たいみんぐ
「火車は元々猫なの?」
「…いや?僕は、ずっと火車だぞ」
「あの子、尻尾が2つになりかけてる…お寺に置いておいて大丈夫かな?」
「どうだろうな…人は少しでも知ってる物と違うと排除しようとするからな。置いておくのは危険かもしれないな」
「だよね…あともう1つ。あの子、まだ言葉を話す事は出来ないの?」
「まだ、出来ないな。でも、こう気持ち?は分かるからなお互いに、世の理からは外れた物同士だ。だが、じきに喋るようになるだろうな。むつの影響は大きいぞ」
「前にもそんな事あったっけ。ま、それはどうでもいいか…気になるのは、あの子よね。お寺に預けておけなくなるかもしれないし」
「そしたら、僕が連れ出す。頃合いを見て、飼い主が家に戻る事には普通の猫にも見えるように尻尾をしまわせて、家に戻してやればいい」
「…火車ってば、やっぱ良いやつねぇ。人は見掛けによらないっていうのはこの事だわ」
「人じゃないがな。さて、僕は帰る。猫又の事はありがとうな。火は悪かった…僕も逃げるのに必死で…」
「あ、それはお互い様って事でさ。もう人前にはあんまり出ないでね?」
火車は口を大きく持ち上げて、尖った歯を見せて笑うと、街灯の届かない暗い場所に下がっていき、闇に溶け込むようにして消えていった。
「…終わったわね」
「あぁ。意外と良い結末だったな…お疲れ」
「ん、先輩もお疲れ様。一緒に来てくれてありがとう…家帰ったら朝方かな?」
「かもしれないな。車の中で寝たら良いだろ?帰りは俺が運転して行くつもりだし」
「お兄ちゃんに任せよ?お兄ちゃんが持ってきた厄介事だもんね。アッシー君として働いて貰いましょ」
「…俺はそんな風に任せられないぞ」
大変ねぇとむつが他人事のように笑いながら、足元を見た。いつの間にか戻ってきた猫が、甘えるようにしてむつの足にすり寄っている。
「おかえり。あ…首輪つけて貰ったの?」
「…この分なら、飼い主は猫又になったこの子でも可愛がっていけそうだな」
「そうね。ほら、やっぱり愛は種族を越えるのよ。良かったねぇ、可愛い首輪貰って」
むつが猫を抱き上げると、ミャアと鳴いた猫はむつの胸元に額をぐりぐりと押し当てた。
「さ、帰るぞ。警視正も山上さんも、かなり心配してると思うからな」




