせる子猫ちゃんね! いいかしらお前たち! 私から逃げようとしたら、ただじゃおかないわよ!」


 ソウの片足を持ち、見せしめのようにして思い知らせるキキ。捕らえられた民達は絶望に押しつぶされそうになっていた。しかし、ある少年の言葉に皆は驚く。


「はんッ…いったいどっちがムカつかせてるか…お前は本当にわかってるのかッ!」

「あいだ⁉︎」


 気絶していたはずのソウが体を思いっきり振って、キキに頭突きを喰らわせる。彼女は思わずソウを掴んでいた手を離し、ソウは自由の身となる。

 彼は一度仲間達の方へと戻り、キキを見上げた。


「今ここで仕留めてやるッ! 悪い魔女め!」

「待ってください。貴方も分かっているはずです。我々賢者は五人揃ってこそ真の力を発揮出来る。だから僕たちは彼女に一度負けました。例えたった一人いなくとも、彼女に勝つ事は出来ない」

「じゃあどうするんだよ! みんなを見捨てて逃げるのか⁉︎」


 言葉が詰まってしまうシン。だがその時、一人の…否、一匹の猫が叫んだ。


「我々の事なら気にするな、賢者達よ! 我々は必ずお主達が助けてくれると信じておる! だから…どうかミユを連れて帰って来てくれ!」

「国王…分かりました。ハナ、頼む!」


 国王の言葉に渋々納得し、ハナに脱出の命令を飛ばすソウ。それを聞いて、キキは焦りを見せて彼らに飛び込む。


「おのれ! 逃がさんぞ子猫達!」

「もう遅いですの! [転移(トランス)]!」


 その言葉の直後、四匹の姿は消える。一方のキキは地面に激突。ぶつけた顔面を抑えつつ、部下達に命令を飛ばした。


「転移先は恐らく人間界! 今すぐ追いなさい!」



 ◇   ◇   ◇    ◇   ◇   ◇



「んー! おいし〜!」

「で…なんで京佳はまだいるの?」


 夕食であるコロッケを口に含み、幸せそうにする京佳。そんな彼女がいる事に疑問を抱き質問をする実連。そんな彼女に対して京佳は口に物を無くしてから、彼女の問いに答えた。


「それはもちろん、ここで泊まるためよ」

「なるほどね…って、どうして急に⁉︎」

「友達を助けるためでしょうが。何かあった時、近くにいたら何とかなると思ってね。あ、家庭の事情なら心配いらないよ。お母さんに聞いてみたら、実連が迷惑じゃないなら構わないって言ってたから〜」

「ま、まあ一人でいるよりかは寂しくないけど…急に賑やかになっちゃったな〜」


 そんな困っているのか困っていないのか分からない感情を見せる実連。そんな彼女の頰に、肉球が当たる。


「あ、ミユ。どうしたの?」

「感想を聞こうと思ってな…じゃなくて、感想を書こうと思ったの!」

「無理しなくてもいいよ」


 猫の姿から人の姿となり、自身の口調を変えてみようと練習しているミユ。そんなやりにくそうな彼女に、負い目を感じた実連は彼女に無理しないように言うものの、彼女は気にする事なく練習していた。


「これから他の人達とも話す機会があるかもしれないからな…じゃなくて、あるかもしれないからね!」

「なーんかやりにくいわね…」


 京佳の感想に苦笑する実連。気付けばミユは彼女の腕の中にはおらず、いつのまにか抜け出したミユは一つの袋の方へと近付く。そして彼女は、一つの三角形の物を歯で噛んで引っ張った。


「あ、それって昨日買ったおにぎり——って、忘れてた! 賞味期限切れるところだった!」


 実連は慌ててそのおにぎりを取り出す。"昆布"と書かれたおにぎりの表紙。彼女はそれを食べてしまう事にした。



「ふう…食べた食べた。それにしてもミユ、どうやって自分の国に帰るの?」

「それは至って簡単。私の転移魔法で何とかなる。だけど、特定の位置に転移する際には大量の魔力がいる。今は実連に貰って回復してはいるけれど、まだ足りない」

「じゃあ私とも契約出来ないの?」

「契約出来るのは一人だけ。だからまだ回復を待たなければならない」


 今は特に出来ることがないのかと、ガッカリする二人。何かないかと悩むものの、考えは出てきやしない。そんな二人を見て、ミユは両手を叩いて言った。


「そう悩む必要は無いよ。今は休むだけ。さて、お風呂入って寝よ〜!」


 彼女はそう言って風呂場へと直行していった。


「というわけだけど…どうする?」


 彼女が行くのを見送った後、ポツリと呟く京佳。問われた実連も明確な答えは出なかった。だから、言った。


「今は備えよう。だから私もお風呂行くぞ〜!」




色々あって脱出した賢者達。逃げた先は人間界。ミユと無事合流できるのでしょうか。


※次回の更新は9/1です。

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