むかっていく
「…?」
「何か変じゃないですか?後ろ姿が…」
「あぁ、むつの後ろ姿がかすんでいってる気がするけど…気のせいじゃないみたいだな」
「このままだと見失いかねませんね」
西原の言う通りで、冬四郎は舌打ちを鳴らした。名前を叫んだ所で、むつが立ち止まる事はないと分かっている冬四郎と西原は、むつを見失わないようにするしか出来ない。
まだ目視出来る距離にいるむつの背中が、ぐにゃっと歪んだように見えた。あっと冬四郎が声を上げて、届きもしないのは分かっていても、むつの背中に向かって手を伸ばした。それを見て西原は少し顔を歪めた。そうしたいのは、自分も一緒だったが出来なかった。だからか、その分むつに近付けるように大きく1歩を踏み出した。
走る速度はむつよりも、冬四郎と西原の方が早く後もう少しの所で追い付ける。足音が近付いてくると、むつは何かと振り返った。意外にもすぐ近くに、冬四郎と西原が来ていてうわっと驚いたような声を上げた。
「追い付けましたね」
「…何とかな」
「な、何で来ちゃったのよ…」
むつは冬四郎はまだしも、何故か西原までもが一緒に来ている事に驚きを隠せないでいる。
「お前が何も言わずに飛び出すから…西原君は何でか分からないけどな」
「え、俺は宮前さんが盗難の件でって言うから、それなら補佐に回ろうと…何で、むつが居るのかも気になったからな」
「あ、っそ…」
むつはすでに息が上がっていて、一言の返事をするのがやっとだった。だが冬四郎と西原はまだまだ余裕そうだ。体力に差を感じたむつは、悔しそうに歯をくいしばっていた。




