大は小を兼ねるっていうけどさ……。
喉が渇いた私は給湯室に直行。
実は『室』と言っても扉が無いので、どちらかと言うと『エリア』かな?
オフィスに付いている細長い空間を想像して。
「魔導水道と魔導コンロが有るのは嬉しいな。これは食器の水切り? ガラスっぽいけど軽いね。ライトもオフィス系で細長いヤツだから、端まで明るくて良いね」
魔導具は高いので、ソレイユ神様に感謝しなきゃ。
反対側には棚が並んでおり、ガラス戸の棚の中には、ティーカップのセットやケーキ皿などがいくつか入っていた。
「こっちの普通の棚にはヤカンが入ってた。とりあえず軽く濯いでお湯を作ろう。……アレ?」
はい。見付けてしまいました。電気……もとい、『魔導湯沸かしポット』です。
確か平民なら、五年以上の生活費と同等の御値段。商人でも二年以上とか……。
資金があっても作り手が少ないので、予約しても数年待ちになるらしい。
「魔導技術師って、錬金術と鍛冶術それに細工技術をランク5以上。更に魔導調整がランク7くらい必要だったよね? 全カンストの私なら出来る?」
ポットの中を濯いで水を入れ、スイッチ(電気コードを着ける位置に有りました)を入れて他の場所の探索開始。
トイレと洗面所、他は空き部屋でした。
「まだ時間掛かると思うから、下の階を見てみようかな?」
「おやおや、随分賑やかに騒いでいたみたいだったけど、もう良いのかい?」
ニコニコと笑顔を浮かべながら、マゼンタ様がこちらの方を見ていた。
階段を降りながらも、真っ赤になっているのが判る。聞かれてた。恥ずかしい。
「はい。色々と規格外な物もあってびっくりしましたが、素晴らしいお家ですね」
小走りにマゼンタ様の絵の前に行き報告。……というか、感想?
まぁ、前世では2DKで二人暮らしだったし、伯爵の家は広かったけど魔導具は殆ど無かったしなぁ。
「でも一階は未だだろう? これから先、リアに必要なモノは『才能』や『天恵』を使った、スキルの実践経験値だ。いくら最初からレベルが高くても、使い慣れていないモノや正しい使い方を知らなければ己を滅ぼす。錬金術室はリアの再開発にも必ず役に立つだろうよ。
そうそう、食事も大切だよ。健康な身体作りに食事は欠かせない。食事する場所も大切さ。汚い部屋で食べても美味しくないからね」
マゼンタ様! ウインク似合い過ぎ!
パチリとウインクしながら、優しく御言葉を掛けてくれるマゼンタ様に萌えます。でも、私にそういう趣味は無いからね。純粋にファンになっただけだからね。
「それはそうと、手に持っているのはマジックバッグかい? 随分レア度が高そうだね」
「これは伯爵が時間停止型を用意してくれたので、自分で許容量無制限を付けてみました。そしたら伯爵が色々食料品を持たせてくれたので、食堂に置いておこうかと……」
「そうかい。良かったじゃないか。ここにはまだ動物は居ないからね。魚続きじゃ飽きるだろう? しかも沖の方まで行かないと居ないしね。船もないよ」
成る程。どこかで放し飼い出来そうな動物を手に入れないと駄目なのか……。
いや、だって、酪農経験ないし。豚や牛を適当に放せばそのうち数が増えるんじゃない?
『解体』スキルは有るんだから、なんとかなりそうな気もする。さっきの指示本に要相談ということで。
「とりあえず、食堂にバッグを置いて来ます。ついでに一階も色々見て来ます」
マゼンタ様に一声を掛け、私は一階の扉を開けた。
正面の廊下を進み、左手の扉を開けたら錬金術室だったようです。
でも、初めての家じゃ仕方ないよね? エントランスに案内板が有るわけじゃないんだし。と、開き直って探検です。
でも部屋の中には、空の本棚と変な機械と机だけ。普通は試験管とか釜とかが有るんじゃないの? それともこれから増えるのかな?
因みに、機械はコインランドリーに置いてあるでっかい乾燥機みたいなヤツです。
「食堂探すか……」
錬金術室を出て、目の前の扉はトイレだと確認してから曲がり角へ。
すぐ側の扉は脱衣場とお風呂。しかもデカイ。
その隣はリネン室。洗濯機と乾燥機が有りました。多分魔導具。
更に進むと倉庫らしき部屋に到着。ここには魔導具の冷蔵庫と冷凍庫のデカイやつがありました。
「此処って食料品倉庫? あっ! 奥に扉がある。キッチンかな? 開けてみよう」
お邪魔します。と言いながら、開けてみるとやっぱりキッチン。
でも、独り暮らしにこのキッチンは大きすぎない? 何でレストランの厨房くらいあるの?
「とりあえずここの冷蔵庫と冷凍庫に少しバッグの中身を入れて……と。袋自体は倉庫の棚で良いかな? あぁ、紅茶の壺は一個出して置いて、二階に上がる時に持って行こう」
倉庫とは別の扉を開けると食堂でした。
はい。そこまでは良いんですよ。でも何で十二人くらい余裕で座れそうなテーブルなの?
しかも二面がほぼガラス窓。勿論南面は外に出れます。カーテンはオレンジをベースに赤や黄色の花模様。因みにフリンジは青メタです。
「独りでここで食べるのって、ある意味修行? 絶対落ち着かない。でも、あの綺麗な部屋で食べるのもちょっとねぇ」
厨房とは別の扉から出ると、廊下の行き止まりだったみたい。
つまり私の部屋の真下が食堂という事。
残りの部屋はリビングらしき部屋と空き部屋だったので、私は紅茶の壺を持って二階に向かった。
スキルランクの最大は、ランク10です。
普通は幼い頃からスキル磨いて、五十代でランク6になったら周りから尊敬の眼差しをもらえる感じで考えています。(ゲームのメインキャラを除く)
魔導具はレシピを魔導具協会というギルド(別名 老人ギルド)で購入して作ります。
レシピが有れば、若干各種スキルのランクが低くても作れますが、大抵の技術者は王国や貴族又は大商人と専属契約をしているので、市場にはあまり出回りません。(しかも中古でもお高いお値段)