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「対物ライフルで撃っちゃったけど大丈夫だよね?」


そう言いながらその子はしゃがんで赤い綺麗な右目で俺の目を覗いてきた。

俺はこんなにかわいい見た目してるくせに怖いことを平気で言ってくる子が俺のまわりにいたっけ?と考えるので精一杯になっていた。そして、


「あー!まさかお前っ!」


「そう!私だよ!」


アキラには、この一言でひとつの結論にたどり着いた。


「新手のオレオレ詐欺だろ!俺は引っかからないからな!」


「いやいやいや、対物ライフル撃ってくるオレオレ詐欺なんてあるわけないじゃん!あったらそれ詐欺じゃなくて強盗だよ!怖いよ!ほら、私だよ!リョウだよ!リョウ!」


「はあ?」


アキラは、自称リョウをジロジロ見ると首をかしげた。ちょっと前までのリョウは服装しだいでは男子にも女子にも見える中性的な顔をしていた。しかし、今目の前にいる自称リョウは完全に女子だった。そんな中変わらない部分は左目をつぶってるぐらいしか見つからなかった。


「……もう少し相棒を信用したらどう?」


「いや、そこまで見た目が変わってたら誰だって疑うだろ」


すると、自称リョウは左目を開けた。


「はい、これで確定したでしょ?」


「……まじかよ、リョウ、とうとう女子になっちまったのか……。背、ちいさいな(なんか前にもこのやり取りしてる気がする)」


繋がってる左目で本物のリョウだと分かるとアキラは直ぐにリョウの今の身長をいじった。およそ155センチぐらいだろう、測らないとわからないがリョウが今手にしている対物ライフルと同じぐらいかそれよりもやや低い身長だった。


「うるさいなぁ、私だってわかった瞬間なんで身長いじるかなぁ…。まさか!もう1発、撃たれたい感じ?」


「いくら死なないとしても、痛いのやだからやめて?それにホントに死なないって確証はないんだからな?(リョウってこんな性格だったか?てか、一人称が私になってるし)」


そんなことを思っていると今度はリョウがアキラをジロジロ見てきた。

本人いわく、さっきジロジロ見ていた時のアキラを真似ているとの事だ。


「ねぇ、アキラは何も変化ないの?私にあったってことはアキラも何かしら変わってるんじゃない?」


「そうかもだな、とりあえず部屋に入るぞ?徐々にだけど寒くなってきた」


「そうだね、そういえば寒いってことは今冬ぐらいなのかな?まず、四季あるの?」


アキラは「さぁな」と返すと屋敷の中へ入っていき、リョウはそれを追うように入っていった。書斎に入るとリョウはアキラの机の方に近寄り「なにこれ!」と言いながらアキラが机の上に置いておいた黒と白のマーブル模様の玉を両手で持ち上げた。


「おい、雑に扱うなよ?それ何気に気に入ってるんだからな」


すると、リョウの持ち上げた黒と白のマーブル模様の玉と、同じく机の上に置いてあったグランドソードが浮かび上がった。徐々に2つが強烈な光を放ちながらくっついていった。ガタンと音がして2人が目を開けると剣と玉ではなく2振りの刀が鞘とセットで置いてあり、片方は柄や鞘、刀身まで完全に光を吸収しそうな程真っ黒な合口拵え(あいくちこしらえ)の太刀。もう片方は柄や鞘、刀身まで雪のように真っ白な合口拵えの直刀だった。


「なにこれ!」「なんだこれ!」


「「カッコイイ!」」


そう言うとアキラは黒い太刀をグランドソードの代わりに装備して、リョウは白い直刀を空間にしまった。


「…刀以外に変化なかったな」


「んー、こんな時はプロフィールを見ればいいんじゃない?」


「あぁーそうだな…」


アキラとリョウはそのまま机に寄っかかってそれぞれのプロフィールを開いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アキラ(男)

スキル:なし(アローレイン)

武器:ASHm500s変形銃 《レインクラウン》/無銘刀

装備:戦闘服 (カスタム)

流派:刹羽流(さつばりゅう)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リョウ(女)MP:0/0

スキル:なし(リフレクト)

武器:RSHm50s変形銃 《チェンジャー》/無銘刀

装備:戦闘服 (デフォルト)/光学迷彩の髪飾り

流派:なし

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんか、すごい変わってる」


「この世界に適応していってるんじゃない?」


「ポジティブだな」


その後もアイテム欄だったり装備画面だったりを見たがこれと言って変化はなかった。


「ところでアキラ?」


「なんだよ」


「いつまでその格好でいるの?」


「あ、……。」


警備の人と1戦したあとに直ぐにリョウの襲撃を受けたためアキラは今まで戦闘服を着たまま脱ぐのを忘れていたのだった。アキラは「あははは」と言いながら《バトルエンド》と、脱装のセリフを言い何も無かったかのように次の話を切り出した。


「なぁ、これなんか戦闘服にちょうどいいんじゃないか?」


そう言いながら昔のA-Zの基地にあった。白の服のセットがかかっているハンガーをリョウに見せた。そこには白のTシャツとジーパン、白っぽい上着とキャップがかかっていてポケットにはアキラがつけているものと同じ眼帯が入っていた。


「もうこれ戦闘服じゃなくて私服でしょ?あ、でも私たちには防御力は関係なのか…。じゃぁ、これにする!」


リョウの自問自答で勝手に解決し、アキラの指導のもと服をスキャンして戦闘服をセットした。


「これでこのコイン割ればいいの?」


「あぁ、それは…………」


リョウは、アキラが「道具を使った方がいい」と言う前に2、3回コイントスをして握りしめると、アキラのときとは違って、手の中で魔方陣が展開されたのか握りしめた手の隙間から白い光が出てきてリョウの周りを渦巻いて飲み込んだ。


「まじかよ、あんな硬いコインどうやって割ったんだよ…。リョウお前はゴリラなのか?」


「そんなわけないじゃん!ただ単にステータスのほとんどを筋力に振ってたからだよ!」


戦闘服に着替えたリョウはアキラの肩をポカスカとたたいた。リョウにとってはポカスカだったが、敏捷性に特化しているアキラにとっては殴打でしかなかった。


「いたい、いたいから!筋力にステ振りまくってる奴がそれやったら普通に肩壊れる!ストップ!ストォォォップ!」


アキラにやめるように言われてようやくリョウがたたくのをやめるとちょうどドアがノックされた。アキラが入るように促すとアルバートが封筒をアキラに渡してすぐに出ていってしまった。


「ねぇ、アキラ、アルバートさんって本当に執事なの?」


「確かに対応からして元から執事をやってる感じはしない。まぁ、なんか関わったら面倒なことに巻き込まれそうだから気にしてない」


「ま、それはおいといて」とアキラは話し切り上げてペーパーナイフを使って封筒を切った。すると封筒の中から1枚のコインと紙が出てきた。そして、紙には難しい言葉遣いで色々とかいてあった。簡単に解釈すると「ちょっと特殊な戦闘訓練をやるから、参加したい人は今日の12時までに会議室に集まってちょ」と書いてある。


「会議室ってことは《A-Z(アーゼ)》が対象なのか?」


アキラがそういうとリョウがさらに近寄ってきた。


「私は受ようかなこれ、だから!アキラも一緒に受けようよ!」


アキラの袖をリョウが掴んだ。


「なんかやな予感するし、めんどいから俺はパスで、っておい!きけよ!つれてくなぁぁぁー」


アキラの意見は聞かずリョウは同封されていたコインを持ち、アキラを引きずって外にでた。いつの間にかにもとの私服に着替えたリョウがいつかのベイカーのようにコインを地面に叩きつけてバイクを出現させ、アキラを後に乗せて王城に向かってバイクを走らせた。

到着して、いざ会議室に入ってみると中には一緒に救出作戦をしたクラッツやリョウの家の同居人のハンナと他に、顔は見たことあるが名前を知らない人が3人、合計5人しかいなかった。


「リョウちゃん~元気にしてた?なんか雰囲気かわったね」


「あ、あはは、よくわかりましたねセンパイ」


と、12時までのしばらくの間リョウとハンナ、アキラとクラッツの会話が続いた……。

気づくと時間は12時になっていた。すると急にアキラもリョウも突然体が動かせなくなってしまった。何者かに首を触られているが振り向くことすらできず、声すら出せず、空間に空いている謎の穴に向かって歩かされている。その穴の向こうは何も見えなくてこれから自分達が何をされるかもわからない。アキラたちの意識はそこで途切れた。




「…ラ…キラ…アキラ!起きて!早く!」


と、慌てるリョウの声でアキラは目を覚ました。辺りを見回すとそこは夕焼けのオレンジ色の光がさし込む会議室だった。一瞬、居眠りをしてしまったように思ったがすぐにそれが違うと確信することになった。


『お二方トもよウやくお目覚メになりましたか…ようコそ!わたクしがあなた方のタめに作ったアンダーグラウンドへ!』


どこからか気覚えのない声が聞こえてきた。話しているトーンが所々上がるとても独特なしゃべり方だった。


「なに?アンダーグラウンドだと?……なぁ、リョウ、アンダーグラウンドってなんだ?」


「裏の世界…?的な感じ意味だよ」


『無駄話シてしている場合ジゃないですよ?今カらお二人にはコのアンダーグラウンドから脱出しテもらいまーす。脱出条件はたッた一つこのアンダーグラウンドに住ンでいる人およソ700万人の皆殺し!一人一人確実に仕留めなけレばゾンビ化して頭を粉砕しなけれバならなくなりますヨー!時間は無制限です!飛び道具や魔法は禁止!楽しんできてクださい!ソれでは!よーいスタート!』


アキラもリョウもアンダーグラウンドから脱出しなければならない以外のことがいまいち頭に入ってこなかった。


気がつくと辺りは暗くなっていた。


「どうしよう…そんなことできるわけないじゃん」


『言い忘れてマしたー!スキル使えませン!あと人ト合えば体が勝手に………』


再び来たと思ったら途中から聞こえなくなってしまった。ちょうどそこへ見回りの警備員が会議室が空いているのに気づき入ってきてしまった。それにいち早く反応したのはアキラの体だった。


~刹羽流戦闘術近接《上転》~


死角から自慢のスピードで近寄り喉を殴って倒れさせて両手で頭をひねってそのまま一回転させてしまった。それを見てしまったリョウは唖然とし、アキラは意識があるにも関わらずからだが勝手に動いてしまったことに驚いた。


「なんで…なんでこんな目に遭わないといけないの…」


「リョウ……」


しかし、状況はさらに悪化した。アキラが仕留めたところを別の人に見られて大勢の人達が駆けつけて来てしまったのだ。それに気づいたアキラの体はリョウの前に立ち腰にあった黒い太刀を抜いた。


「リョウ、時間は俺が稼ぐ、だからその間に窓から外に出て屋根の上に逃げろ」


そういうと会議室から飛び出して太刀を使って応戦した。ここでもアキラの体はアキラの致命傷を避けようとする意思とは別に動いてしまっている。そんな中アキラの前にガタイのいい強い人が出てきた。これもアキラの体は応戦した。廊下の奥からは第二陣が近付いてきている。 足元には死体が転がり壁が血で赤く染まっている…辺りには血の臭いが漂っている。そんな今の状況からアキラは逃げたかった。ふと目の前にいたガタイのいい強い人が後ろから何者かに刺されてあっけなく倒れた。


「リョウ!なんで逃げてないんだよ!早く逃げろ!」


「嫌なの、アキラにばっかりこんなことさせたくない!いままで十分アキラを盾にしてやなことから逃げてきた。これからもそうするかもしれない…だけど!こんな状況でそんなことしたくないの!」


そういうとリョウの体は空間から白い直刀を取り出して第二陣に突っ込んでいった。アキラはそれを追うようについていった。第二陣は銃や魔法といった中距離戦に特化した形態だった。リョウは自分に当たりそうな攻撃だけを見切り直刀で弾き切っていった。アキラもリョウと同じように攻撃を弾こうと太刀を飛んできた光線に当てた。すると、光線は弾かれず何かに飲み込まれたかのように音をたてずに静かに消えてしまった。そしてこの瞬間、今アキラが手にしている太刀によってアキラの中に埋もれていた身体能力が顔を出しアキラはこの世界に来る前の一割ほどの力を取り戻した。



アキラが知らず知らずのうちに力の一部を取り戻し、そこから数時間後、二人は1つ目の都市を壊滅させていた。その被害者はおよそ14万人


「……なんなんだろう、この刀すごいねどんなに硬い鎧でも豆腐切ってるみたいに切れる」


ずっと続いた自分の意思に背いた自分の体による殺戮の末とうとうリョウの心は壊れてしまった。死に対する感情がなくなりその代わり人で遊ぶことを何よりも楽しむようになってしまった。そしてそれはリョウよりも先に動き出したアキラにも言えることだった。アキラは、なにか甘いもを口にしていないと色の識別ができなくなると言うなぞの現象に陥ってしまった。そんな中でもアキラは少しでも早くこのアンダーグラウンドから脱出するために棒付きの飴をなめながらもある街はたくさんの火柱を立てながら全てを焼き尽くし、またある街ではすべてを凍りつかせた。ほかにも巨大な木の霊が街をのみこんでいるところもあった。


「すごいねアキラもしかして最弱説がでてるデフォルトの刹羽流使ってるの?」


今いる街では最後の一人、2人が殺戮をはじめて10日アンダーグラウンドではピッタリ650万人めの人の首をあたかもそれが普通のように屈託のない笑顔を浮かべながら斬るリョウの姿があった。


「あぁ、刹羽流は他にはない全属性対応と全武器種対応があるからな、多様性を重視したい俺にはピッタリなんだ」


そういいながらアキラは太刀についた血を拭いて鞘に納めた。そしてそこから、残りの約50万人を殲滅するのはいままで約650万人を相手にしてきた2人には容易で、あっという間に最後の都市を壊滅させた。



目を覚ますとそこはもう見慣れた会議室の床だった。アキラとリョウはうつぶせに倒れていた。


「ん?おはよう、アキラ、リョウ」


人がいた。アキラはとっさに黒い氷刀を創り出し、リョウは直刀を構えた。


「おっと、ストップストップ、もうアンダーグラウンドからは脱出してるから落ち着いて?武器を下ろして?」


会った記憶のない人だった。身長はアキラよりも高く細身でメガネをかけてクロスボウを背負っていた。


「早速のところ悪いけど…。はいこれ」


目の前にいる人が懐からはお馴染みの封筒が出てきた。もちろん中からは命令がかかれた紙が出てきた。その内容は新設する王直属の特殊戦闘班Seven Million Destroyers 通称《SMDs(サンドス)》所属のアキラ壊師として三年以内に第二科学都市のどこかに隠れている反王国組織ノーレスの殲滅、同時進行で国立第二総合学校へ通い一般教養を学んでくるように(3月18日にモッツァレラ・リコッタ邸にて保護者役と合流)と言うものだった。


「…セブンミリオンデストロイヤー…絶対皮肉ってるだろ」


「ん?名前が違うリョウじゃなくてユウになってる」


そう言っているリョウの紙を見ると確かに名前欄にユウと書いてあった。


「あぁ、それは間違えじゃなくてわざとだよ。誰かさんが爆破の化身の前で名前を叫んじゃうから名前を知られちゃって、こうでもしないとすぐに化身さんたちに見つかって任務が完遂できなくなっちゃうからね」


そう言うとその人は少し笑いながらアキラの方を見て「じゃぁまたあとでね」と言いって部屋を出ていってしまった。


「どうする?今日3月16日らしいけどもう、うち来る?」


「いや、明日からそっちにお邪魔する。今日はとりあえず帰って準備しないと」


そのあと、アキラはリョウ改めユウに転移で家まで送ってもらって帰ってきた。

広い庭を通り玄関を開けると両サイドにメイドが整列して迎えてくれた。アキラはそれに感謝しつつ書斎へ荷物をまとめに行った。


「カルパス様、この度は壊師の称号ならびに元帥の指揮権の獲得おめでとうございます」


いつの間にかに後ろにいたアルバートが労いの言葉をかけてくれた。


「……指揮権?」


「えぇ、壊師の称号獲得と同時に与えたと()()からお聞きいたしましたが?」


アキラは首をかしげるとまとめた荷物を机の上に置いた。


「早速のところで悪いんですが明日から3年ほど任務に出るんです。すいません」


「ご安心ください前任のカルパス様もよく留守にしていらっしゃっていたので理解しております」


アキラはそんな優しいアルバートに一礼をすると寝室に向かった。

翌朝、アキラはいつもより早めに起きて荷物の再確認のために書斎へ…楽しみで眠れなかったのではないと自分に言い聞かせながら…言い聞かせながら…たぶんそう思って入った。確認と言っても前の日に何度かしてあるのですぐに終わってしまった。


「カルパス様ご朝食の準備が整いました」


「ありがとうございます、すぐに向かいます」


そう言うと食堂に向かった。席につくとパンやサラダ、スクランブルエッグやデザートと以前よりかは朝から食べやすいものになった朝食を食べてアキラは荷物を担いで玄関に向かった。


「お気をつけていってらしゃいませ」


玄関でアルバートやその他のメイドが見送ってくれた。


「いってきます」


そうして、アキラが外に出ると突然正面からなにかが飛んできた。アキラは避けようとした…が、その飛んできたものが空中にピタリと止まったまま動かなくなってしまった。


「ベイカー大将?何をするのか見ていたら…私の相棒に…」


いつの間にかにいたユウ(リョウ)が怒鳴りそうなのを我慢して若干うつむきながらベイカーをにらんでいた。アキラはそんなユウをなだめながらも木の影に隠れていたベイカーに話しかけて出てきてもらった。


「久しいなアキラくんリョウくん。なに、そんな警戒しないでくれ今日はこれを渡しに来ただけだ」


ベイカーはそう言うとアキラに10枚のコインを投げた。よく見るとコインの表にはアルファベットが描かれていた。


「そのコインは我々が普段予備としてもっているものだ。そして、その表面に描かれているアルファベットの軍団長は君を信じてついていく…この先は言わなくてもわかるな?まぁ、なかよく使ってくれ」


2人はベイカーにお礼をするとユウの転移を使って第二科学都市へむかった。

「……2人とも変ったな…」


ベイカーのこの一言は2人に届くことはなっかった。




王都から見て北東に位置する第二科学都市、その中心にあるビル街を囲うようにある高級住宅地にアキラとユウはいた。


「はい!とうちゃーく」


アキラの目には一般的な家よりかは一回り大きい感じの現代建築の家があった。


「思ったより小さいな」


「いや、十分大きいからね?アキラの渡された家が大きすぎるだけだからね?」


そう言うとユウは玄関を開けた。こっちではなぜか靴を脱ぐ習慣があるらしく、自分の家と同じように靴を履いたまま上がろうとしてユウに慌てて止められてしまった。


「あ~おかえり〜ユウちゃん〜そして、いらっしゃいませ〜元帥閣下、あ、今はアキラ壊師ですね〜ごゆっくり〜」


と、ユウの同居人のハンナ・リコッタに話しかけられて言動に少しイラッとしたもののあまり反応しないでおいた。


「保護者役の人と会うの明日だけどそれまでどうする?」


ユウがくるっと振り返ってアキラに聞いた。


「荷物整理と武器整理」


アキラそれに対して即答で答えた。


「はーい」


2人はリビングに向かいソファーに座ると作業を始めた。作業と言ってもただベイカーからもらったコインに装備を登録するだけなのでさほど時間がかかるものでもなかった。アキラは太刀をリョウはハンナからもらったと言うMptm50bサーキュレーション式光線銃 (ホワイト)と白い直刀、デザートイーグルにサブマシンガンであるベクターを二丁、そして、謎の大きい銃を登録した。


「そのお前の身長ぐらいある銃はなんだったんだ?」


アキラがユウにそう質問をするとわざわざコインを割って出して見せてくれた。


「あぁ、これのこと?これはね20mmK2sクラスタっていってね。AMRつまり対物ライフルのことだよ!これねすごくてねサーキュレーション式の光線銃の中で……」


「そこまで、すごい危険なのはわかったからもうそれ以上言うな」


と、ついつい語りだしてしまったユウをアキラは少し強引に黙らせた。

そんなこんなであっという間に時間が過ぎて翌日、アキラはリビングのソファで目を覚ました。時計の針は6時を指している。キッチンからは料理を作るハンナの鼻歌が聞こえてくる。アキラは朝のランニングに行こうと靴を履き準備体操をするような勢いでハンナに元気いっぱいの朝の挨拶しようとしたがそんな柄ではないので二度寝に入った。


「ついこの前まで刀片手に殺戮を繰り返す日々だったのになんか急に平和になったね」


目を開けるとアキラはユウの顔を見上げるような体勢になっていた。つまり、ユウの膝を枕にして寝ていたのだった。その状況にさすがのアキラでも一瞬動揺した。


「あ、起きた?もうすぐ保護者役の人来るから顔洗ってさっさと朝ごはん食べた方がいいよ」


アキラはすこし顔を赤くしながら洗面台へかけて行った。あえて冷たい水で顔を洗うとリビングに戻り朝食をとった。トーストにハムエッグ、サラダにコーンスープと一般的な朝食だ。それから、机の上においてあった棒付きの飴を口にいれてユウとその保護者役の人を待った。10分ほどでインターホンが鳴った。すると、ユウが「はーい」と言いながら玄関に走っていった。アキラもそれに続いて玄関に向かった。


「やあ、一昨日ぶりだねアキラそれにユウ」


玄関を開けるとそこには、アンダーグラウンドから帰ってきたとき最初に話しかけてきた高身長のメガネの人がいた。


「あ!あのときの人だ!なにかよう?」


「ユウ…多分この人が俺たちの保護者役」


ユウは、高身長メガネの人をリビングまで案内すると対面する形で座った。


「あら~リュウさんがユウ達の保護者役なんですね~」


と、言いながらハンナがお茶を持ってきた。どうやら高身長メガネの人はリュウと言うらしくハンナとお久しぶりトークを始めてしまった。


「ねーねー、お久しぶりトークはあとでいいから自己紹介してよー」


とうとうユウがしびれを切らして少し強引に話に入っていった。リュウは自分がうっかり話の腰を折っていたのに気づき咳払いをして話の本題に入った。


「ごめんごめん、じゃあ簡単に自己紹介をさせてもらうよ。えぇっと、時々ツイチョスってところでラジオ配信をしているリュウです。これから3年間かな?よろしく」


リュウはそう言うと右手を差し出してきた。アキラもユウもそれに応じて握手をした。


「さて、じゃあ難しい話は後にして、これから暮らす我が家に案内するよ」


そう言ってリュウがとっとと玄関に向かっていってしまったのっで残された2人は慌てて後についていった。ユウはハンナに「月イチで遊びに行くね~」と言われたがユウは来ないことを心から願いつつ外に出た。リュウの後ろに付いていくこと数分、アキラたちはビル街に入った。さまざまな車やバイク、人が行き交い、地球の東京都心の光景と同じようにも見えた。アキラもユウも懐かしさを感じつつ少し速いペースであるくリュウに遅れないように歩いた。そして、もう少しでビル街を出るところまで来た。


「ねえねえ、リュウさんいやお義兄さんの方がいいのかな?ちょっとあそこのスムージー屋さんよっていい?あの、ベリーベリーベリーベリーベリーベリーってやつすごく気になる」


「うん、さんだとよそよそしいからそれでいいよ、えぇっとベリーのやつだよね?オーケー買ってくるよ」


リュウは2人をおいてスムージーを買いに行ってしまった。


「(すごい主張の強いベリーなんだろうか)…とりあえずそこのベンチに座って待ってるか…」


そこからそれほど待たずにリュウがスムージーを買ってきた。

案の定ベリーの味が強かった。おそらくベリーだけでは到達することはないであろうレベルで酸っぱいスムージーだ。そんなスムージーを片手に再び歩き出した。しかし、ここで今後学生生活を送る2人にとってめんどくさくなる人物と繋がる事件が起こる。

現場はビルの建設現場に面した歩道だった。そして、そこへ一本の鉄骨が歩いていたアキラやユウ、近くで立ち話をしていたどこかの学校の生徒2人を潰すように落ちた。現場には赤い液体の水溜まりができていて、周りの人は顔を青くした。少しすると辺りにサイレンの音が響き渡った。

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