むかっていく
祐斗は分かりやすいように、先程とは付箋の色を変えて貼ってくれていた。むつはページをめくって見ながら、指先で唇を撫でている。
「…むつ、終わったぞ」
「ありがとう。何かあった?」
「いや、何もないな。せいぜい、彼女の写真を持ち歩いてるのが居たくらいだな」
「…そう。理由も説明せず、ボディチェックを行った事、大変申し訳ありません。実は、先程まであった物がまた無くなっているんです。ですので…万が一にも持ち出された方が居るのではと思いまして」
「…この短時間でか?無くなった?」
「うん。祐斗とチェックしてきた…勿論、あたしらも持ち出してないよ?ボディチェックしてくれて構わないし」
むつはファイルを山上に差し出すと、ボディチェックをするかと両手を上げて見せた。だが、むつと祐斗が本当に怪異の起きる物をわざわざ、持ち出す意味も理由もない事を知っているだけに山上は、ゆるゆると首を振った。
「…まだ減る可能性あるな」
「ある。とにかく、早めに物を回収しないと…しろーちゃん、手配してくれる?うちにあるやつだから、そこまでやばくはないけど、そこそこやばい」
「そこそこやばいやつ、な…分かった」
山上からファイルを受け取り、冬四郎は新たに無くなった物をチェックさせるとすぐに警官たちに指示を出した。冬四郎の指示で、ばたばたと警官たちが出ていくと冬四郎は、ぱらぱらとページをめくって物をしっかりと見ていく。
「…年末に嫌な事になったな」
「うん。大掃除どころじゃないわよ」
「むつは盗みそうなやつに心当たりは?」
「ない。でも…こんだけ人が居て、煙のように物がなくなるって事は」
「人じゃないかもな」
冬四郎が言うと、むつは頷いた。




