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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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みずのにおい

部屋に入った西原は、他の者たちが意外にもすでに寝ている事に驚いた。だが、今日は朝から講義を受けたりして皆、疲れているのだろう。西原も何だか今日は疲れていた。寝ている者たちを踏まないように気を付け、空いている布団にたどり着くと、さっと室内を見回した。ビールを片手に部屋に行った高石もすでに寝ているのか、西原が隣に来たというのに、もぞりとも動かない。


皆、よほど疲れてるんだなと思った西原は、そっと布団に潜り込んだ。風呂から上がって間がないからか、ひんやりとした布団が少し心地よかった。講義を受けたり、運転したりジョギングしたりで疲れていたのか、西原もいつの間にか、うとうととしてきた。そして、あっという間に眠りについた。


どのくらい眠ったのだろうか、ぴちゃんっ、ぴちゃんっと水の落ちる音が聞こえて西原は目を覚ました。キッチンの水道からでも水が、垂れているのかと思った。だが、それを止めに行くのは面倒くさい。多少、耳障りではあるが気にしなければまたすぐにでも眠りにつけそうだった。寝返りを打った西原は、布団を頭までかぶるとまたすぐに眠りについた。


眠っているはずだが、ぴちゃんっ、ぴちゃんっと水の音が頭から離れていない気がしていた。夢なのか現実なのか、どっち付かずだった。ただ、ふわふわと心地よい感じからして、夢なのだと西原は思っていた。だが、夢だと思えるという事は、もしかしたら起きているのかもしれない。ただ、水の音とふわふわとした心地よさに包まれていた。


心地よさに身を任せていると、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえてくる。聞きなれた声。自分を駿樹と下の名前で呼ぶ女の声は、つい4ヶ月ほど前まで毎日のように一緒に過ごしていた彼女の声だ。何で、元カノの声が聞こえるのかは分からないが、優しげな声で何度も自分を呼んでいる。西原は、当たり前のようにそちらに行きたくなった。だが、そうしようとすると、また自分を呼ぶ声が聞こえてきた。先輩、と必死さを感じさせる声だった。少し低いが、耳に心地よい声だった。

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