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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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むかっていく

すっきりとした目覚めで朝を迎えた女は、布団の中でぐぐっと伸びをした。水分不足か、ふくらはぎがつりそうになり慌ててやめると、ごろんっと寝返りを打って枕元の携帯を掴んだ。


「…5時43分」


もろっと起き上がった女は、髪の毛をかきあげた。黒く長い艶やかな髪の毛は、見るも無惨にぐしゃっとなっている。昨夜は風呂に入らず、いつものように三つ編みにして寝なかったからだ。削減だけではなく、一昨日も風呂に入っていない。女、玉奥むつはふうっと息をついた。


カーテンからは淡く光が差し込んでいる。今日も天気はよくなりそうだ。むつは欠伸をしてから、布団の上に置いてあるカーディガンを羽織ってベッドから下りた。もこもことしたルームシューズをはいて部屋を出ると、キッチンに真っ直ぐ向かい電気ポットに水を足してスイッチを入れた。見る気はないが、1人暮らしで音がない事が寂しいのか、テレビをつけるとリビングのテーブルに置いてある灰皿を持ってキッチンに行く。灰皿の中の吸い殻は2種類。むつと昨日の夜まで居た男、西原の分だ。


一昨日の夜から昨日の夜まで、丸1日ほど一緒に過ごした西原も今日は仕事があり、夜のうちに帰っている。あまり体調のよくないむつを心配して、着替えを持ってまた戻ってくると言っていたが、むつはざっさりとそれを拒んだ。決して嫌なわけではなかった。西原が何度となく目を覚まして、こっそり額に手をあてて熱を確認したりと気遣ってくれたのは嬉しかった。だが、そのせいで寝不足にさせている。西原の仕事を全てとは言わないが知っているむつは、自分のせいで今度は西原が体調を崩すのではないかと逆に心配だったのだ。それに、西原が居ては出来ない事もある。


むつはマグカップに薄目のコーヒーをたっぷりといれて、ふぅふぅとしながら冷蔵庫を開けた。買い物をしたばかりだから、食材はたっぷりとある。それに、むつの兄である晃が買ってきた1.5リットルのスポーツドリンクがまだ残っている。これは邪魔にもなるし、早めに飲みきらなければならない。ぱたんっと冷蔵庫のドアを閉めて、横の棚にも目を向けた。そこにはまだ3本のスポーツドリンクがある。


換気扇をつけて、タバコを吸い始めたむつは、それと同時に手櫛で適当に髪の毛を撫で付けて縛ると、再び冷蔵庫を開けた。がさがさっと食材を取り出して、鍋を取り出した。

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