みずのにおい
「ねぇ?終わったよー出来た?」
雑巾を片手にむつが顔を出すと、山上がもうちょいだと伝えた。祐斗はゴミの片付けでもしているのか、むつだけが倉庫に入ってきて、棚を作っている颯介と西原を眺めている。
「…どうした?」
「んー?男の人だなって思って」
「今更か?前から、湯野ちゃんも西原も男だっただろ?」
「それは知ってる。でも、こういうのてきぱき作るの見ると、へぇーって思うの」
「お前この前、晃にも仕事モードのお兄ちゃんカッコいいとか言ってたな。最近はやけに素直に言うな」
「かなぁ?あたしには出来ない事が皆は出来るから…凄いなって思うの。昨日もさ、祐斗が意外と行動派になってて、びっくりしちゃった。成長なのかな…」
「…何だよ、しんみりして。キモいぞ」
「うるさいわね…それより、クリアケースどこ?箱が無い子たちをしまってあげたいんだけど」
「あ、あぁ。すっかり忘れてた」
山上が大きな段ボール箱から、すでに箱のようになっているクリアケースを取り出して、むつに渡した。
「あ、これなら人形系入れたら見映えして良いかも。入れてあげてくるね」
大小さまざまな、クリアケースを抱えてむつは倉庫から出ていくと、祐斗に声を掛けている。
「ほら、お前がミスるから終わりが遅くなるだろうが‼飯代分は、きりきり働け‼」
「はいっ‼」
「そんな西原さん…頑張らなくてもいいですよ?そもそも、社長は見てるだけで何にもしてないんですから」
「いえ、でも…手伝うって申し出てますから。足を引っ張るような事して、すみません」
「大丈夫ですよ」
颯介はそう言って出来上がった棚が、ぐらつかないかを確認するように手で押したりしている。




