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 『隠して誤魔化してバレて』


[前回のあらすじ]

 いつまで経っても来ない京佳を捜しに家を飛び出した実連。しかし、彼女は異変に巻き込まれてしまう。だが、何とそこには巻き込まれて捕らえられた京佳がいた。彼女を救うべくミユと協力。なんやかんやで目を覚ました京佳をつれて、帰宅する事に!




 実連の住むアパートに帰宅した実連一行。彼女の部屋へと戻り、早速机を囲んでの話し合い。京佳の険悪な表情に気まずくなる実連を他所に、ミユは冷たいお茶を運んできた。


「ほれ、これでも飲むのじゃ」

「あ、どうも」

「私の家なんだけどな〜」


 ミユに貰ったお茶を一気に飲み干す京佳。お酒を飲んでるのと大して変わらないその飲みっぷりは、実連を圧倒させた。


「ぷは〜っ! やっぱり夏には冷たい飲み物よね〜! ありがとね!」

「気にしないで。それより、何から話そうか…」


 いつもの調子を取り戻した京佳に、何とか安心する事が出来た実連は二人の顔を見比べながら問う。ミユは考えていたはモノの、敢えてそれを述べずに京佳の方を見る。


「それじゃあ、まずは私が何であんな所にいたのか教えてよ。どうやら二人が私を助けてくれたみたいだけど」

「ふむ、そうじゃな。取り敢えず、まずは自己紹介から——」


 だが、実連が自己紹介を始めようとしたミユの腕を引っ張って台所へと連れて行く。京佳は突然の不可解な彼女の行動に、つい声を荒げて彼女の名を呼ぶ。


「ちょっと、実連?」

「ま、待ってて! すぐ終わるから!」


 冷汗を流しながらも必死に京佳を説得する実連。やっと落ち着きミユの方を見ると、腕を組みながらさぞ不機嫌そうに彼女をジト目で見ていた。


「なんじゃ。用があるならさっさとせい」

「ごめんごめん。いったいどんな説明をするのかなって、聞いておきたくて」

「どうしてじゃ。だったら、お主が代わりにあの娘に話すか?」

「いやいや! ここはミユに任せるけど…呉々も、貴方の国の話とか、自分が猫だとかの説明はしないでよね」


 耳にそっと言う実連。彼女は親しい友人を面倒毎に巻き込みたくない、そして危険が及んでしまった為に、これ以上関わらせるのは良くないと判断した上での願いである。

 そんな彼女の言葉を、ミユは優しい表情で、そして彼女の頭を撫でながら言う。


「心配するでない。お主の大切な友人じゃ。儂がちゃーんと説明してやる。だから静かに聞いてるんじゃ」


 彼女の言葉に大きく頷くミユ。一安心した彼女は、京佳の元へと戻って行くミユの背中を見送る。そしてミユはダンボールの上に乗って咳払いをして話し始める。


「ごほん…えー、自己紹介からじゃったな。儂の名は——」

「ストーップ、ストーップ!」

「もう、どうしたの実連?」


 又もや割り込んでミユの言葉を止める実連。そんな彼女に疑問と不満を抱く京佳。愛想笑いをしながら台所の方へ再び姿を消す。


「今度はなんじゃ。失礼じゃぞ」

「ごめん! その、ミユは少女なんだからさ、わしって言うのを変えて欲しいなーって…」

「はぁ…呆れた。まあじゃが、それもそうじゃ。私にでもしておこう。どうせなら、言葉遣いも変えておこうか?」

「うん、お願い!」


 これで一安心。もう注意する事は無い。すっかり安心しきった実連は、京佳のいるリビングへとミユの後を追うようにしてついて行く。実連は地べたに座り込み、ミユは再びダンボールの上に立つ。そして二度目の咳払い。京佳は正座をしながら聞いた。


「えーっと、私の名前は黒猫のミユです!」

「黒猫の…ミユ…?」

「あー! そ、その、この子は黒猫が大好きで、自分も可愛い黒猫になりたいからで…だ、だからあだ名って感じ! うんうん!」


 そんな意味不明な説明に益々怪しむ京佳。彼女は実連に詰め寄り、遂には逃げられなくなる。そんな彼女の様子に、ミユは呆れていた。そして仕方なく、本当の事を言うのであった。



「ふーん。それで、この子の正体は猫であり、また魔法も使えると」

「はい…」


 実連が必死に隠そうとしていた事に対して怒っているのか、少々強張った声で説明を整理する京佳。そんな険悪な彼女らを他所に、ミユは猫の姿で呑気にゴロゴロしている。


「なるほどね〜。でも、なんで隠そうとしたの? 私は別に怒ったりしないのに」

「そ、その〜……京佳を巻き込みたくないなって、思って…」


 実連の答えに対して二度程頷いて、横になっていた猫のミユを抱き上げる。そして、おでこを合わせて小さな声で言う。


「ありがとう、私を助けてくれて。事情はどうあれ、貴方は私の命の恩人。感謝は、ちゃーんとするからね。もちろん、実連もだよ」


 そんな彼女の優しさに、思わず泣いてしまう実連。京佳が彼女をあやしていると、少女の姿に戻ったミユが両手を叩いて注目を集める。


「はいはい。仲良しなのは、いい事だ。それより、私からの願い事があるんだが、聞いてはくれないか?」


 彼女の改まった様子にお互いの顔を見合わせる二人。少しの疑問を抱きつつも、彼女の願いを聞く事にしたのであった。




おっちょこちょいなのか、悪戯好きなのか分からないミユ。それに振り回される実連ちゃん。彼女らは出会って間も無いのに、仲が良い。

また、気が効き、更に優しい京佳さん。やはり実連ちゃんを支えるのには良い友達である。

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