むかっていく
置物を拭いていたむつは、雑巾を片手に少し離れた所から、それらを眺めた。水晶や天使の形をしたオブジェ。兜から日本人形と多種多様に、所狭しと並べられている。どうにかして、整頓してあげたいものだが、これ以上置ける棚がない。箱に入っている物は、大きな物から順番に積み上げてあるが、いつからあるのか、すでに定かではない。
「開けるか…」
箱を見ていると中身が気になる。むつは雑巾を片手に、1番上の箱を下ろして中身を確かめ始める事にした。ほっておいても良いのだろうが、この機会に何が保管されているか把握しておいた方が良いとも思ったのだ。
むつは埃っぽい箱を雑巾で拭ってから開けると、中身は入っていなかった。
「…あれ?何でだろ…」
空箱をわざわざ取っておくような事をする人物は、よろず屋には居ない。紙袋でさえ使えそうでも、3ヶ月もして使わなかったら燃えるゴミとして処分しているのだから。
不思議に思いつつ、むつは箱に何か書かれていないかをひっくり返して見ている。貼ってある白い紙は埃でか、茶色くなってきているが、むつの字で日付と筆と書いてある。
「筆…筆?ねーちょっとーっ‼だーれーかーっ」
動くのが面倒なのか、むつは大きな声で叫んだ。すると、颯介も祐斗も山上もやってきた。むつが大きな声を出すから、何事かと思ったのだろう。
「どうした?」
「無くなってるの」
「何がですか?」




