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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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みずのにおい

百鬼夜行に紛れて酒を貰った翌日、携帯のアラームでようやく起きた女、玉奥むつは不機嫌そうな顔でソファーの前に座り、椅子の部分に頭を乗せていた。


「…寝不足だわ」


「俺も…」


ソファーで寝ていた男は毛布にくるまったまま、起き上がるのも億劫な様子で呟いた。昨夜、むつの部屋に泊まった宮前冬四郎は、はぁぁと深々と溜め息を吐いた。昨日、家の物、むつが作った料理がなくなるという事があり、それを気味悪く思ったむつに泊まってくれと頼まれていたのだ。だが、その原因ははっきりしたわけで冬四郎の泊まる必要もなかったのだが、むつにそれでも泊まってと言われ、泊まったのだった。


酒を貰い、犬神である京井、片車輪と共に戻ってきた頃には朝方が近い時間だった。むつが勤める会社、よろず屋のアルバイトである谷代祐斗も百鬼夜行に巻き込まれており、それを自宅に送ってからようやく、むつと冬四郎も帰ってきたのだった。


「シャワー浴びて来なよ?その間に、簡単にご飯用意するから…ほら‼遅刻するよ‼」


貰った酒を飲んだわけでもなく、すぐに2人は就寝したのだが、やはり寝不足は寝不足。冬四郎はむつに毛布を引き剥がされ、うぅっと呻いている。そんな姿を見た事がなかったむつは、ぷっと吹き出して笑った。血の繋がりはなくとも2人は、歳の離れた兄弟。10歳近くも歳上の兄は、いつもしゃんとしており頼りになる。そんな兄の意外な姿に、むつはくすくすと笑っている。


「…朝は弱いんだ」


「知らなかった。寝起きいいイメージ」


「それは早めに起きてるから…俺が動ける頃に、むつも起きてきてたからな」


「あ、だから寝るの早いのね」


そう納得したむつは、剥ぎ取った毛布をもう1度、冬四郎にかけてやりキッチンに向かっていった。かちゃかちゃとむつが動いているのを横目に、冬四郎は大きな欠伸をしてどうにか身体を起こした。冬四郎が何度も欠伸を繰り返すのを見ながら、むつは急須に茶葉をいれると濃い目に茶をいれて冬四郎の前に置いた。


「…苦い」


「目が覚めるでしょ?」


「確かにな…タオル借りるぞ?」


「はーい、勝手に出して使って。場所分かるでしょ?ゆっくり熱いシャワー浴びて、いつものお兄ちゃんになって来てね」


「…はいはい」

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