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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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たいみんぐ

「猫、届けてくれたんだな」


「まぁね。火車、よね?」


ぬっとむつの前に現れたのは、猫のような顔に、人のような手足を持っている者だった。ぎょろっとした目付きといい、大きく避けている口といい人にはとうてい見えない。


「…むつ…」


「何で名前知ってるの?」


「寺の息子がそう呼んでたからな」


「近くには居たんだね?」


「居た。痛かったぞ、お前の日本刀は…僕の炎で火傷はしなかったか?服燃えたろ?」


恨みがましく火車が言うと、むつは悪いと思ったのか、ぺこりと頭を下げた。


「日本刀投げたのは悪かった、ごめんなさい。火傷はしてないから大丈夫よ。で、どうしてご遺体を持っていこうとしたの?」


「…死人を動かして寺から人を遠ざけて、猫又を連れ出そうとだな…あの坊主、する事もないのに寺から出ていかないしな」


「そんな事だろうと思ったわよ。悪い事を繰り返して死んだ人を地獄に連れてくって聞いてたのに…それに、地獄に連れてくのに肉体は必要ないのにさ」


「むつはあの坊主とは特別な仲か?」


きょとんっとしたむつは、火車が何を言っているのか分かったらしく、肩を揺らして笑っている。火車の言っていた、あの坊主とは住職ではなく息子の新士の事のようだ。


「昔はね、ちょっとした仲だったよ」


「ふぅん…珍しく、あの坊主がよく喋るから、何か特別な仲なのかと思ったぞ」


「普段を知ってるの?」


「たまにな。法事とかで檀家が菓子とかを持ってくるだろ?それを貰いにな」


「…ね、先輩。妖ってみんな甘い物好きなのかしら?狛犬とかも甘い物好きだし」


「かもしれないな…で、これでじゃあ仕事は片付いたって事になるんだな?」


「うん。あとは猫が戻ってきたら…」


立っているのもつらいのか、むつは車に寄り掛かって首を傾げた。


「…お寺に出入りしてるから、猫が預けられた事を知った。で、猫又になりかけてるあの子からご主人様の事を聞いて、火車はどうにかしてあげたくなった…?」


事を整理するかのように、むつが言うと、火車は頷いた。何か言いたげに、むつは西原の方を見た。


「すげぇ良いやつだな。顔はさておき」


「うん…でもさ、夜なら新士さん…あの坊主居ないはずでしょ?夜連れ出す事も出来たんじゃないの?」


「あの坊主は寺に寝泊まりしてるぞ。家族とは上手くいってないらしい。何でかは知らんが」


むつもそれは興味が全くないようで、へぇーと言っただけだった。


「とりあえず、火車は良いやつ。で一件落着って所かしらね?はぁ…疲れた。あ、あともう1つ、2つくらいかな?」


まだ聞きたい事があるとむつが言うと、火車は気を悪くした風でもなく少し首を傾げた。




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