表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
990/1310

みずのにおい

缶ビールを呑みながらも、むつが手際よく調理を進めたおかけで、カレーも米もサラダも美味しそうに出来ている。1回生の残りの2人は、すっかり酔っ払っていて使い物にならない。それでも、むつは何の文句も言わなかった。それどころか、甲斐甲斐しく水を持っていってやったりしていた。食事も後回しにして動いているむつを、ぼんやりと見ていた。


「西原はむつちゃんにご執心?」


「ん?あぁ…なんつーか世話好きな子だなって。周りもよく見てるし、良い子だよな」


「確かに。何だろ…尽くすタイプの子?」


「さぁ?そこまでは分かんないけど」


「あぁも色々してくれると、何か悪い気がしてくる。それに…何か、何だろう…」


「何か引っ掛かる感じはするな」


「そうだな…にしても、市販のルーって作る人によってこんなに味が違うんだって感動するよ」


「確かに。うまい…米もちゃんと炊けてるし…今までのやつらの中で1番上手く飯盒使えてるな」


他のメンバーがおかわりをと言うと、むつは返事をして米をよそってカレーをかけている。それを見ていた西原は、何となくむっとした気分になった。


「むつちゃん、ちょっとこっち来て」


「…はい?どうかしましたか?」


「そこ座れ」


西原は自分の横の席を、とんとんっと指で叩いた。命令口調で言われ、嫌そうな顔をしたむつだったが、先輩の言う事に逆らう気はないようで大人しく座った。むつが座ると西原は立ち上がり、どこかに行って、すぐに戻ってきた。


「…他のやつらの事はもういいから。自分でやらせろ。むつちゃんも皆と飯食わなきゃ一緒に来てる意味がないだろ?」


テーブルに皿を置かれて、むつは西原の方を見た。高石も、そうだねと言っている。


「…はい、ありがとうございます」


むつがはにかんだように笑みを浮かべると、西原は頷いた。頂きます、と言ってスプーンを持ったむつを見て西原はよくやく座った。


「むつちゃん、カレー凄く美味しいよ。料理上手なんだね」


高石が誉めると、むつは首を傾げた。


「そんな事は…市販のルーのおかげですよ」


「そんな事ないだろ?飯盒も小学生以来とか言ってたけど、上手く米炊けてるし。明日の飯も期待出来るってだけで、来た意味がある」


「そんな大袈裟な…それに、軽くプレッシャーも混ぜてきてますね」


「まぁな。だって、今までもキャンプしてきたけど、1番うまい飯だからな。それは高石も言ってたぞ」


「うんうん。1番美味しい」


「…ありがとうございます」


消え入りそうな声で言って、むつはカレーを口に運ぶと、もごもごと噛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ