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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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たいみんぐ

「あ、そこの道…左に…で、次の次の信号をまた左に…あ、どこの病院か分かった」


猫を抱いて座っているむつがぽろぽろと呟く言葉を拾って西原は、言われた通りにハンドルをきる。


「…あとは道なりに、昔と同じなら看板出てくるから…それに従って行って」


「分かった。道はいいとして…お前は大丈夫なのか?かなり体調悪そうだぞ」


「平気だよ…ね、ご主人に会ったらちゃんと戻ってきてくれる?…預けられるのは…まぁ、そうね…」


ぶつぶつとまたむつは、猫に向かって話し掛けている。だが、今度は会話があるかのように呟いている。西原もいよいよ心配になってきたようで、ちらちらとむつを見ている。だが、むつが平気だと言うのを信じるしかない。西原はあとは言われた通り、道なりにすすみ病院の名前の書いてある看板を見付けると、その指示通りに車を走らせた。


見えてきた病院は、かなり大きな総合病院で、ベッドの数もかなりありそうだ。さすがに夜だから、駐車場にはチェーンがかけてある。西原は仕方なさそうに、路上駐車した。


「どうやって、猫を連れて行くんだ?ペットは禁止だろ?それに完全に部外者だぞ」


「大丈夫、勝手に行って勝手に帰ってくる…あたしはちょっと別行動で…」


「お、おい…待て。お前はいつも別行動だろうが。そうじゃなくて、お前はどこに行くつもりだ?」


「…じゃあ、ここで待機という事で。行ったらちゃんと帰ってきてね」


むつはそう言ってドアを開けると、いってらっしゃいと声をかけた。猫は振り返り振り返りながらも、とっとっとと病院に向かっていく。猫は行く所が分かっているかのように、駆けていく。むつは、ぱたんっとドアを閉めてシートに深くもたれかかった。


「…で、お前はどこに行こうとしてたんだ?」


「どっかに火車が居る気がしたから…探しにでも行ってみようかなと…」


「…寒いから、ここで猫を待ってたらいいだろ。お前、本当はもう火車はどうでもいいんだろ?猫が、猫がって言ってたし」


「まぁね。だってさ、しんちゃんがご遺体を連れ去られるのを阻止出来てるんだし、どうにか出来るなら勝手にどうにかしてって感じでさ」


「…確かにな。でも、ご住職がびびって警視正に連絡してきたんだろ?仕方ないな。お前、お兄さんたちからの依頼は断りたくないんだろ?」


「勿論。お兄ちゃんたちにとってそれが少しでもプラスになる可能性があるなら…」


「そうだな。つうかさ、強制じゃないけど…出来たらでいいぞ、出来たら…元彼をしんちゃんって呼ぶの辞めないか?何か…ムカつくな」


「分かった。じゃあ、天野さんにする」


むつはあっさりと頷いた。それに西原は少し驚いたようであり、それと共に嬉しいような、申し訳ないような気持ちになっていた。

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