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死にたい不死者の異世界転移戦記  作者: 北石 計時朗
6/13

ジャンボスライム

学校でいじめられている。


トイレに連れ込まれて床に倒され脚で体中を蹴られる。


仕上げとばかりに全身に水をかけられ体が凍える。


場面が暗転して家で義父に怒鳴られながら顔面を殴られる。


倒れた体に容赦ない蹴りが飛んでくる。


ああ、苦しい痛い、理不尽に振るわれる暴力に思わず死んでしまいたくなる。


場面は次々と切り替わり、理不尽ないじめやDVにさらされている瞬間が思い浮かんでくる。


ああ、自分は今夢を見ているのだろう、しかも思い出したくもない最悪の悪夢を……


うなされながら次第に意識が覚醒していく、思わず覚醒と同時に上体を起こす。


薄れている意識でぼんやりと周囲を見渡す。


そこは見知らぬ空間だった。


自分の部屋じゃないここは何処なのだろう?


まだ覚醒しきれない意識で状況を判断する為に必死に記憶を辿る。


自殺、異世界転移、迷宮、モンスター、記憶の断片が結びつていき、昨日の体験を思い出してくる。


昨日の体験が夢でないとすれば、ここは迷宮の中の小部屋のはずだ。


薄暗い部屋の中をぼんやりと見渡してみると、ベットの横に皮鎧一式、テーブルに置かれた冒険者の鞄、その存在が昨日の事が夢ではないのだと思い知らされる。


寝汗をかいたのかシャツが濡れてベタベタするが着替える服も何もない、とりあえずこのまま着るしかないと思い、ベットから降りて水場に向かう、顔でも洗ってサッパリしょう、悪夢の余韻を洗い流すべく、流れる水を手ですくい顔を洗う、ちょっとスッキリした気分になる。


とりあえず寝たことでSPは満タンに回復しているみたいだ。


普通ならここで朝食をとるのだろうが、心もとない食料はできるだけ倹約する必要がある。


その代わり水を腹いっぱい飲んで空腹を誤魔化すしかないだろう、たら腹水を飲んで飢餓感を誤魔化してしまおう、流れる水を腹一杯までごくごくの飲んでいく、水道水とは違った天然の湧き水、これ日本で売り出せば儲かるんじゃないかな?そんなことをぼんやり考えながら今日の方針を検討してみる。


迷宮の外延部を歩いて探索する。


LVUPのためにスライムは出来る限り倒すしかないかな、まあ雑魚になったスライムを倒すのにそんな苦労はしないだろう、


とりあえず皮鎧を装備して最後に腰に剣を吊るして、装備の確認はこれで終了だ。


最後に鞄を開いてみて紙束と炭筆を上に置いて迷宮探索の準備はほぼ終了する。


あっと!そこで忘れ物ががあるのに気づき水筒を取り出して中に水を汲んでいく、木で作られた素朴な水筒、容量は2ℓぐらいだがとりあえず渇きを癒してくれる。生命線と言っても過言じゃないだろう、まぁ死なないのだから、自我を保つ重要なアイテムと言った感じか?


この部屋から出る段取りは整った。


後は扉を開けて迷宮を探索する。


さぁこれから2日目の探索を決行する。


荷物を確認して扉を開ける。


扉を開けたらいきなりスライムさんのお出迎えだ。


五匹ぐらいがモゾモゾと床の上を蠢いてる。


どうやらこの小部屋には侵入出来ないようだか、生命活動を感知する器官があるのか団体さんで待ち構えている。


スライムさんは俊敏が低いから素早く動いてとどめを刺せば、五匹いようが所詮雑魚敵だ。


素早く動いてまず一匹目のスライムの体内に手を突っ込みそのまま核を掴んで引きずり出す。


手に激痛、でももう慣れた、再生した手で二匹目を倒す。


残る三体はもぞもぞ動いてスライム同士が合体していく、大型のゴミ袋だったスライムが羽毛布団ぐらいに大型化している。


スライム核も癒合してソフトボールぐらいの大きさに変化してるし、合体して強化したスライムは大型の触手を繰り出してマモルを牽制してくる。


大型化したすらスライムを認識で確認してみると、


『種族』スライム

『LV』10

『HP』48

『MP』0

『SP』38

『俊敏』12

『器用』13

『知能』3

『防御』30

『攻撃』30

『技能』触手攻撃、強酸消化

『魔術』なし


ああ、これ確実にレベル上がってるよ、この軟体生物こんな隠し玉を持っていたのか?


とにかく腕だけ突っ込んで核を取り出すのは無理っぽいし、あの強酸の体内に体ごと潜り込ん核を取り出さねをば勝算がない。


やぶれかぶれで体ごとスライムの体内に潜り込む、熱い痛い呼吸ができずに苦しい、目が開けていられないから手探りでスライムの核を弄って探す。


『損傷が再生に追いつきません』


機械音声さんもういい、わかってやっているんだから、そうこうしてるうちに指先きに硬質物が触れる感触が得られる。


これだと!思わず両手で掴むスライムの核、そのまま体ごとスライムの体内から脱出をはかる。


上半身はスライムの中、だから下半身に力を入れて強引にスライムから飛び出す。


頭も顔もスライムの酸に焼かれてスタボロだ。


『技能『耐酸性中』を獲得しました』

『経験によりLV5になりました各種ステータスが向上します』


大物を仕留めたおかげかLVが一気に上昇する。


でもまだ目を開けられないから自分で確認はできない、とにかく上半身の再生待ちだ。


皮鎧の隙間に強酸が入り込んでいるから上半身はどこもかしこも苦痛がする。


着ていたTシャツなんて強酸に溶かされてボロボロなんだろうと思わず苦笑いする。


しかしスライムボアの皮鎧は強酸に入っても何ら損傷を受けた気配がしない、よほど高い強酸性が付与されているみたいだ。


そうこうしている内に上半身の痛みが完全に治まる。


軽く目を開けれてみても、もう敵はいないみたいだ。


さて試練の迷宮の二日目の探索、最初から熱烈な歓迎を受けて少し気分がめげる。


とにかく戦闘中邪魔だった鞄を拾い肩にかけ、通路の左側を目指して歩み始める。





長い通路を素早く慎重に歩く、左に分かれる通路はあるが右に曲がる通路は無い、やはりこの通路は迷宮の外延部なのだと一人で納得する。


5㎞は歩いたぐらいに右に曲がる場所が現れる。


外延部を周回してることを確信する。やはりこの迷宮は10㎞四方の正方形の形をしてあのいるのか?


紙を取り出して炭石でマッピングしていく、とにかく今日中に外延部の探索を終了させななければいけない、残り移動距離、目算で35㎞、このまま外延部に昇りの階段が見つからなければ、内部の探索に乗りださねばならない、幸い出てくる敵はスライムだけで発見次第秒殺で始末しているので、たいした障害にならない、SPにも余裕があり、飢餓感も感じない、まだまだ動ける。


左折から6キロは歩いただろうか、いきなり通路は左に曲がっている。


目算より早い左折ポイント、この迷宮は正方形じゃないのかな?


とりあえず紙に曲がり角の情報を書き込んで通路を曲がって前進する。


出てくるスライムを秒殺して一息入れる。


『耐酸性中』に技能があがったことにより、酸の火傷の回復は急激に早くなっている。


それでも苦痛だけは最初と変わらない、ただ激痛に慣れたという感じかな?このまま耐酸性が上昇すれば痛みも感じることなくスライムを倒せるのかもしれない、要は再生が酸化を上回れば、苦痛は感じなくなるとそう思うから、だからスライムを見つければ積極的に戦っているのだけど、『耐酸性上』を告げる機械音声さんの声はまだ聞こえてこない。


生命の気配のない未探査、未踏破の試練の迷宮、響き渡るのは自分の足音だけだった。


やがてまた直線路に曲がり角、今度は右に曲がっている。


これで確信する。この迷宮は正方形じゃなく歪な形をしていると、とりあえず右に曲がるとスライムの団体さん、その数7~8匹、朝の様に合体されると倒すのが困難になるため、素早く動いて一匹、また一匹と手の苦痛を無視して倒していく、それでも4匹が緊急合体、そのまま駆け足でスライムの中に飛び込んでいく、頭に顔に酸の痛みを感じるが手探りでスライムの核を探し、そのまま両手で掴んで大型スライムから緊急脱出する。


頭も顔も痛い両手が手が痛い、再生するまで耐えるしかない。


技能『耐酸性大』を獲得しました』

『経験によりLV6になりました各種ステータスが向上します』


機械音声さんの声が頭に流れる。


今日起きた時から2回目のLVUP、やはり大物を倒すとその分の経験値は大きいのだろう、顔や手の痛みも朝に比べると回復するのかずいぶん早く感じる。


もしかしてあの大きなスライムに全身が飲み込まれたら再生が酸化に追いつかず、そのまま死ねるんじゃないかと心で思う、


『酸化耐性が強化されており、スライムによる自死は実施できません』


唐突な機械音声さんのアナウンス、ありや、やはり不死身の肉体はスライムごときの餌にもならないということなのか、残念かな?


そんな事を考えて迷宮の通路を歩く、死ねない肉体は便利に思えてもちょっと不便だ。


すべての痛みに耐性が最初から付いていたら、こんな苦労はする必要はなかったんじゃないのか?


それに状態異常の石化や精神攻撃なんて受けたらか、いくら不死身でも行動不能になってしまうんじゃないか?


ひょっとしたら自分にそれらの耐性をつけるため、この迷宮は存在しているのか?


そんな疑問を思ってみても機械音声さんの声はきこえてこない、一人で思い悩んで歩くしかできない、しばらく歩くと今度は道は左に曲がっている。


紙にマッピングして歩き始める。


遭遇するスライムを手で攻撃しながら、果てしない道を一人歩んでいく、やがて左にまがる道が通路に現れる。


そこには目印が刻まれている。


「間違いない昨日俺が剣で付けた傷だ」


これで迷宮の外延部を一回りしたことになる。


正方形ではない、迷宮の外延部、そこには上に昇る階段は存在しなかった。


適当に書いた迷宮の輪郭がおぼろげに見えてくる。


さてこれからどうするか、SPにはまだ余力はある。


休憩部屋に戻る道も見えた。


起きてから歩き始めてだいたい4時間ぐらい経っているだろう、水筒の水は残り半分以上ある。


「この曲がり角、俺が倒れていた場所に続くんだよな」


自分の出現場所、そこに何かヒントがあるかもしれない、そうつぶやいてマモルは曲がり角を進み始める。


しばらく歩いて立ち止まって確認する。


「確かこの辺りで目覚めたんだよな?」


そうつぶやいても誰も答えは教えてくれない、しかたなく通り過ぎて通路を進んでいく。


やがて通路は十字路にさしかかる。


「休憩部屋に行くには右の方か」


そうつぶやいて右を歩き始めるが、突然通路が途切れて行き止まりになってしまう、


「行き止まりか……ついてないな」


そうつぶやいて紙に地図を記入するが、もっとついてない事態が背後で起こる。


スライムの集合体、そんな巨大な物体が通路を埋め尽くさんとこちらに向かってきている。


「なんりゃありゃ!」


今まで見たことのない巨大なスライム、それが這うようにゆっくりと近づいてきている。


認識で見てみれば、


『種族』ジャンボスライム

『LV』19

『HP』60

『MP』0

『SP』38

『俊敏』15

『器用』18

『知能』3

『防御』30

『攻撃』30

『技能』触手攻撃、強酸消化、押しつぶし

『魔術』なし


今まで出会ったことのない強敵だと認識できる。


しかも行き止まりのため逃げ場は何処にもない、戦うしか活路を見いだせない、とにかく鞄を床に置いて

ジャンボスライムを観察する。


半透明の小山のような物体、バレーボールぐらいの核がうっすらと透けて見える。


多分あの核を抜き出せば倒せるはずと、助走をつけて蠢く物体に体ごと飛び込んでいく、痛い!熱い!苦しい、呼吸もできないから息苦しい、ジャンボスライムの体内で核を求めて必死に蠢く、もしこのまま動かなければこいつに消化されて死ぬんじゃないか、ふとそんな楽観的思考が頭によぎる。


『酸化に対する再生が拮抗しています』『ユニークスキル不死者は呼吸が止まっても存在できます』


電子音声さんさんが楽観的な思考を打ち消してしまう、とりあえず蠢きながら目を開けて見る。


酸に焼かれて目が痛いが視力はあるようだ。


必死に動いてバレーボールぐらいの大きさの核を両手で抱え込む、そうして抵抗する粘液と格闘してついにジャンボスライムの体内から脱出することに成功する。


しかし核を取り出してもジャンボスライムは消滅せず、核を取り戻さんとばかりに触手を伸ばしてくる。


「核を破壊しないと死なないのか?」


ジャンボスライムから後退り、核を床に置いて剣を抜き、両手に力を込めて振り下ろす。


ガキンと鈍い音が響き、核は粉々に粉砕される。


動きを止めたジャンボスライムは水の様に広がって、迷宮の床の中に溶け込むように消滅する。


『技能耐酸性強を獲得しました』


『経験によりLV10になりました各種ステータスが向上します』


ああ、あれほどの大物を倒せば得られる経験値も多いのだろう、たぶんあんな無茶な肉弾戦は自分以外できないだろう、普通の人間があいつに襲われたらたぶん単なる餌になっていただろう、それを思うと幸運なのか?いや不運かもしれない、自分は死にたいのだから……


酸に焼かれた苦痛が戻るまでそんなことを考え込む、まだ異世界に来て二日目でいきなりの迷宮攻略、安定しない心情に、過酷な現状に前向きに突き進めとはとても考えられはしない、今まで自分に対して辛く当たっていた者でもな居ないとなれば人恋しくなる。


とにかくここから早く脱出して誰でもいいから人と話がしたい、一人だけで生きていくには自分は弱すぎると考える。


鞄をかついで行き止まりを戻りながら思いにふける。


休憩部屋にに帰り着いて今回は悪夢ではなく、楽しい夢をみれたらいいな、そんなことを考えながら通路を歩く、しかし休憩部屋に戻るにはかなり困難な状況に遭遇する。


右に曲がれば行き止まり、待ち構えたようにジャンボスライムさんが出現する。


それを倒して逆戻りする。


とにかく右に曲がれば確実に行き止まりになっているみたいだ。


なかなか外延部にたどり着けない、水はだいぶ減ってきたし、SPはまだ余裕だが飢餓感が襲ってくる。


出てくる敵はスライムばかり、これじゃ倒して食料にすることもできない、かといっていつ敵が出現するかわからない通路で食事をすることもできない。


何本目かの右に曲がる道、もう惰性で突き進む、しばらく進んでも行き止まりにならない、期待に胸が膨らむ、しばらくすると十字路、左右を無視して直進する。


そうしてよやくT字路に突き当たる。


マッピングして休憩部屋の位置を確認する。


どうやら1kmも歩けばたどり着けそうだ。


速足いうより駆け足で通路を進む、スライムと遭遇しても無視して駆ける。


ようやく懐かしい木の扉が見えてくる。


中に入って扉を閉める。


薄暗い部屋が天国の様に見えてくる。


鞄から焼き固めたパンと干し肉を取り出して無貪り食う、そのあと水場に行って腹いっぱい水を飲む、それでようやく飢餓感から解放される。


鎧装備一式を外してベットの横に置く、やはりTシャツとスエットのズボンは酸に侵されボロボロになってしまっている。


とりあえずズボンを脱いで下着を調べる。


パンツはどうやら無事のようだ。


パンツ、シャツも脱いで、水場で洗濯をする。


洗剤なんてないけどこのまま着続けるよりましだ。


パンツ、シャツをテーブルに掛けて干す。


今日は全裸で寝なければならないな、でもこの迷宮内は何故か暑くも寒くも感じない最適な気温のため、たいして気にならない、神様の配慮かな?


布を水で濡らして体を拭き始める。


熱い風呂にゆっくりつかりたいとしみじみ感じる。


体を拭き終え最後に自分のステータスを確認する。


種族』人間

『LV』15

『HP』52

『MP』48

『SP』40-15

『俊敏』32

『器用』18

『知能』18

『防御』10+21

『攻撃』10+30

『技能』『耐酸性強』

『魔術』なし

『ユニークスキル』『不死身』

『スキル』『認識』『再生』『剣術LV1』

『言語』『エルシオン共通言語』


やっぱりジャンボスライムを倒しまくったからかなりあがってるや、SPもあがってきてるし昨日より活動時間が長くなってる。


痛くて苦しくて辛いけど、ジャンボスライムはゲーム的にはおいしい獲物かもしれない、でも食べられないけどもでも……食料の心配をしなければいけないのが辛い、食べれるモンスター出てくればいいのにな、とにかく明日はマッピングしながら未探索区域の探索と上に昇る階段探しだな、それにここから脱出するにも食料も乏しいし、人里に出るまでにどれるらいかかるかわからないし、早く進めて落ち着こう。


そんなことを考えているうちに意識が朦朧としてくる。


しばらくして意識は完全に落ちねマモルは眠りについてしまう、困難な状況の中でのひと時の安らぎ、


マモルが真の安らぎを得ることは、神でもわからないだろう。




読んでくださってありがとうございます。

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