みずのにおい
缶ビールやチューハイなど重たい物は颯介と西原に持たせて、むつと祐斗はスナック菓子やつまみなど軽い物を持って、山上は手ぶらで歩いている。
「…これだけ買ったら事務所で呑んでるだけで終わりそうですね」
「だね。ま、楽しく出来たらいいでしょ。それに事務所でって何か宅呑みみたいでいいよね」
事務所に戻ると、むつはソファーの前にあるテーブルに菓子や乾き物といった物を紙皿に乗せていく。山上が灰皿を持ってきて、颯介がビールを全員に渡した。
「じゃあ…」
山上が最初にぷしゅっとプルタブを開けると、4人も開けた。そして、缶ビールを持ち上げた。
「今年もお疲れ様でした」
「お疲れ様でーす」
がちっと缶を軽くぶつけた。むつは丁寧に颯介、祐斗、西原と個々に乾杯をした。それも相手の缶よりも、少し下の位置で当てている。むつのそんな何気ない所作を見ながら、西原は冷えた缶に口をつけた。仕事終わりの昼間に呑むビールは、なかなかの贅沢品と言えるだろう。
「はぁーっ‼美味しいっ」
むつは紙にマヨネーズと一味を乗せて、スルメでくるくるとかき混ぜている。一味マヨを作ると、それをつけたスルメを口に入れて、もごもごと噛んでいる。
「昼間っから贅沢だわ」
「本当にな。俺が来て良かったと思う」
「そうね」




