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ひとりきり
だが、吉岡の言うように自分が吉岡というほかの人には気付かれない存在に気付き、会釈や挨拶をしたり結果。彼が実体を持って接触してきたからには何か本当の理由があるような気がした。
「本当は…俺は何で呼ばれたんですか?」
「気付いたから。分かってくれると思った」
吉岡の声はどこか違う所から聞こえてくるような、不思議ともやのかかったような声だった。
「何でこんなにも長くさ迷っているのか。何とかしてくれるんじゃないかと」
「自分が死んでる事に気付いてる、んですか?」
「そりゃ誰に話し掛けても聞いて貰えず、触れられず…周りはどんどん変わっていくのに自分だけが変わらず居るんですからね」
自嘲めいた笑いだった。つい先程までの、にやにやとした笑いはもう浮かんではいない。
哀れに思ったのが祐斗の顔に出たのか、吉岡はわずかに、にやっとした。だが、祐斗はそれには気付かなかった。




