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むかっていく
むつは助手席におさまって、弁当を膝に乗せて何となく楽しそうな様子だった。冬四郎もそんなむつを見て、どことなく面白そうにしていた。
「…所で西原君には連絡してあるのか?」
「してないよ?サプライズしたいから」
「居なかったらどうするんだよ…仕事で、席空ける事も多いんだからな」
「居なかったら、誰かに預けて置いてく。しろにぃ居たら、怪しまれる事もないでしょ?」
「まぁそりゃあな…誰かしら俺を知ってる人も居るだろうからな」
冬四郎はそう言って、西原が勤務している署の駐車場に車を止めた。夏以来、きちんと来てなかったからか、むつは少し緊張していた。
「…どうした?」
「悪い事してないし、仕事でもないのに来るのって何かね…緊張する」
「兄貴の所には行ったんだろ?」
「それは、お兄ちゃんが居るの知ってるから大丈夫だったけど…先輩は身内じゃないもん」
「なっても嫌だな」
ぼそっと冬四郎が言ったが、むつには聞こえていなかったようだ。




