表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
897/1310

たいみんぐ

ふっと目を覚ましたむつは、もそもそと起き上がった。仕事を終えて、晃の車に乗って帰っている間に眠くなったのは覚えていた。だが、今は車の中などではない。見回した室内は、薄暗くとも自分の部屋だという事が分かる。手探りにベッドの横に置いてあるサイドボードの上のライトをつけた。明るさに目がくらんだが、それは一瞬の事ですぐに慣れた。


自室には自分1人だけ。マンションまで送って貰い、晃にでも抱えられて部屋まで運ばれたのだろう。寒気はするが、身体の内側が暑いような気がして、まだ熱があるんだなと実感させられる。だが、むつはベッドから抜け出してリビングに出た。


「…っ‼」


ソファーに座り、腕を組んでうつ向いている男が居てむつは驚いたが、自室から漏れる微かな光の中に浮かび上がるシルエットから、それが誰なのか分かった。男が1人居るだけで他には誰も居ない。足音を立てないようにして、むつはソファーに近寄った。そうっと男の顔を覗き込むと、すぅ、すぅと寝息が聞こえる。むつは部屋に戻って、使っていた毛布を持ち出すとその男、西原にかけてやった。


「…むつ?」


「ごめん、起こしちゃった?」


寝息がぴたっと止まり、西原が顔を上げた。


「いや…お前こそ、どうした?熱は?」


「まだあるみたい…」


「ベッドに戻れ。寝ないと体調も良くならないだろ?明日は大掃除するんだろ?」


「ん…先輩は?」


「俺はここで寝るから。毛布ありがとうな」


部屋に戻るか悩んだむつは、西原の隣に座って毛布の中に潜った。西原は眠そうに目を擦り、むつが側に寄ってくるとくすっと笑った。


「…体調悪いから、甘えてたんだな。気付かなくて悪かったな」


「ううん…」


「寝れそうにないのか?」


「目覚めちゃったかも…先輩は寝てていいよ?あたしな眠くなったら部屋に戻るから」


「それなら、最初から部屋に行けよ」


もそっと毛布の中で身動ぎをしただけで、むつは部屋に戻ろうとはしない。


「…一緒に部屋に行ってやろうか?」


膝を抱えて座っているむつは、ゆっくり西原の方を向いて、こくっと頷いた。


「ほら、身体冷えるから…行くぞ」


西原が優しくむつの背中を押すと、むつはソファーから下りて部屋に入っていく。西原はむつが持ってきてくれた毛布を持って、そのあとをついていく。


「ベッドに入って、横んなれ」


床に転がっていたクッションをベッドの側に置いて、西原はその上に座ると毛布を身体に巻き付けた。だが、むつがベッドの端によって、西原のシャツを引っ張っている。


「…一緒に寝ろってか?何かされるかもとか、そういう心配しなくていいのか?」


「病人にするような人じゃないの知ってる。それに…先輩なら…」


もにょもにょと消え入りそうな声で言うむつに、西原は少し困ったような顔をしたがベッドに潜り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ