みずのにおい
「終わったよーっ」
「俺も終わりました」
「俺も」
3人が机の掃除を終えて、床も綺麗にすると、山上はうんと頷いた。
「うん、今年も1年間お疲れ様でした。一服したら忘年会に行くか」
「やったーっ‼」
むつと祐斗ははしゃいでいるが、山上はコーヒーいれてやると言い、キッチンに向かいながは、ちらっと颯介の方を見た。颯介は頷いて、携帯をいじりはじめた。むつは祐斗と共に帰る支度をしてから、西原の居るソファーにやってきて疲れたーと言ってぼすっと座った。
「お疲れ様」
「ありがと。先輩も手伝ってくれてありがと」
「そんなに役に立ってないけどな。さて、これ倉庫のやつらにあげてくれな。俺はそろそろおいとまする」
「何だ?帰るのか?ついでだから、お前も忘年会参加していけ。会費取るけどな」
「…え?」
「え?じゃねぇよ、何で俺がお前に呑ませてやらなきゃなんねぇんだよ」
「いや、そうじゃなくて…忘年会に部外者が参加しても良いんですか?」
「良いじゃないですか。部外者って言っても、一部関係者みたいなものですよ」
颯介が西原の隣に座って、参加をすすめると西原は迷うようにむつの方を見た。
「社長と颯介さんが言うならいいと思うよ。あたしと祐斗も賛成よ、ね?」
「ですね」
「なら…お言葉に甘えて参加させて貰います」
「よし、問題はどこで呑むかだな…まだ早い時間すぎて店は…」
「開いてる所はなさそうです。あっても立ち呑みくらいなんで…」
颯介は操作していた携帯を山上に渡した。山上は、仕方ないかと頷いていた。
「ここでやるぞ」
「軽く呑んで片付けてたら、大掃除のゴミと一緒に出せますからね」
「ほら、買い出し行くぞ」
「うんっ」
むつと祐斗は嬉しそうに、いそいそと上着を着るとドアの方に向かっていき、社長早くーと山上を呼んでいる。
「子供たちのお財布役ですよね」
「お財布って言うな」
だが、山上は無邪気な2人を見てにやにやと笑みを浮かべていた。
「まんざらでもなさそうですね」
「社長も甘いですからね」




