むかっていく
冬四郎が出ていくと、むつと祐斗は何故、倉庫から物がなくなっているかに気付いたのかを話した。
「ふぅん…むつもよくすぐに確認したな」
山上に誉められるように言われてむつと祐斗は、揃って嬉しそうな表情を浮かべた。だが、むつの表情はすぐに曇った。
「…人の仕業じゃないとなれば、骨董屋も質屋も情報流しといて貰っても無駄だな。大掃除は中断して、探すしかないな」
「どうやって?うち、物探しが出来るような人ってばいないわよ?」
「まだ残ってるやつがあるだろ?囮にして」
「えー?そんな簡単に来るかしら?」
山上の安直な案にむつは、不満そうに唇を撫でて尖らせている。そして、机の方に戻ると置いてあったタバコに手を伸ばした。灰皿はすぐ横の机にある。キッチンを掃除している山上が、邪魔になるからとこっちに置いていたのだ。
「来ないと思いますよ?」
祐斗はからからと窓を開けると、むつがありがとうと言った。山上もタバコを吸い始め、無理かなと呟いている。颯介と祐斗は、揃って頷いている。
「…さて、どうしたもんかねぇ」
むつは煙が充満しないようにと、灰皿を持って窓際に行き、外に向かって煙を吐き出している。
「盗むって事は、何だろうね。あたしらならさ、盗んでお金にするか…自分の利益になるようにしたいけど。妖が物を盗む?どうするのかしら」
「京井さんみたいに人間社会に出てるようなのなら、金目的とか人間っぽい事が目当てってのも有り得そうだけどな」
「そうね。でも、ぶっちゃけ…」
「うちにあったもに高値がつくとは思えねぇよなぁ…まぁ良い物もあっただろうけどよ」
「そうなんだよね。曰く付きってイコール高価ってわけじゃないものね」
むつと山上は、ふーっと煙を外に向かって吐き出しながら、どうしたものかと考えている。




