むかっていく
「よしっ、出来た。完璧っ‼ちょっと待ってて、化粧する。んで、髪の毛直すから」
「…まだかかるのか」
冬四郎は自分で皿を洗って、コーヒーをいれ直すとタバコを吸い始めた。むつは弁当の入った手提げバックをテーブルに置いて、私室に入っていくと鏡を前にして目の下の隈を気にしている。冬四郎はそれをちらっと見ると、ふうと息をついた。
「すぐだから、すぐっ‼」
「…ゆっくりでいい。待ってるから」
「ゆっくりじゃ待ってるの嫌んなるくせに」
むつはすぐに髪の毛をほどいて、櫛を通した。長いからか、毛先までとくのに大変そうだった。だが、それを終えると薄手のパーカーを着て、ジャケットを羽織った。
「眼鏡どれにしよ」
「…伊達だろ?かけてくのか?」
「うん…隈が気になるのと、何かあたし目の色、黒くないし…ちょっと気になる」
「そうだな。少し緑っぽい感じするよな。だから、昔はハーフかクォーターかと思ったくらいだしな」
「たぶん、純粋な日本人だと思うけど」
むつは普段から使っている黒ぶちの眼鏡をかけて、髪の毛はしばったりもせずに背中に流している。
「髪の毛、そのまんまか?珍しいな」
「うん。たまには…イメチェン?変?」
「変じゃないぞ」
「そう?ありがと。なら、これで…よしっ、準備出来たよ。ね、あんまり待たせてないでしょ?」
「そうだな。早かったな」
むつはポケットに財布と携帯を入れて、西原に持っていく弁当としっかりと布に包んだ日本刀を持った。




