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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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みずのにおい

何故、むつの顔が浮かんだのかと答えの見出だせないまま、西原は軽快に走っていく。砂利道から獣道のような、草が踏まれて出来た道に変わると、これはこれで足を取られて滑りそうだった。


どのくらい走ったのだろうか、開けた場所に出ると西原は足を止めた。息が上がっているし、身体もかなり暖まっている。ビールを呑んでいるせいもあってか、少しふらつく感じがあった。


西原は懐中電灯で、ゆっくりと辺りを見回した。ここなんだなと分かると、ゆっくり歩いて、呼吸を整えた。携帯を取り出して時間を見ると、ここまで走ってきて1時間ちょっとはかかっているようだ。明日、歩くとなると2時間はかかる事になりそうだ。少し遠すぎるかとも思うが、森の中を歩くだけでも心地はよいはず。それに昼間なら、夜とは違って色々な物も見れるだろう。


ゆっくり歩き回り、そろそろ戻ろうかと西原は、来た道をと思った。だが、他にも道がある事に気付くと、そっちに行ってみたくなった。


地図は持っているし、携帯も持っている。何かあれば連絡すれば良いかと、安易に思った西原は、来た道ではなく新たに見付けた道に向かい始めた。やはり山の中だからか、舗装はされていないし細く獣道のようになっている。


足場も視界も悪い中で下り坂を、走っていくのはと思い、西原はゆっくりと歩いていく。道がある程度安定してから、また走り出せばそんなに遅くはならないだろう。遅くなれば高石が心配して、連絡をしてくるような気がして、西原は走りはしなかったが、足早に歩いていく。


来た道とは違うからか、懐中電灯であちこちを照らしていると、水の流れる音が聞こえてきた。川でもあるのかと足を止めた西原は、ぞわぞわっと寒気を感じた。腕には鳥肌が立っている。酒を呑んでからのジョギングで、体調を崩しかけたとかではない。この寒気は、恐怖とかと似ている。


山の中で何か動物でも近くに居るのかと、西原は慎重に懐中電灯を動かした。だが、ライトで照らせる範囲内に、そういった物はない。

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