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作者の想像世界

ハピバミ

作者: パーミテンション

 今日は彼女の誕生日だ。一週間ほど前から準備しよう準備しようと思っていたが、ついにこの日まで延びてしまった。

 いや、彼女の好みがわからないのだ。


 たとえば食べ物。


 これに関しては上げられない。彼女は高校の修学旅行で海外に行ったわけだが、そのときのおみやげを食べずに結局捨ててしまったという話を聞いた。ありえない。


 それから、親戚に農家がいるのだけれど、おすそわけの果物が送られてくる。大量に。そして毎日それを消化する。それはいい。しかし挙げ句の果てには、飽きたなんて言い出すのだ。

 貧乏人の自分に対して言ういじめか何かだろうか。そんなことになるなら食べておけばよかった。


 それに、実家のおばあちゃんから大量のお菓子が送られてくるとかで消費に困っているとも言う。


 なんだかんだでおいしい物を食べているから、彼女の舌に合うような食べ物をあげられる自信がない。だから食べ物系列はなしだ。


 後は、衣服やアクセサリー。

 衣服から行こうか。


 これに関しても無理。

 昔、誕生日に父親から少し高い服をもらったわけだが、材質が嫌だとかで一度も着ないで、未だにクローゼットで番をしていると言っていた。それに自分自身、服は誰かに買ってもらうよりも、誰かと買いに行った方がいいと思っている。だから衣服はだめ。


 次。アクセサリー。

 これは知識がないのも問題だが、彼女が過去に言った言葉に問題がある。


『アクセサリーとか買っても流行がすぐ終わるから買うの戸惑うよね』


 そんな戸惑う物を与えてどうする。


 それに、流行なんて知らないし、彼女が好むようなアクセサリーを知らない。

 彼女に関して知らなさすぎる。これは大きな反省点ではあるが、つかみ所のない彼女にも問題があるのではないだろうか。


 まあ、今そんなことを言っても仕方がないので後で聞いておく。


 今問題なのは、彼女に何をプレゼントしたら喜ぶかということだ。

 毎年悩みながらも、結局ノートや定期入れといった日用品を上げていた。しかしそれも上げる物が年々減っていくという物だ。


 二年前に定期入れをプレゼントしたが、それを今年上げてもまだ一昨年のそれが余裕で使える。上げても困ってしまう。

 マンガでも上げようか。いや、そんな友達にあげるプレゼントというわけでもあるまいし。


 まだ高校生なら、金銭面的に納得のいくプレゼントかもしれないが、大学生になってバイトもして、家賃なりなんなりを毎月払っているからと言っても、高校生の時よりも余裕が出来ているのも確かだ。それなのにマンガというのはちょっとなあ。


 何かを手作りするにしても時間がない。家では彼女が待っている。


「お客様、何かお困りでしょうか」


 この店でプレゼントを買うわけでもないのに、ただ突っ立っていたら、ついに店員に声をかけられてしまった。


 まあ、ここは店員さんの知恵を借りよう。


「今日、彼女の誕生日なんですけど、何がいいかなって」


「彼女、ですか……?」


 おっとしまった。


「あ、いや、友達です」


 いきなりリア充発言されたらそりゃあ困るよな。


 ですよね、と店員は少々びっくりしていった。すみません。


「まあとりあえず、女性にあげるものです。何か流行りとかありますか」


 それでしたら、と店員さんは数品紹介してくれた。


 どれもぱっとしないというのが正直なところだったが、さすがに買って上げないとお店がかわいそうだと思い、朝起きたらのどが痛いと言っていたのを思い出し、加湿器を買うことにした。


 びしゃびしゃにぬらしたタオルを置いて夜を過ごしていたが、これで少しは女子力が増すだろう。やったね。


 青色の紙に包んでもらって、それにあうようなリボンもあしらってくれた。


 さて、これで誕生日プレゼントは買えた。


 ケーキはどうしようかと思ったが、一人で食べるケーキはむなしいと思ったのでやめておく。


 自宅であるアパートの一室に着き、鍵を開けて中に入り、電気をつける。


 一人暮らしを始めて二年。あと数ヶ月で三年目に突入するが、やはり一人というのは寂しいものだ。


 鏡の前に立ち、映った女性に、買ってきた物を差し出しながらこう言った。


「ハッピーバースデー・トゥーミー」


 ハピバミ。

読んでくれてありがとうございます。

感想等書いてくれたら泣いて喜びます。

他の作品も読んでくれたら嬉しい。


みんなでハピバミっていう単語流行らせようぜ。

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