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死にたい不死者の異世界転移戦記  作者: 北石 計時朗
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最初の試練

薄暗い迷宮の中を急ぎつつ慎重に歩いて行く。


自分の周囲は仄かに輝る壁のおかげで視界はあるが、進行方向は暗くて確認できない。


迷宮といえばモンスターが現れるのが定番の展開だけど、10分ぐらい歩いても、まだ何も出現しない。


自分の足音だけが迷宮内に響き渡る、


やがて通路はT字路に行き当たる。


右か左か引き返すのかの三択余儀なくされる。


迷宮を探索するようなマッピング道具もないし、左右どちらに進めば出口があるのかわからない、取りあえず分かれ道のたびに右に移動することに決めて、手にした剣で迷宮の壁に傷をつけて目印にする。


分かれ道を右側に進んで5分ぐらいに唐突にそいつは現れた。


半透明のゴミ袋ぐらいの大きさのジェリー状の塊が、迷宮の床でもぞもぞ蠢いている。


スライム、そんな呼び名がしっくりする物体だ。


認識でスライム状の物体を見てみると。


『種族』スライム

『LV』2

『HP』20

『MP』0

『SP』15

『俊敏』8

『器用』8

『知能』3

『防御』12

『攻撃』15

『技能』触手攻撃、強酸消化

『魔術』なし


認識先生が最低限の情報を教えてくれる。


そうしてる間にスライムはマモルを感知したのか、モゾモゾと蠢いてゆっくりとこっちに寄ってくる。


戦う逃げるの選択肢、逃げようと後ろを振り向けば別のスライムさんが暗がりからモゾモゾと出現中だ。


完全に挟撃されてる。


戦う以外の選択肢は無くなってしまつた。


鋼鉄の剣を両手で構えてでスライムに斬りかかる。


グニャグニャってした手ごたえがするだけで、ダメージをあたえた感触がしない、剣の一部がスライムの粘液が付いて変色する。


スライムからいきなり触手が伸びて、剣を握る手に絡みつこうとする。


「熱っう!」


酸に焼かれたような激痛に両手に握る鋼鉄の剣を取り落としてしまう。


『肉体的損傷を確認、スキル再生が発動します』


機械音声さんのアナウンスの後、両手に受けた火傷のような痕が見る見る再生していく。


スキル再生便利だが痛いのが辛い、スライムは触手を繰り出してマモルを絡め取ろうとしている。


どうやらスライムボアの皮鎧は耐酸性があるのか?触れられても激痛は襲って来ない。


後方から来たスライムも射程圏に入ったのか触手を飛ばし始める。


取りあえず皮鎧に守られていない頭部と手、太腿に繰り出される触手を避けながら途方に暮れる。


物理的にダメージを与えられない事は剣による攻撃で立証されたし、こんな敵は火とが有効打になるんだろうけど火を付ける道具も燃料もない、この世界には魔法も存在しているみたいだがまだ何も習得していないし、いくら不死身で再生されるといっても酸で焼かれ続ける苦痛は受けたくない。


弱点でもあればそこを攻撃すればいいんだが、スライムの弱点って確か核を破壊すれば活動を停止するんだっけ?ネット小説で読んだことあるし、スライムの攻撃をかわしながらそんなことを考えて、スライムを観察してみる。


ゼリー状の半透明な物質、よく見たらありましたよ赤いビリヤードの球ぐらいの核が、あれを取り出すか破壊すればこいつらは多分死ぬじゃないか?しかし現状では床に落とした剣を拾う暇もないし、剣で斬りかかっても正確に破壊できるとは限らないし、そうなると文字どうり最後の手段、手で直接取り出すしかない、、スライムの中に手を突っ込む、それは熱くて痛そうだが他の手段が思いつかない。


そう決断するとマモルは触手攻撃の隙を読んで、右手を一匹のスライムの中に突っ込んでみる。


熱い!痛い!激痛に目がちかちかする。


『肉体的損傷に再生が追いつきません』


機械音声さんが不穏な事を言っているが構ってる暇ない、必死に弄ってスライムの核を握る。


そのままスライムの中から核を抜き取る。


途端、ゼリー状の物体は水の様に広がって迷宮の床に消滅していく、スライムボァの手甲は無事だが手が酷い、肉がただれ、骨が露出している部分もある。


とりあえず再生が完了したらもう一匹の方だ。


苦痛で眩暈する中そんなことを考えながら、手にした核を鞄に入れる。


右手が再生するまではもう一匹の触手攻撃を躱さなければいけない、そのもう一匹の触手が頭に当たりまた激痛が起こる。


「勘弁してくれよ……」


思わず理不尽につぶやいてしまう、そうこうしているうちに右手の再生が完了する。


「便利なスキルだが痛いのつらいや」


そうつぶやきながらスライムと対峙する。


ゼリー状の中心に赤い核を確認しながら右手を伸ばす。


触手が右腕に絡みつくがもう躊躇できない、そのままスライムの本体の中に腕を突っ込んで核を握る。


『肉体的損傷が……』


自動音声さんもういいと思いながら必死に苦痛と戦う、核を取り出すとスライムは水の様に広がり消滅する。


手が痛い、痛くて泣きそうだ。しかし前回より再生が速くなる。


『技能、耐酸性微小を獲得しました』


どうやら苦痛に耐えたら耐性が技能として獲得できるようだ。


とりあえず再生しっつある右手をぼんやり眺めてそんなことを考える。


この試練の迷宮の最初の戦闘はスライム相手とはいえ勝てたのだ。しかし不死者であり再生能力がなかったら、普通の人間でランクFの冒険者だったら確実に大怪我を、いや、場合によっては死んでしまっていたらろう、神様からもらったギフトに感謝しなければいけないのか?いや俺は死にたかったんじゃないのか?ならさっきのスライムとどうして戦ったのか?矛盾する考えと行動にためらいながら剣を拾い鞘に収めて歩き出すしかない、迷宮内は薄暗く何処までも空虚で果てしない、早くここから脱出して生きるという意味を求めないと空虚な自分が存在することが、理解できないと考える。


取りあえず行動できる間に、この試練の迷宮から脱出して人里にたどり着かなければ、今後の指針も決められない、マモルは薄暗い迷宮の通路を何を求めるかわからないまま、重い足取りで歩き出すのだ。















読んでくださってありがとうございます。

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