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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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むかっていく

携帯を握り締めたまま、むつはかつかつと冬四郎が所に戻った。談笑をしていたのか、冬四郎はむつの険しい表情に気付くと、笑みをさっと消した。


「…仕事か?」


「祐斗が何かに巻き込まれたの…たぶん、盗難の件に関係してる。でも、どうしたら…」


どうしたらいいか分からない、とむつは冬四郎にすがるような目を向けたが、その視線は冬四郎から外れた。かたんっと小さな音がして、ふわっふわっと何かが出てきた。はっとしたようにむつはそれを、じっと見つめていた。出てきた先は、テーブルに置いておいた弁当箱の入ってる袋からだ。むつは袋から弁当箱を取り出して蓋を開けると、あっと声を上げた。


「ない…」


みっちりと詰め込んできたいなり寿司も、甘く作った卵焼きも作り直した切り干し大根のはりはり漬けも、何もかもがない。


「…どういう事だ?」


冬四郎も弁当箱を覗き込んで、何でないんだと不思議そうな顔をしている。むつは、ソファーに置いてあった布に包んである日本刀を掴み、ふわっとした物が飛んでいくのを目で追いながら、急に走り出した。


「おいっ‼むつっ‼」


「…追い掛ける‼祐斗の所に行けるかも‼」


「なっ…何を…っ、すみません‼妹を追い掛けますので…お茶ご馳走さまです」


冬四郎もむつを追って、ばたばたと部屋から出て廊下に出た。むつはすでに階段を下りているようで、だだだだっと足音が聞こえてきている。


「祐斗っ‼ふわってしたの見付けた‼追い掛けるから…そしたら、合流出来るかも‼」


『えっ!?でも、そしたらむつさん…こっち来ちゃったら…で、ええっ!?ど、どうするんですか!?』


「会えてから考える‼」


むつは叫ぶように言い、階段から飛び降りた。だんっと足の裏が、じんっとするように痛んだが、今はそれを気にしている場合じゃない。むつが、むつにしか視えない物を追って、走っているとタイミングよく、玄関のドアが開いて男たちが談笑しながら入ってきた。男たちは、むつが走ってくるのに気付くと、驚いたように端に避けた。


「…ん?あれ?」


むつが走り抜けると、長い髪の毛がなびくと同時に甘い香りがして、眼鏡をかけていた男が振り返った。


「どうした、西原?」


「いや、今の…むつ?」


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