95/1310
ひとりきり
避ける事もままならず、押し倒される形になった祐斗は、背中を打った痛みで顔をしかめながら吉岡を見上げた。
50過ぎのおっさんに押し倒されて、喜べるはずもない。近付いてくる吉岡の顔を両手で押し戻そうとする。
「なっ、なんなんだよ‼おいっ‼だーっ‼おい触んなおっさん‼」
吉岡は祐斗が足をバタバタさせ、喚いているのにも構わずにズボンに手をかけようとしていた。
「えっ、ちょっ‼まじで‼まじで‼」
何をされるのかと焦った祐斗は、必死の思いで、片手で吉岡の顔を鷲掴みにし、もう片手で吉岡の手を掴んだ。
だが人間ではないせいなのか、祐斗が非力なのか吉岡の手を押さえきる事は出来ない。
「くっそっ‼こんな…」
こんな状況だというのに、これを話したら確実によろず屋の面々にしばらく笑い物にされるのが想像出来た。




