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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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たいみんぐ

見送りに出てきた新士は、4人に頭を下げて礼を言った。だが、その視線はむつにばかり向いている。駐車場までやってきた新士は、ふうっと息をついてむつに声をかけた。


「むつ…今って彼氏居るか?」


「居ないよ」


「…俺と付き合わないか?結婚を前提に」


「絶対に嫌」


「もーちょい考えてから答えてくれよ。そんな即答しなくても。むつみたいに、ご遺体に触れられて物怖じしない嫁が来てくれたらなって思うのに。それに、うん、高校の時から変わらず、可愛いし。でも…今でもお兄ちゃんが1番?」


「勿論、勿論。お兄ちゃんを越える人なんて居るわけがない。むりむり。だって、4人も居るんだよ?」


「…そっか。だよな、学校まで迎えに来るくらい、甘いお兄さんたちだもんな。まぁ正月戻ってきたら連絡くれよ、飯くらいなら一緒に…良いだろ?」


「お兄ちゃんの許可が出たらね」


会話は終わりと、むつは車に乗り込んでさっさとドアを閉めた。先に乗っていた晃が、笑いを堪えている。可哀想な新士にちらっと視線を向け、晃は会釈をすると車を発進させた。


「…許可はしないぞ?」


「当たり前でしょ?許可されても、ご飯なんて行きたくもないわよ。何、あの軽さ…昔から変わってないわ」


「だから、好きになれなかったのか?」


「何か信用できない」


気疲れだわ、と呟いたむつはこつんっと窓に頭を押し付けるようにして寄り掛かった。晃はバックミラー越しに、そんなむつを見て、くすっと笑った。


「…スズランも北口亭もまた今度な。どっちも、もう開いてないからな」


「北口亭の餃子…」


「どうせ、今は食えないだろ?」


「まぁね…」


がっかりした様子のむつは、ふうと息をついて目を閉じた。嘘を交えた、あっさりとした説明をするのに頭を使ったし、元カレとの再会に気を遣ったのか、疲れた様子だった。


「なぁ、むつ…元気になって、覚えてたらでいいから、本当の事を教えてくれるか?」


むつが寝てしまう前に、と晃が声をかけた時には早くも、うとうとしていたようで、むつは生返事をした。


「きっと忘れてるだろうな」


「…でしょうね。元カレとの再会もあまり良い物ではなかったようですから」


「な、むつは能力なくても全力で仕事に打ち込む良い子だろ?お前の持ってきた仕事だからとか言ってたけど…力になれるなら、なりたいんだよ。お前らが、困ってる人をほっとけないように」


「…優しい子ですから」


山上と晃の会話すら、むつには子守唄のような物になっていたのか、むつはとろとろと眠りについていった。


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