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 『女子高生と黒猫少女』 前編

初めましての方は初めまして、それ以外の方は御機嫌よう、作者こと狼天狗[ろうてんぐ]です。

本日から毎週日曜日にこちらの作品を更新していきたいと思います。私の猫好き度やらギャグセンスやら戦闘やらなんやらの要素が詰められた、そんな作品となっています。

そんなに深い話にしようとは考えていませんので、気楽に閲覧していただければありがたい限りです。


長くなりました…それでは、どうぞ。




「ぬう…これは困ったな」


 そこは、現代世界では無い何処か(・・・)。変わった耳を持ったボロボロの少女が、ある二人組の男に追いやられていた。


「へへっ、全く。よくも俺達を嘗めてくれたもんだぜ。子猫ちゃん如きが、ちょこまかちょこまかと鬱陶しい。おい、お前。早くコイツを捕まえろ」


 二人組のうちの一人の男が少女を侮辱しながら、もう一人の男へと呼びかける。しかし、もう一人の男は拒否する様な言い草で話し始める。


「ええ? こんな幼い少女を取っ捕まえるんですか? 兄貴も悪趣味ですね〜」

「いやいや、これは俺の趣味なんかじゃなくて上からの命令だ! コイツを捕まえた報酬はデカイぞ。だから絶対に逃すなよ。コイツは魔力を使い切ってる筈だ。だから逃げられはしない。だが、万が一のことがある。取り敢えず、早くコイツを——」


 男が少女の方に向き直したが、彼女の姿は無い。必死に辺りを見渡す男であったが、やはり彼女の姿は何処にも無かった。男は怒って怒鳴りつける。


「おい! お前がモタモタしている所為で逃がしちまったじゃねぇか!」

「きっと僅かな魔力を振り絞ったんですね〜。と言うか、これ僕の所為なんですか? 兄貴が長々と話すからだと思うんですけど、どうです?」


 男はぐうの声も出せなかった。彼等はこの事を報告するべく、自分達のアジトへと足を急がせた。




 ◇   ◇   ◇    ◇   ◇   ◇




「——と言うわけで、明日からの夏季休業を計画的に過ごすように。呉々も、健康状態や事故に気をつけて」


 とある高等学校の教室にて。一人の教師が教室の生徒達に演説を終え、一方で生徒達の夏休みが始まろうとしていた。

 生徒達は友人の所へ喋りに行ったり、帰宅したりと、各々放課後の時間を過ごしていた。

 そんな空間でリュックを背負ったひとりの女子が、椅子に座って帰宅の準備をする女子へと声をかける。


「みれーん! この後カラオケ行かない?」


 みれん(・・・)という名前を呼ばれた彼女の名は香山かやま 実連みれん。そして名前を呼んだ彼女の名は尾竹おたけ 京佳きょうか、実連の友人であり、二人ともこの学校の一年生である。

 そんな実連は友人へと視線を向け、間の抜けた返事をする。


「ん、いいよー。お昼はどうする?」

「向こうで食べようよ。私の奢りでいいからさ〜」


 コクリと頷いた彼女を無理矢理引っ張り出す京佳。引っ張る手を離された実連はフラフラと廊下を歩いたが、数歩進むと普通に歩き始めた。そんな彼女を京佳は追いかけた。



 カラオケ店へと向かう途中にて。他愛も無い話をして笑い合う二人。そんな時、ふと実連の瞳に反対側の歩道の裏道へと入っていく怪しげな二人の人物の影が映る。足を止めてそちらの様子に意識がいってしまっていたが、京佳の呼びかけによってハッとして目的地へと再び足を動かした。



 カラオケ店に着いた彼女達は、ドリンクバーで実連はオレンジジュースを、京佳はメロンソーダを紙コップに注いで自分達の部屋へと行く。その途中で、変わった姿をした少女が隣を通り過ぎて行き、実連は意識をそちらに取られていたが、京佳の呼びかけにまたもやハッとさせられた。

 部屋に着くなり自分達の荷物を椅子へと置いて、一息吐きながら深々と腰をかける。京佳は大胆に座りながら、先程注いだ飲み物を口に運ぶ。一方の実連はカラオケ店に来たからには歌うという事で、マイクなどの機械の準備をしていた。


「ねぇ、実連」


 準備中の彼女に声をかける京佳。その作業をふと止めて視線をそちらに向ける実連。


「さっきボーッとしてたみたいだけど、何かあった? 悩みでもあるなら聞くよ? もしかして、恋の悩みとか?」


 心配そうにする感情から、冗談交じりに揶揄う感情へと移る京佳。その問いに実連は否定するように笑いながら手を横に振る。一度中断した残りの作業を再開し、マイクを二つ持って京佳の隣へと座る。そして彼女自身も気になった事を問う。


「えっとね、実はね——」


 彼女が話そうとしたその時、部屋の外から大きな爆発音が響き渡る。何事かと思った彼女達は慌てて外に飛び出す。そして彼女達は半壊した建物を目の当たりにする。


「ウソ、なにこれ⁉︎」


 驚いて口元を抑える京佳。しかし一方で、実連は何を思ったのかその場を離れてしまう。


「ちょっと、実連⁉︎」


 彼女の呼ぶ声に反応する事なく、実連は煙の中へと姿を消した。



 ——私の考えが正しければ…


 彼女、実連は煙の中を駆け抜けながら脳内で考え事をする。カラオケ店へと向かう途中の怪しい二つの影。そしてこの店内ですれ違った少女。この人物達の関係性は…


「なんだろ?」

「敵じゃよ、お嬢さん」


 煙の中から脱出した彼女は、先程すれ違った少女と再開する。突然声をかけられた彼女は驚いて尻餅をつく。少女は興味深そうに彼女の顔を覗き込み、全身をジロジロと見る。


「ふむ、面白い」


 少女が一言呟いてから手を翳そうとすると、煙があった方とは反対の方から大きな音がする。少女は翳そうとした手を離して横に腕を伸ばす。そしてその手の中には、先端が渦を巻くようにして伸びる杖が現れた。


「えっ、なになに?」


 突然起こった出来事に理解が追い付かない彼女であったが、その思考は先程大きな音を出したであろう者によって止められる。彼女は目の前に現れた巨大な機械のような物を見て叫んだ。


「なんじゃこりゃぁぁぁあ!」


 彼女のリアクションは相当なもの。しかし、少女は気にも留めないで機械の方へと杖を向ける。そして少女の足元に奇妙な円形状の魔法陣のようなものが現れたかと思うと、何やら詠唱を始める。


「全てを焼き尽くせ、[火炎玉(ファイアボール)]」


 半径約二メートル程の炎の球体を出現させて、機械の方へと勢いよく放つ。しかし、それはどうやら耐熱のようで、全くの無傷であった。


「これならどうじゃ、[電磁波(サンダースパーク)]」


 再び詠唱と共に魔法陣が現れたかと思うと、少女は杖の先端から電撃を放っていた。金属は電気をよく通す導体である。その所為で、電撃は機械の全身へと伝わり機能を完全に停止させた。

 口をポカンと開けたまま様子を見ていた実連は、ハッとして我に帰る。彼女は慌てて少女を探すと、そこには疲れ果てた様子で座り込む少女の姿があった。


「ね、ねぇ。今のはいったい何だったの? 変な事が起こりすぎて理解が追い付かないんだけど…」


 彼女の慌てる様子を見つめる少女。しかし、彼女は表情は愚か、言葉を発する事なくその場を去ってしまった。


「あ、ちょっと——」

「みれーん! 無事ー⁉︎」


 彼女の台詞を遮るようにして京佳が叫びながら走ってくる。つい目の前のことだけに意識がいってしまっていた実連は、京佳と一緒にカラオケ店へと来ていた事を思い出す。


「う、うん。無事だけど…」

「大きな音がしたからビックリしたよ。でも怪我は無さそうで安心した〜。それより、早くここから離れるよ」


 彼女は持っていた荷物のうち、自分のではないスクールバッグを実連へと差し出す。


「え? どうして…」

「こんな大きな出来事があったんだから、警察とかマスコミが煩いに決まってる。そんな面倒毎に関わるのはゴメンだから、さっさと行くよ」


 少し不機嫌そうな京佳に対して、実連は小さく頷いてから、出入口でもなんでもない先程の怪奇によって空いた外に繋がる道の方へと歩く京佳の後を追った。


 ——いったいなんだったんだろう?


 そんな素朴な疑問を抱く彼女であったが、面倒事はこれだけでは終わらなかった。




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