むかっていく
一通り、料理を終えたむつはしっかりと日本刀を抱いて、ソファーでうとうととしていた。朝が早かったからと運転疲れとで、眠くなってきたのだ。むつはかくんっと頭が揺れるたびに、眠そうに目を擦ってた。そして、テーブルの上の携帯を確認して、もぞっと横になって目を閉じた。まだ連絡もないし、少しくらいなら眠っても大丈夫だろうと思ったのだ。だが、そう思っていた矢先、ぴんぽーんっとインターフォンが鳴った。むつは、ゆっくり起き上がって誰かを確認して出た。オートロックを開けると、しばらくしてドアがノックされた。
「…悪い、寝起きっぽいな」
むつがドアが開けると、がたいの良い男が立っていた。むつはこくっと頷いたが、寝ていたわけでもなく首を傾げた。
「あたしこそ、ごめんね。呼び出して…どうぞ」
「お邪魔します」
ついさっき事務所に来ていた男、冬四郎は靴を脱いでむつが出したスリッパに足を入れた。
「…コーヒーでいい?」
「あ、なんでもいいぞ。ってか、そんなに気遣わなくていいからな。何か疲れた顔してるし」
「ちょっと疲れたかも」
むつはそれでも冬四郎にとコーヒーをいれた。灰皿もテーブルに置くと、むつもソファーに座った。
「で、どうした?話があるって事務所でも言ってたけど…何かあったのか?」
「とりあえず、あのね…朝あたし早起きしたの」
冬四郎がコーヒーに口をつけたのを見てから、むつは話を始めた。だが、早起きをしたという報告から始まり、冬四郎は少し驚いたような顔をした。むつがそんな話し方をするとは、思っても居なかったのだろう。
「でね、ひじきとおあげを煮て切り干し大根のはりはり漬けを作ったの。さっき1回戻ってきたら、おあげは残ってたけど、あとのは綺麗さっぱり無くなってたの」
「…はぁ…?」
むつが話をするも、冬四郎にはいまいち状況が飲み込めず、だから何だという顔をしている。




