94/1310
ひとりきり
祐斗がじっと、ダブっている方の吉岡を見ていると、それはだんだんとはっきりと視えるようになってきた。
二人の吉岡は別々に何かを訴えるように、ぶつぶつと言っているが何を言ってるのかは、分からない。だが、確実に何故か吉岡の霊が二体になった事だけは分かった。
祐斗はひきつるような笑みを浮かべた。もし、このまま視ていたら、また増えるのかもしれないと微かに思った。だが、そんな風に分身が増えた所でどうする事も出来ない。
近付いてこようとは、しなくなった吉岡に安心し、しばらく観察を続けるしかなさそうだ。
祐斗は、ズボンのポケットに親指をかけるようにして、腰に手をあてた。
今まで動かなかった祐斗の、ちょっとした動きに反応したのか、吉岡の目がぎょろっと動いた。そして、祐斗の親指のあたりをじっと見ている。
食い入るように見ていたかと思うと、祐斗をここまで連れてきた方の吉岡が、急に走り込んできた。
「えっ‼」




