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第一話 アイツらを懲らしめて!

「お嬢さん、えれえ別嬪(べっぴん)さんじゃねえか。俺らと遊ばねえか? いい思いさせてやるぜ」


 ヘラヘラと笑いながら近づいてきたのは、破落戸(ごろつき)のチョウキチとその一味である。彼ら三人は城下でも鼻つまみ者だったが、なまじ腕っぷしが強かっただけに、少々の悪事を働いても皆見て見ぬ振りをしていた。


 そんな彼らの目の前を、誰もが振り返るほどの美少女が通ったのである。当然、見過ごしてもらえるはずがないだろう。無論、美少女というのはこちらの世界基準である。


「先を急ぎますので」


 言ったのは美少女の方ではなく、少し年上の連れの女だった。彼女も少女ほどではないが、かなりの美人である。ただ、二人は全く似ていないので、血のつながりのある姉妹ではないだろう。


「そんな、つれねえこと言いっこなしにしようや」


 しつこく(まと)わり付いてくるチョウキチたちを無視して、二人は足を速める。


「おいおい、無視するこたぁねえんじゃないかい?」

「先を急ぎますと申しました」

「じゃ俺たちが道案内するってのはどうだい?」

「結構です」

「待てって言ってんだよ!」


 これまでのふざけた口調から、チョウキチの声がガラッと変わる。それとともに彼は少女の手首を掴んだ。


「痛い! 放しなさい!」

「無礼者!」


 女は懐から懐剣(かいけん)を出し、反射的にチョウキチの連れも脇差しを抜く。


「おおっと、そこまでにしてもらおうか」


 チョウキチは少女の手首を後ろに捻り上げ、いつの間にか脇差しを抜いて彼女のか細い首元に突きつけていた。


「大人しく付いてきな。さもねえとこの可愛いお嬢さんの笑った顔は二度と見られなくなるぜ」

「くっ……!」

「その手の物騒なモンは捨ててもらおうか」

「ショウコ! 何をしているのです! 早くこの無礼者たちを殺してしまいなさい!」


 だが、その強い言葉とは裏腹に少女の顔は青ざめ、体はガタガタと震えていた。


「モモカ様……」

「へえ、アンタはショウコさんで、こっちのお嬢さんはモモカさんてんだ」

「か、軽々しくモモカ様の名を口にしないで下さい!」

「なんだぁ? さっきから無礼者とか変なこと言ってるけど、貴族か何かか? それにしちゃ刀は持ってねえみてえだが」

「モモカ様のご身分を聞けば震え上がりますよ!」

「へえ、面白そうだ。ぜひ聞かせてもらいたいねえ」

「モモカ様は、モモカ様はシ……」

「おい、そこで何してやがる!」


 その時、二十(けん)ほど先から男の声がした。男は三人、こちらに駆け寄ってくるのが見える。二十間とは約四十メートル弱だ。


「まずい、キュウゾウだ! ズラかれ!」


 チョウキチは焦ったように少女を放し、男たちと共に大慌てで逃げていった。


「チッ! ありゃチョウキチの奴だな」

「親分、どうしますか?」

「後でふん捕まえりゃいい。それよりお嬢さんたち、怪我はないかい?」

「え、ええ、危ないところでしたが……」

「ショウコぉ……!」


 危機が去ったと知ると、少女はショウコと呼ばれた女性に抱きついて泣き出してしまった。


「モモカ様、もう心配はいらないようですよ」

「お姉様に言いつけて、アイツらを懲らしめて!」

「怖い思いをさせられたんだな。だが安心しな。きっと俺が奴らを取っ捕まえてやるからよ」

「誰?」

「おっと、こいつはいけねえ。俺は目明(めあ)かしのキュウゾウってモンで、コイツらは子分たちだ」


 そこでキュウゾウは少女を見て唖然とした。自分の彼女であるアマノ・カスミはびっくりするほどの美人だが、目の前の少女の可憐さは次元が違うと言ってもいいほどだ。それがこんな人通りの少ない道を歩いていたら、破落戸たちが放っておくはずはないだろう。


「目明かしの親分さんでしたか。私はユキガヤ・ショウコ、こちらはオガ……モモカ様です」

「そうかい。それでどこへ行きなさるんだい? こんなことの後だ。よかったら送ってってやるぜ」

「そうですか。それでは私たちを王城へ案内して頂けますか?」

「王城……お城へかい?」

「はい」

「そりゃ構わねえが、お城に誰か知り合いでもいるのかい?」

「ええ、まあ……」


 何だか歯切れが悪いな。そんなことを思いながらも、王城に行く理由が出来たのは彼にとって喜ばしいことだった。うまくすればカスミに会えるかも知れないからだ。それに一度乗りかかった舟でもある。


「よし、付いてきな」

「はい」


 こうしてキュウゾウは、二人の女性を連れて王城へ向かうのだった。

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