3.異世界で初めての友達
あぁ…やることがなくなってしまった…。朝起きて、ご飯を食べ、本を読んで、ご飯を食べ、本を読んで、ご飯を食べ、本を読んで寝る。俺の生活サイクルがぁ…。
なんかありませんかねー。アザレアさんに聞きに行くか。
「しすたー。暇」
「おや、リョウ君ですか。図書室に引きこもるのはやめたのですか?」
「本よみおわった」
「なんとまぁ。あそこには出版されている絵本がほとんど揃っているのに、それを読み尽くしてしまうなんて。リョウ君は語学の才能があるのかもしれませんね。少し待っていてください」
そう言ってアザレアさんは歩いていってしまった。
俺に語学の才能?いや、ただ魔法付きの本で言語学のレベル上げて、絵本読み漁ってただけなんだけどな?
「リョウ君。あなたにこれをあげますので、文字を書く練習をしてみてください」
アザレアさんが持ってきたのは万年筆と思われるペンと、スケッチブックのように数枚の紙が綴じられているものだった。
「ありがと」
そう言って受け取った俺だが、たぶん書けるんだよなぁ。だってアルファベットだし。でも俺今6歳だし、普通に書けたらおかしいよな…。でも、小学一年生だよな、6歳って。下手でも書くことは出来たような…。下手に書くのって以外と難しいし、どうしようか。
「私に書いてみせてください。あれだけの本を読んでいたのですから、きっと文字も書けるでしょう」
アザレアさんは俺が文字を書けるのを確信してるみたいだな…。書きますか。
俺はペンを持ってアルファベット26文字を一枚の紙に書いた。下手にしようとせず、普通に書いた。
「まぁ。こんなに綺麗に書けるなんて。ペンを使うのは初めてでしょうに、さすがはリョウ君ですね」
あー。やっちまった感があるねこれ。まぁいっか。でも、文字の練習する必要ないし、このスケッチブックをどうしようか…。そしてまた暇だなぁ。
「しすたー。文字の練習はしなくていい。暇」
「リョウ君は他の子達と遊んだりはしないのですか?遊んでいるところを見かけたことがないのですが」
あー。アザレアさん。俺図書室に引きこもってたから友達がいないんすよ。てか、他の子と話したことすらないね。やばい、俺ぼっちじゃん。
「友達、いない」
「リョウ君は人見知りする性格なのですね。同い年の子と引き合わせてあげましょうか」
アザレアさんは俺の手を取って歩き出した。
俺このあと同い年の子と話すことになるんだよな。話せるかな。ずっと引きこもりしてたから話すのが下手になってる気がする。アザレアさん相手でも、始めのうちは片言でと思ってただけなのに、今では素でそうなってしまっている。心配だなぁ。
「シュウ君、カイ君、この子とお友達になってくれませんか?人見知りしちゃう子で…」
なんか俺かわいそうな子じゃんか。お友達になってあげてって。
シュウ君はなかなかにイケメンである。将来すごくモテそう。明るい茶髪で肌は白く、とても快活な雰囲気を漂わせている。
一方、カイ君は少し暗い雰囲気である。黒髪で肌は白いが、前髪が長くて目が隠れ気味になっている。
「おおー、なんかお前頭良さそうだな!俺はシュウ。シュウって呼び捨てで呼んでな!」
わーお。グイグイ来るね。今の俺だとちょっと苦手かも…。
「僕はカイ。よろしくね」
カイ君は言葉少なだけど、声が優しげな感じがして好感が持てる。あ、シュウ君が嫌いなわけじゃないよ!苦手なだけ。
「う、うん。よろしく」
「お前名前なんていうんだー?教えてくれないと名前で呼べないじゃんよ」
「えっと、リョウ」
「リョウな!わかった!リョウも一緒に遊ぼうぜ。これ2人でやってるとつまんねーからよ」
うわー。ほんとグイグイ来ますね。こりゃ慣れないとだな。