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 『黒猫少女は居候することにしたそうです』


[前回のあらすじ]

 明らかにおかしい出来事に巻き込まれた実連は、雨の中ダンボールに入った黒猫を発見する。それを家に持ち帰ったわけだが、その黒猫の正体はカラオケ店で出会った少女であった。




「儂の名は黒猫のミユ。先程も見てもらった通り、魔力を使って人の姿になる事が出来る。とは言っても、耳と尻尾は付いたままだが」


 自分の名をミユと名乗る黒猫の少女。起きたばかりで寝ぼけている実連は、彼女の話を時々欠伸をしながら聞いている。そんな彼女を横目で見ながら、ミユは淡々と説明を続ける。


「それで、気付いてはいるだろうけど、儂はこの世界の者じゃない。何故こっちに来たのかだが、儂達の世界は悪者達に襲われ、遂には乗っ取られれてしまい、仲間の殆どは捕らえられてしまった。そして儂は危機一髪逃れる事が出来た」


 彼女は悔しそうに拳を握り、涙を浮かべる。すると温かい手が彼女を優しく抱きしめる。


「大丈夫だよ、私がついてる。何が出来るか分からないけど、貴方の手助けをしたい。だから、もう泣かないで」

「実連…」


 実連の優しさに、思わず大泣きしてしまうミユ。暫く彼女は優しく抱きしめられながら泣き続けた。


 存分に泣いたミユは実連の腕の中から離れ、再びダンボールの上へと飛び乗り、一息吐く。その様子に微笑した実連は、感じた疑問を彼女へと問いた。


「それで、私に何か出来る事あるかな? なんでも言ってよ!」

「ほほう。なんでも、と言ったな? 後悔するでないぞ、小娘」


 先程までの様子とは一転したミユは、怪しい喋り方をする。そして実連へと近付き、彼女の手を取る。


「お主に出来る事は、儂と"契約"を結ぶことじゃ」

「契約?」

「そうじゃ。儂の魔力は自動回復するんじゃが、どうもこの世界の"マナ"は私の世界より微量。そこで、生命体と契約を交わし、儂に魔力を供給してもらうってわけじゃ」


 えっへんと腰に手を当てるミユであったが、実連は彼女が何を言っているのか理解出来なかったが、取り敢えず何か凄い事に違いないと思った。


「それじゃあ、始めるぞ」


 ミユはそう言って実連の手を取り、何かを念じ始める。ワクワクしながらその様子を見ていた実連であったが、特に何も起こる事なく契約の儀式は終わる。


「え? 終わり?」

「ああ。これで契約成立だ。実に気分が良い。感謝するぞ、実連」


 彼女が喜んでくれるならそれで良いと実連は思いつつ、彼女は問う。


「ねえ、貴方は魔法使いなの?」

「如何にも。これでも一級レベルの魔法使いじゃぞ? 嘗めてもらっちゃ困る」


 あははと笑う実連であったが、大事なことを思い出し口を開けたまま固まってしまう。どうしたのかとミユは問う。


「ここのアパート、ペット禁止なんだよね…」

「ペット禁止?」

「犬とか猫とかは飼えないんだよ…」

「それなら心配ない。儂は人に姿を変えられる。だからこの家に住まわさせてくれ。家事なら手伝う。見たところ、一人暮らしのようじゃしな」


 ミユの心強い言葉に目を輝かせる実連。しかし、彼女はある心配をする。


「でも、大丈夫なの? 人の姿になるには魔力を使うんでしょ?」

「心配ない。現に契約を結べたし、お主が留守にしている間は猫の姿で外をうろついていればよかろう」

「あ、その事だけど…私明日から夏休みなんだ。だから、だいたいは家にいるよ」

「おお、そうなのか。なら安心じゃな。安心したら、お腹が空いた。どれ、料理をひと振るいするとしようか」


 どこからか取り出したエプロンをパーカーの上から付け、台所へと向かうミユ。しかし、実連は何を思ったのか焦って彼女を追いかける。


「ストーップ! 料理を出してくれるのは嬉しいんだけど、貴方の背の高さだと、届かないと思うよ?」


 言われてみればそうである。実連約百六十センチに対して、ミユはその半分の約八十センチ程の背の高さである。台所の高さは実連の腰程度の高さ。頑張ったとしても、ミユには届きそうにない。


「ぬう、仕方あるまい。儂がレシピを教えるから、その通りにしてもらってもいいかのう?」

「いいよ! でも、上手く出来るかな? 私料理だけは下手くそで…」

「なーに、心配する事はない。魔法も一緒にかけるから、気にしなくてもいい」


 ミユは又もや胸を張って言う。その言葉に実連は安心させられ、自分のエプロンを身につけて台所へと行き、ミユの指導のもと料理を始めた。



「できたー!」


 威勢の良い声と共に腕を上げる実連。しかし、ミユは彼女の料理を見て顰めっ面をしていた。


「お主…いったいどうやったらそんな料理が出来るというのじゃ?」

「えー? 教えてもらった通りにやっただけなんだけどな〜。あ…やっぱり私には料理向いてないのか…」


 ネガティブな発言をして部屋の隅っこに縮こまってしまう実連。その様子を見たミユは呆れて溜息を吐き、片手を天井へと向ける。すると彼女の手の中に一つの杖が現れ、その先端を実連の作った料理へと向ける。


「彼女の努力を無駄にはさせない」


 その料理が光に包まれたかと思うと、光が止んで如何にも美味しそうな料理が姿を現す。その料理の匂いを嗅いだ実連は、飛びつくようにして台所へと戻ってくる。


「ななな、何をしたの⁉︎」

「言ってたじゃろ? 魔法じゃよ。と言っても、作ったのはお主自身。せっかく頑張って作ったんじゃ。美味しくいただこう」


 そんなミユの気遣いと優しさに彼女に飛びつこうとした実連であったが、ヒョイっと交わされ地面へと倒れる。


 そんなこんなで、女子高生と猫耳少女の共同生活が始まった。




閲覧ありがとうございます。狼天狗でございます。

主人公の実連ちゃんは、思いやりのある子ですがどこか抜けたところがある、そんな子です。

一方のミユは、そんな彼女の保護者的な存在。彼女には親はいますが、一人暮らしで面倒を見る人がいない。そんな中で、ミユは保護者のような存在となるのではないでしょうか。

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