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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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むかっていく

「…はっ…見失った…」


むつはゆっくりと歩調を緩めた。はぁはぁと息をつきながら、それでも辺りをきょろきょろと見回している。


「何を見失ったんだ?」


「…ふわって…してっ…そんなの」


息をつきながら、むつが簡潔に説明をしたが冬四郎にも西原にもさっぱり分からない。


「谷代君が巻き込まれたって言ってた何があったんだ?盗難の件と関係あるとか言ってたな」


まだ息が整わないのか、むつは頷くだけで、片手を上げて待ったのポーズをしてみせた。大きく深呼吸をしたむつは、ふっと息を吐いて冬四郎の方を向いた。


「警察が来た後にも倉庫から物が消えたでしょ?その時に、ふわっとした物を視たのよ。何かは分からないけど…で、それがさっき視えたから追い掛けてきたの。祐斗もね、追い掛けたみたいなんだけど…そしたら、変な所に迷い混んじゃったみたいで…ここみたいに」


「ここ?」


警察署を出て走ってきたが、そんなに遠くまでは来ていないし、特に変わった場所ではない。だが、むつはこの場を変な所だと言っている。


「よぅく見て…人も車もない。建物はあるけど…何の音もない静寂…おかしいと思わない?」


冬四郎と西原は、むつに言われたように辺りを見回した。西原にとっては、見慣れた場所ではあるが、むつの言う通りだった。人の声車の走る音さえも、聞こえてこない。そして、それらの景色はだんだんと暗くなっていき、真っ暗になり何も見えなくなった。


「しろにぃ携帯のライト」


「あぁ」


携帯を取り出してライトを点けた冬四郎は、その光で足元や周囲を照らしてみたが、光の届く範囲には何もない。真っ暗なだけで、微かな光さえもない。


「…祐斗もここに迷い混んでるはず。携帯、通話にしてたはずなんだけど…いつの間にか切れちゃってるわ」


むつは自分の携帯を見て、はぁと溜め息を漏らした。ここに祐斗も居るはずだが、居たとしても見付け出す事が出来るかどうかは、むつにも分からない。


「祐斗君に電話してみたらどうだ?」


「今どこー?って?こんな所じゃ待ち合わせしにくいわね」


それでもむつは、祐斗の携帯に電話をかけた。コール音がするという事は、電波の届く範囲で電源も入っているという事だ。だが、祐斗はなかなか出ない。そのうちに留守番電話に切り替わると、むつは溜め息をついて首を振った。

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