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昼休みに愚痴は聞きたくありません。

作者:ARIMA
『四ヶ月も我慢したんだから、これくらいの仕返しはさせて下さい』の黒崎視点。

『根回しは大切です』と『四ヶ月も我慢したんだから、これくらいの仕返しはさせて下さい』の後日談。

ざまあ要素はありません。

評価、ブックマークありがとうございます。
 また、飲み会か。

 職場を異動して4ヶ月。ここの仕事と人間関係にも慣れてきた。近々、花見兼歓迎会の飲み会がある。去年の飲み会のトラウマは癒えていない。でも、異動して初めての飲み会を欠席する選択肢はない。

「黒崎さん、飲み会の回覧。幹事が出欠は早目に知らせて欲しいって」

「はい。ありがとうございます」

 嫌だなー。欠席したいなー。また、利用されたらどうしよう。でも、社会人として我慢はしないと。葛藤すること暫し。欠席に○をしたい誘惑を振り切った。何とか理性が勝利をおさめ泣く泣く出席に○をする。回覧を次の人に回そうと名簿をチェックすると、後藤(ごとう) (あきら)だけしか残っていない。

 あの面倒臭い人か。

 私より二歳年上の先輩で、噂によると一度こっぴどく振られた彼女との復縁に成功したらしい。でも、昨年のハロウィンの頃にまたまた振られてしまって、復縁したくても彼女に徹底的に避けられているようだ。

 何故、私がこんな個人情報を知っているか? それは、本人が昨年の忘年会でお酒が入った途端に愚痴りまくり、あっという間に広がって課内で有名な話になってしまった。

 酒の魔力は恐るべし。私も気を引き締める。二度と同僚の男性に送って貰う状況は作らない。グッと握り拳を作って固く決意する。

 今は昼休みの気の抜けた時間帯。後藤に捕まらないように、彼の自席を伺う。いないと助かるな。それなら、回覧を机の上に置いて去ればいい。捕まると振られた彼女の愚痴が始まるから厄介だ。彼が回覧の最後になった理由がそれだ。

 パーティションの影からソッと様子を見ると、後藤はいなかった。ラッキーである。本人が戻って来ないうちに、回覧を置いて去ろうとしたら、

「あれ、黒崎さん。どうしたの?」

「飲み会の回覧を置いて行きますね」  

 げっ! 何で戻って来るの? タイミングが悪すぎる。ここは一刻も早く退散したい。

「黒崎さん女性としての意見をくれよ。俺の別れた彼女なんだけどさー。前に復縁を橋渡ししてくれた先輩に、もう一度お願いしているんだけど、冷たいんだ」

 イヤー。逃走失敗した。下手をしたら、昼休みが終了するまで付き合わされる。既に後藤は愚痴の世界に突入し、周囲に助けを求めれば、巻き込まれるのが嫌なのか皆さん視線を合わせてくれない。

 愚痴から逃れたくて、後藤の机の上を何気なく見れば、有名なゲームのクリアファイルが置いてあった。

「これ、『めがハー』ですね」

「黒崎さん知っているの?」

『女神様をハーレムに迎えてウハウハしよう』略して『めがハー』。古今東西あらゆる女神様をハーレムに迎えてやりこむ育成シミュレーションゲームだ。イラストが綺麗で、有名な漫画家もデザインを担当している。

 ただ、女神様の衣装の露出度が高い。胸と尻が大きいのも特徴。たまに、まな板みたいな胸の女神様もいる。グラマーな女神様から、幼女な女神様まで何でも有りだった。

「一昨年なんですけど、大学生の弟がこのゲームに依存しちゃいまして、単位が危なかったんです。両親と兄と私で説教したんですけど、このゲームは中毒性が高いみたいで参りました」

 黒崎家の経済状況で、留年なんか許されない。それでも、奨学金を利用しなくて済んだことを両親に感謝したい。

「そりゃ、そうだよ。『めがハー』は最高のゲームさ! 無課金でも楽しめるのが『めがハー』が神ゲーと言われる所以だよ! 一昨年はリリースされたばかりで彼女そっちのけで遊んだなー」

「はい?」

「イラストが可愛くて綺麗だよね。俺の押しメンはフローラだよ。去年はフローラの限定イラストをGETするためにやりこんだなー。普段は仕事だし、無課金で楽しんでいるから時間をかけるしかなくて、彼女と過ごす時間すら惜しかった。彼女も癒しだけどフローラにも癒されたよ」

 後藤は『めがハー』のプレイヤーだったのか。弟の依存性を何とかしたくて、スマホで調べたっけ。そしたら、ゲームのイベントのために会社を休む人。ゲームに依存し過ぎて、妻子を放置したせいで離婚問題に発展した人。友達がゲームのことしか頭に無くて、一緒に遊んでいるのにスマホを弄っていて絶交した話。あれ? まさか?

『めがハー』の魅力を後藤は目をキラキラさせながら語る。

「ひょっとして、後藤さんが彼女に振られた本当の理由は、『めがハー』に依存し過ぎて、愛想を尽かされたからじゃ……」

 後藤の顔からキラキラが消えた。さっきまで、饒舌に『めがハー』の魅力を語っていたのに、ゴニョゴニョと呟いてから、肩をガックリと落とす。

 図星だったんだ。

 これ以上は、触れない方がいいかも。私はソッと後藤の側から離れる。

 そして、それ以降後藤が彼女の愚痴をこぼすことは無かった。

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