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自室は乙女部屋。書斎はオタク部屋。

「わ~! 天蓋てんがい付きベッドだぁ! シャンデリア三つもある。お部屋広~い! こっちにはソファセット。お洒落だよ~!」


 私は扉を開けた途端、テンションMAX。

 入り口で靴を脱ぎ捨て(だって、ふかふかのカーペットは汚せない。所詮小市民)、中央でくるくると回りながら部屋の中を見回す。

 窓が三面に付いている部屋の中は、灯りが要らないくらい明るい。しかも南面はベランダに出れる大きな窓だ。

 カーテンもシースルータイプに白糸の刺繍入り、さらに紫地に青と赤の薔薇模様の入った高級感てんこ盛り。厚手のカーテンの裾には銀糸で出来たフリンジが付いている。

 天蓋は頭部だけのヤツじゃなくて、ベッド全部に付いているタイプ。こっちは濃いめピンクとシースルーで、乙女感がり。こちらも厚手の方に金色のフリンジが付いてます。

 テレビでしか観たことのない世界がここにある!




「テーブルの上に有るのが例のヤツかな?」


 濃いめの赤茶色のソファの方に寄ってみたら、テーブルの上に赤と金でデザインされた本が一冊。黒色のテーブルだから目立つね。

 パラパラと捲ると『日本語』で色々書いてあるみたいだ。


「どうせならお茶でも飲みながら、ゆっくり読んでみたいな」



 ※ ※ ※



 本は嫌いじゃない。

 高校生時代に震災孤児になった私と二つ上の兄は、『家計に余裕が無い』状態におちいった。両親と妹がその時に亡くなったのだ。

 保険は降りたが、兄は大学を辞めた後に隣の県で就職をし、なるべくお金を使わない方針を取った。親戚一同も生活に苦しい状態だったから。

 私も隣の県で高校だけは卒業した。今でも兄には感謝している。

 その頃から、兄の彼女(今は奥さん)が、御下がりの服と一緒に、本やらゲーム機等を『お古』という名目で色々プレゼントしてくれた。


「お義姉さんオタクだったからラノベが多かったんだよね。お腹の子は大丈夫だったかな? ……よし! しんみりするのは終わり! お腹の子は大丈夫! 時間は有限なんだし、第二の人生をくれたソレイユ神様の為にも頑張ろう!」



 ※ ※ ※



 とりあえず今はお茶だ!

 部屋の入り口に投げっぱなしになっていた4つの鞄を中央に集め、私は座り込んで中身を次々と取り出した。

 鞄を空にした私は、底の布地の隅の方に小さなナイフを突き立て、底布を剥ぎ取る。

 二重底の中には、ラノベでお馴染みマジックバッグ。

 伯爵が用意してくれたヤツは時間停止のレア物。さらに私が属性賦与魔法で許容量無制限にしたら、アレもコレもと入れてくださいました。

 まぁ、行くところが無人島だから、心配してくれたんだろう。


「しかし、伯爵も婦人も出来た人だよねぇ。いくらお告げがあったとしても、普通はもっと取り乱すと思うんだけど……あっ、これはお肉の袋だ」


 伯爵が持たせてくれた袋は8種類。肉・魚・野菜・乳製品と玉子・紅茶や香辛料に小麦粉類。さらにリジェットの服に小物品。それに本の袋。

 マジックバッグは手を入れて、『目録リスト』の一覧をみるか、又は品名を言って思い浮かべるだけ。

 私は服と小物の二袋を置いて、部屋を出た。






「さてと、まずは隣の部屋を覗いてみよう」


 扉を開けたら書斎だった。

 向かって左右に本棚。中央左寄りに机がある。

 

「本の袋の中身はここに置けば良いかな?」


 机の後ろ。左側の本棚に近寄って気付いた。


「もしかしてこれは……やっぱり! スライド本棚だ!」


 そして見付けてしまった。

 そう、ラノベだ! 裏側の棚には文庫サイズだけではなく、お高い方のラノベもある。

 他にも料理の本や洋裁の本とかもあった。何故か物語制作のハウツー本とかも……。


「コレは同人誌?」


 お義姉さんに借りた様な薄い本を手に取ると、タイトルと作者名だけが記入されている。

 パラパラと捲りながら気が付いた。


「えぇ!? 私の読み掛けのネット小説!? えっ? 何で? 書籍化してないのに……」


 他の同人誌も出して見る。やはり生前に私が読んでいたネット小説のタイトルだ。

 

「嬉しいけど良いのかな?」


 悩みながらも色々見ていると、少し厚い同人誌に『ネット小説タイトル一覧表』と書かれている物を見付けた。

 表紙を捲ると、私宛ての前書きがある。


《これらはリアの世界で発表されている、ネット小説のタイトル一覧表だ。

 リアの読み掛けは、既に同人誌化して本棚に置いてある。勿論、地球でやったら法に触れる事は理解しているよ。でも、こちらの世界なら問題無い。更新された話が随時記載される様にした。

 でもリアがまだ見付けてないモノや新作もあるから、お試し読みが出来る様に、この一覧表を一緒に置いておくね。

 色々とリアが悩むといけないから、君の国の神様にお願いした。

 リアが読む度、お話を作った人達に、『運』又は『何かしらの才能』を少しだけ上げてもらうとね。『文才』にしようとしたら、地球の神様達に怒られたのでこれが精一杯だけど、これならリアは気兼ねしないで読めると思う。

 読みたいタイトルに念じれば、十話分が後ろのページに記載せれるから、たまに覗くと良いよ》


 神様ありがとう。 ……でもね。でも、


「こんな事に『力』使わないで~ッ!! 嬉しいけど……メチャ嬉しいけど。だから『力』尽きて眠る事になっちゃうのよ~!」





 思わず叫んだ私に罪はない……。


 


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