ダンジョンに行こう! ―中継地点設置編―
青い空。白い雲。太陽が直接視界に入って来ないという事は、午後二時から三時くらいかなぁ? 此処はお外? なんで私は横になっているの?
「お嬢! 目が覚めたか! なかなか起きねぇから焦ったぜ」
ゲイルの声で、ガバッと起き上がる。
周りを見るとゲイル達と精霊達が、青いシートの上にいる私を取り囲んでいました。……えっ? 何? この状況。
「どうやらリアお嬢様は、気を失った事を理解しておられない様ですな」
「んだ。けども、あのスピードなら仕方ねぇべな。おら達も初めは判らんかったしなぁ」
えっと……誰か真面目に説明して。
「つまり私とセバスは、トレントの上で気絶をしていたという訳だ」
「すまんのぉ。急ぎというのでぇ、つい、全力を出してしまったわいぃ」
館の下に魔方陣部屋を作った後、トレント達に乗って現地へと向かった私達。
うん、確かに言いました。『急いで』と。そこでトレント達が出してくれた蔓が、シートベルトの様に身体に巻き付いて……その後の記憶が有りません。
「実際、どれくらいのスピードを出してたの?」
「失礼します。……そうですね。島主様の世界でいうと、新幹線とやらの速さになります」
そっかぁ、新幹線かぁ。大体、時速三百キロかぁ。って、ちょっと待てぇッ!
つまり私達は新幹線の上に、生身で乗っかっていたという事かぁ? そりゃあ、気絶もするわいッ! よく死ななかったな。
緑の精霊ちゃんが、私に触れながら教えてくれたスピードを聞いて、即行で脳内突っ込みを入れましたよッ!
「申し訳御座いません、お嬢様。魔法を使う余地もなく、気絶などをしてしまうとは。己の不甲斐なさが原因で、お嬢様には大変な御迷惑をお掛けしてしまいました」
「いやいや、謝らないでよ、セバス。それを言ったら私もだよ。取り敢えず、たらればの話はもうお仕舞い。それより、ジーニアス達は早かったね。シアンに伝言を頼んだのは、館を出る時だったのに」
しょんぼりしているセバスは貴重ですが、うかうかしていると夜になっちゃう。謝罪はちゃんと頂きましたよ。
それに、ラノベの主人公じゃ有るまいし。咄嗟の時に、スキルをバンバン使える方がおかしいんだよ。
しかし、ジーニアス達はどうやって来たのかしら? 滅茶苦茶早くない? もしかして、丸一日経って……いないよね?
「あぁ、お嬢。逆だ逆。俺達がここら辺を試験的に開発しようとやって来たら、ノーム達が穴に出入りをしていたんで、その辺を飛んでいた精霊を捕まえて聞いたのが事の発端だ」
「随分と、こそこそ出入りを繰り返しておりましたから、これは怪しいと私達は思ッたのですよ」
成る程。ゲイル達が見付けた後、私のところに報告が来たのか。そりゃあ早いよね。
それにしてもゲイル。また蝶々を捕まえる感覚で、精霊を捕まえたのか?
でも、丁度良いから、別館の話をしようかなと思っていると。
「……ノーム達が、自分達の塒を作る為に穴を掘る事は、事前に解っておりましたの。だから、我々もその件に関しては、島主様に許可を戴きましたし……。ですが、これ程の物を作るとは思ってはおりませんでしたわ」
「通常は大体、直径2M。最大で5Mくらいですから。土達が気付かなくても仕方がないと僕達は思いますよ。それに我々はまだ初級ですから、全ての場所を管理する能力は備わっていません。これから共に頑張りましょう」
「有り難う緑。私達はゲイル様達のお役に立つ事が、島主様のお役に立つと思って……。もっと周りの事も見るべきでしたわ」
私の背後では、土精霊ちゃん達の話を聞きつつ、慰めている七三君達がいました。そうか、管理エリアには限度が有るのか、覚えておこう。
塒の許可を取りに来た頃は、ゆっくりと話を聞く時間が取れなかったんだよね、ごめん。でも、業を煮やした土精霊ちゃんが、玄関の扉を開けた途端、私の顔面に飛び込んで来たのは、今となっては良い思い出ですよ。ハハハ……痛かったです。
「まぁ、作っちゃった物は仕方無いとして、これからの事を話すね。みんなシートの所に集まってぇ!」
このシートも日本に有る様なビニール製品で、以前ポイント交換してゲイル達にあげた物です。元々ロール状になっているから、切って使う事も出来ますよ。切り口の上手下手は置いといて。
「これから私達は、ノーム達の作った大空洞に入ります。でも、とてつもなく大きいみたいだから、全員で入ると開発が進まない。そこで、ゲイルとカールには此処で本来の開発を進めてもらいます」
「俺達は留守番かよ。ツレねぇなぁ」
「げどもよ、実質問題として、開発は必要だべ」
フフフ……。ゲイルはこういうイベントっぽいモノが好きそうだもんねぇ。安心してくれて良いのよぅ。
「そこで、此処に館の別館を建てま~す。ゲイル達の力が必要な時は、呼びに来るから安心して。ノーム君。大空洞の入り口付近に、魔方陣を設置出来る場所は有るかな?」
「うん。まだ準備出来て無いけど、最初のエリアに行く前に、休憩所を作れとジーニアスさんに言われたから作ってる」
ナイス! ジーニアス!
ゲイル達もセバスに別館の話を聞いて喜んでいますね。
「では、早速ですが、別館を建てたいと思います。カール、ゲイル、何処に建てる? 二人がメインで使う事になるから、希望が有れば今の内に言って欲しいな」
「そうだな、大空洞の場所が場所だから、あまり近くには作りたくはないな。せっかくお嬢の為に、此処を切り開いたんだ。此処で良いんじゃねぇか? なぁ、カールもそう思うだろ?」
どうやら私が来ると知って、慌てて此処を切り開いてくれたらしい。しかも着いたら着いたで、二人して気絶しているもんだから、更に慌てて切り開いたそうな。
うん。吃驚させてごめんね。そして、有り難う。
「おらも此処で良いと思うべ。それなりの広さになったし、ニョロン達が地中の改良もしてくれたし、余った土地に木々でも植えるべ」
成る程。じゃあ、此処かな? 土地が余ったら、チェリルローズの苗でも渡すか。確か桜は日本全国に有るんだよね? だったら此処でも育つよね? ちょっと暑いけど。
「じゃあ、此処に建てちゃうよ。みんな、一回シートから出て~。セバスはシートを片付けちゃって」
「了解しました、お嬢様」
私も皆と一緒に枯れ木の方に移動。だって、どれくらいの大きさか分かんないんだもん。そして、指示本の施設欄を開いてゲイル達に近寄る私。
「ゲイル、カール、この中だとどれが良い?」
「そうだな、俺はこういうのは分かんねぇからカールが選べ」
「おらが選ぶべか? なら、この『ウッディハウス』ってのはどうだ? 木の様な家って、意味だべ? 此処は多分森の様になるし、合ってるだべ」
種類が幾つか有るせいか、これには見本になるイラストが付いていないんだよねぇ。
しかし、ウッディか……エロく聴こえるのは、私の知識が汚れているせいかしら? いや、今はスラングは忘れよう。
「じゃあ、交換。『ウッディハウス』!」
更地の中央に向かって、指で指し示しながら宣言。
すると、空間そのものから、滲み出る様に別館が現れました。
「リア様ぁ。これはなんか、おらが思っていたのと違うべ」
「……うん。私もそう思うよ」
其処に現れたのは、屋根裏部屋を含めた五階建ての『木組みの家』。
敷地面積はほぼ本館並み。柵は無いけど、玄関側には3Mくらいの幅の石畳が、壁に沿うように通っています。これに合わせて、追加の道を作れってか?
木材の部分は濃いめの茶色。壁部分は若葉色。窓枠の白がポイントですか? で・も・ねぇ……。
「なんで、別館の方が本館よりデカイのよ~ッ! ってか、最初から『木組みの家』で表示してよぉ~ッ!」
「んだ! んだ! おらのイメージでは、ログハウスの様な小屋だったぺぇッ!」
私の雄叫びとカールの雄叫びが、其処ら中に響き渡りました。
周りの反応? 当然の様に引いてましたが、何か?




